なお、予習に向けての経緯はここ。
交響曲第1番についてはここ。
交響曲第2番についてはここ。
交響曲第3番《英雄》についてはここ。
交響曲第4番についてはここ。
交響曲第5番《運命》については1回目はここ、2回目はここ、3回目はここ。
交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ。
交響曲第8番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ。
交響曲第9番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここに書きました。
(全予習が完了したので、全予習へのリンクを上記に示します。参考にしてくださいね。)
今回は前回に続いて、交響曲第8番ヘ長調 Op.93について聴きます。
今回はウィーン・フィル以外の内、1958年以降の6枚を聴きます。すべて、ステレオ録音になります。
以下、録音年順に感想を書いていきます。
ワルター、コロンビア交響楽団 1958年録音
全集盤(2回目)からの1枚です。
第1楽章、大変、明快な音楽。力みも思い入れもなく、自然な音楽がすっと流れていきます。名人だけがなし得る芸術。ワルターが芸術家として、大変なレベルに達していたことが窺い知れます。これがウィーン・フィル相手だとどうだったのかなとつい想像してしまいます。いずれにせよ、本当に見事な演奏です。感嘆してしまいます。
第2楽章、無理のない柔らかい音楽がいとも簡単にさらっと流れていきます。これは規範となるべき演奏だと感じます。
第3楽章、古典的で典雅な音楽をまさに一幅の絵にしたような完璧さに、それ以上言うべき言葉を持ちません。
第4楽章、何と柔らかく気品のある演奏でしょう。ワルターの至芸にじっと耳を傾けるのみです。
コンヴィチュニー、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 1960年録音
全集盤からの1枚です。
第1楽章、生気みなぎる演奏。何よりもライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の響きの素晴らしさ。これはこの全集の中でも特に優れた演奏です。とても素晴らしいです。
第2楽章、とても速いテンポ。さらっと通り過ぎていく感じです。
第3楽章、これも速めのテンポ。重心の低い、がっちりした演奏。ここでもライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のアンサンブルの素晴らしさが印象的です。
第4楽章、素晴らしい響きの音楽が展開されます。瑞々しい豊潤な音楽に魅了されます。これも名演です。
バーンスタイン、ニューヨーク・フィル 1963年録音
バーンスタインの旧盤の全集からの1枚です。ウィーン・フィルとの全集に先立つこと、15年ほど前の録音です。現在から、ちょうど50年前の録音です。
第1楽章、清新で瑞々しい演奏。この頃のバーンスタインは若くて勢いがあって、本当によかったです。こういうベートーヴェンの演奏にも心躍らされます。
第2楽章、リズミックな音楽はバーンスタインが得意にするもの。実に心地よい音楽です。
第3楽章、元気一杯の音楽。田園の宴という感じでしょうか。楽しげな雰囲気の音楽はとてもよいものです。
第4楽章、躍動感のある演奏ですが、意外にテンポは落ち着いています。いかにも張りきった指揮で微笑ましく感じます。力感あふれるフィナーレは素直に気持ちがよいものです。
クーべリック、クリーブランド管弦楽団 1975年録音
全集盤からの1枚です。すべて、異なるオーケストラを指揮した画期的な全集ですが、この第8番はクリーブランド管弦楽団を指揮しています。
第1楽章、溌剌とした演奏ですが、柔らかい抒情も秘めているように感じます。やがて、熱情あふれる音楽になっていき、ぐっと気持ちが惹きつけられます。コーダの熱い盛り上がりも見事です。
第2楽章、実に柔らかい優美な音楽。
第3楽章、抒情的な歌い回しが見事でロマンチックな気分を味わわせてくれます。力感もありますけどね。
第4楽章、勢いのある迫力と、瑞々しい感性の抒情が、バランスよくミックスされている素晴らしい表現です。何度でも聴きたくなるような超名演。
ハイティンク、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1987年録音
ハイティンクについてはロンドン交響楽団との3回目の全集を聴いてきましたが、やはり、手兵とも言えるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団との2回目の全集についても聴いておきましょう。なお、1回目の全集はロンドン・フィルとのものですが、最近になって、ようやくCD化されるそうです。若いころのベートーヴェン演奏がどうだったのか、大変、興味深いですね。
第1楽章、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のまろやかで深い響きで真正のベートーヴェンの世界を紡いでいきます。この時期のハイティンクは個性がないという世評ですが、それは円熟してきたことの裏返しの表現ではないかと思います。作曲家のスコアにのみ奉仕していく厳しい姿勢が貫かれている素晴らしい演奏であると感じます。何といっても、この素晴らしい響きはどうでしょう。
第2楽章、過不足のないバランスのよい演奏。
第3楽章、こんなに無色透明なベートーヴェンも珍しいです。実にベートーヴェンに忠実な演奏です。
第4楽章、この楽章は勢いのある演奏です。それもベートーヴェンの意図に沿ったものなのでしょう。
ベートーヴェンの交響曲にリファレンスというものが存在するとすれば、まさにこれがそのリファレンス盤。また、この全集を第1番から聴き直してみないといけないなと感じた次第です。
ハイティンク、ロンドン交響楽団 2005/6年録音
全集盤(3回目)からの1枚です。
第1楽章、簡潔な表現できびきびした演奏。余計な装飾はすべて排除したような禁欲的とも思える演奏です。それでも、ロンドン交響楽団のアンサンブルは素晴らしく美しいです。何故か心に迫ってくる演奏です。
第2楽章、流麗で美しい響きは何かの感情を呼び起こします。オペラ的な世界でしょうか。とても素晴らしい演奏です。
第3楽章、トリオの部分の表情豊かな演奏が印象的です。
第4楽章、ともかく見事な演奏。一言で内容を述べるのは困難です。柔らかい響きで、メロディーラインの美しさも際立っています。控え目でありそうで、迫力も感じさせられます。音楽的内容がぎっしりと詰まっている、熟成した、大人の音楽です。
2回目と3回目の全集盤の違いは驚くほどです。ハイティンクの精神的な変容が感じられます。これは是非とも、1回目の全集も聴いてみなければという強い気持ちが湧いてきました。
次回はこの交響曲第8番の演奏について、ウィーン・フィルの1954年のフルトヴェングラーの演奏から、2009年のティーレマンの演奏まで、7種類の録音を聴きます。
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