fc2ブログ
 
  

天才バッハの音楽、ヴァイオリン・ソナタ全曲:ツィンマーマン@トッパンホール 2013.10.6

今日もトッパンホール。この1週間ほどで4回目です。すっかり、会場に通うのにも慣れました。

表題の通り、バッハの天才ぶりをまざまざと実感するリサイタルでした。ツィンマーマン(ヴァイオリニストの方)はそのバッハを美しく、そして、誇張することもなく、見事に表現。今日のリサイタルはチェンバロではなく、ピアノとの協演でした。ピアノよりもチェンバロのほうが華やかな響きだったでしょうが、ピアノのこもりがちな響きがヴァイオリンのピュアーな響きを引き立てて、かえって好感が持てる演奏でした。

今日のプログラムは以下です。

ヴァイオリン:フランク・ペーター・ツィンマーマン
ピアノ:エンリコ・パーチェ

ヨハン・セバスティアン・バッハ

ヴァイオリンとピアノのためのソナタ全曲

第1番ロ短調BWV1014
第2番イ長調BWV1015
第3番ホ長調BWV1016

《休憩》

第4番ハ短調BWV1017
第5番ヘ短調BWV1018
第6番ト長調BWV1019

《アンコール》

第6番ト長調BWV1019a(第6番初稿)より、第4楽章


まず、第1番。第1番から第5番までは、緩急緩急という4楽章の教会ソナタ形式です。第1楽章は短調の少し悲しげなメロディーの美しさに心が清められる思いです。第2楽章は一転して、活発な楽想に愉悦に浸って、心が躍ります。なかなか、好調な滑り出しです。

第2番。緩徐楽章の第3楽章は実に見事な演奏。うっとりと美しいメロディーに陶酔します。活発な第4楽章はまたしても、愉悦に浸る心楽しい演奏です。

第3番。この演奏がこの日の白眉でした。第3楽章の余りの美しさに心が耐え切れないほどの思いです。バッハの真髄を堪能させてもらい、天にも昇る心地。第4楽章は躍動する音楽に心が高揚。なんて素晴らしい音楽、そして、演奏。

休憩後、第4番。第1楽章の主題は、「マタイ受難曲」中、最高の名曲の名曲の第47曲(旧版の番号)のアルトの素晴らしいアリア、エルバルメ・ディッヒ、マイン・ゴット(憐れみたまえ、我が神よ)のオブリガート・ヴァイオリンの旋律と親近関係にある旋律です。
当然、うっとりとした演奏を期待しますが、ツィンマーマンは無情にも、速いテンポでさらっと弾きます。もしもsaraiがヴァイオリンを弾けたら、ぐっと感情を込めて弾きたいところですが、これがツィンマーマンの解釈なんですね。まあ、この曲が「マタイ受難曲」じゃないし、仕方ありません。第2楽章、第4楽章というアレグロの楽章に力点が置かれた演奏で、それはそれで素晴らしい演奏です。

第5番。これも第2楽章のアレグロ、第4楽章のヴィヴァーチェという速い楽章の演奏が見事。緩徐楽章の第3楽章のヴァイオリンの重音による和音のシンプルな進行も妙に心に響いてきました。

第6番。これは第5番までの緩急緩急という4楽章の教会ソナタ形式とは異なり、5楽章構成で第1楽章はアレグロという斬新なものになっています。また、中央の第3楽章はピアノ独奏になっています。全体にピアノが活躍する曲で、ピアノのパーチェの優れた演奏が目立ちました。第4楽章、第5楽章とヴァイオリンの響きもよく、圧巻のフィナーレになりました。

これで当然、お終いと思っていたら、何とアンコール曲が演奏されました。耳慣れない曲でしたが、これは珍しい第6番の初稿の第4楽章のアダージョ。初稿では、第3楽章と第4楽章が別のものであり、現在はBWV1019aとして、残されています。最終版の第6番BWV1019は、バッハが新たに現在の第3楽章(ピアノ独奏)、第4楽章、第5楽章を作曲しました。初稿では、第4楽章の後は第1楽章を繰り返す形だったようです。アンコールで演奏されたアダージョも美しい演奏でした。ところが、このアダージョは第4楽章で最後は半終止で終わります。本来は次の楽章、繰り返しの第1楽章に続くところです。ツィンマーマンはここで悪戯っぽく、目をきょろきょろさせます。聴衆もここで終わるのか、続くのか、様子を見ていましたが、笑いが起きて、ここでお終い。まさか、また、第1楽章を演奏するわけにはいきませんものね。残念・・・。

今日の聴衆の素晴らしさにも言及しておかないといけないでしょう。演奏者の登場前、まだ、客席の明かりが暗くなる前から、シーンと静まり返っています。これから始まる音楽への期待感を聴衆全員で共有。聴衆はヴァイオリンを弾く人が半分、バッハを愛する人が半分という構成のように感じられます。演奏者、聴衆、一体になった気持ちのよいリサイタルでした。

最後になりましたが、今回の予習について、述べておきましょう。定番中の定番、シェリングとヴァルヒャのヴァイオリンとチェンバロの録音を聴きました。これは素晴らしい演奏。やはり、チェンバロはいいです。アナログ・ディスクの数少ない所有盤で聴きましたが、実に美しい音です。これはsaraiの宝として自慢できますよ。
ただ、この予習で終えたら、今日のリサイタルのピアノに不満を持ちそうなので、ツィンマーマンとパーチェのDVDを聴いておきました。Kloster Pollingの図書室での演奏で画面もとても美しいものでした。


↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR