この日のプログラムは以下の内容です。
コントラバス:吉田秀(NHK交響楽団首席)
ヴァイオリン:会田莉凡(あいだ りぼん)
ピアノ:安宅薫(吉田秀の夫人)
ヴィヴァルディ:チェロ・ソナタ第4番RV.45(コントラバス編曲版) 吉田
ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ 会田
グリエール:2つの小品 Op.9 吉田
《休憩》
ボッテジーニ:夢 吉田
クーセヴィッキー:小さなワルツ Op.2 吉田
ブルッフ:コル・ニドライ Op.47(コントラバス編曲版) 吉田
ボッテジーニ:協奏的大二重奏曲 吉田、会田
《アンコール》
ボッテジーニ:エレジー 吉田
ヴィエニャフスキ:スケルツォ・タランテラ Op.1 会田
ビートルズ:イエスタデイ、ゲットバック 吉田、会田
いやはや、コントラバスは本当に渋いです。最初のヴィヴァルディのチェロ・ソナタは本来、しっとりとした曲ですが、コントラバスで弾くと、しっとりを通り越して、茫洋たる響きの世界です。編曲にも難がありそうな気がします。もっと、ハイポジションでメロディーが明確になってほしいと正直、思いました。
二曲目は昨年の日本音楽コンクールで一位になった会田莉凡のヴァイオリンで、ラヴェル。彼女はかなり硬くなっていたようで、ヴァイオリンの響きが冴えません。ラヴェルは美音で聴きたい曲ですから、これではダメですね。曲が進むにつれて、だんだんと響きはよくなりましたが、合格点とは言えません。今後の精進を願うばかりです。
三曲目はまた、コントラバスでグリエールの曲。グリエールというのは、プロコフィエフやハチャトゥリアンの先生で、ロシア(ソ連)で活躍した人だそうです。これはコントラバスのために作曲された曲で、ハイポジションを多用して、明確な旋律線が美しく、楽しめました。
後半の最初の2曲、ボッテジーニとクーセヴィッキーの曲も同様にコントラバスのために書かれた美しい曲。さりげない演奏で楽しめました。ボッテジーニは歌劇《アイーダ》を初演したイタリア人指揮者だそうで、コントラバスの曲を数多く作曲したそうです。クーセヴィッキーはもちろん、ボストン交響楽団の指揮者だった人で、もともとはコントラバス奏者だったそうです。作曲していたとは知りませんでした。
ブルッフの曲はチェロ独奏とオーケストラのための有名な曲ですが、これをコントラバス用に編曲したものが演奏されました。この編曲はよくできていて、美しい抒情が感じられます。ただ、チェロの場合の気合というものがこのコントラバスでは不足して、綺麗なメロディーがすっと流れていく印象です。それはそれでいいんですけどね。
最後のボッテジーニはヴァイオリンとコントラバスの協奏的な曲。迫力のある、よい演奏でした。ヴァイオリンの会田莉凡も先ほどのラヴェルのときのような硬さも取れ、音コン一位の実力の片鱗を聴かせてもらいました。若さの勢いと音楽の粗さが裏腹に感じますが、よい方向に伸びていってほしい人材です。吉田秀のコントラバスは安定した響きでさすがです。
辛口のコメントも書きましたが、吉田秀の穏やかな人柄、そして、彼の美しい夫人、安宅薫のきっちりしたピアノのサポートで、リサイタルは気持ちのよいものでした。何といっても、コントラバスの独奏という珍しいものが聴けたのも収穫でした。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
