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驚愕のフィナーレ、ティーレマン+ウィーン・フィル:ベートーヴェン・チクルス③@サントリーホール 2013.11.15

ベートーヴェン交響曲チクルス3日目です。

まったく、ティーレマンには驚かされます。今日のコンサートは第6番、第7番と素晴らしい演奏が続きましたが、どちらかと言えば、ウィーン・フィルの美しい響きを活かした自然とも思える演奏で、やりたい放題のティーレマン節は炸裂しません。こういう演奏でも、ティーレマンの作り出す音楽は素晴らしいので、ティーレマンもいくつもの引き出しを持った、多様性を持った音楽家であることが分かります。今日はこのまま、典雅な演奏で終わるのかと思っていたら、最後の第7番の終楽章から様相が変わってきて、明らかに、ティーレマンの気魄がだんだん高まっていくのが分かります。そして、最後のフィナーレで大爆発。もう、何がどうなったのかは判然としませんが、ティーレマンが体を大きく使って、物凄い身振りをすると共に、ウィーン・フィルの演奏のテンションが一気にあがり、爆演。慄然とするような驚愕のフィナーレです。こんな無茶苦茶とも思えるフィナーレで感動させるのは、今まで、フルトヴェングラーの専売特許だと思っていました。実際、そんな人は誰もいませんでした。

いやはや、これまでの2日間と合わせて、大変なチクルスになってきました。こうなると、最後の第9番はどうなるでしょう。

今日のプログラムは以下です。

指揮:クリスティアン・ティーレマン
管弦楽:ウィーン・フィル

ベートーヴェン交響曲チクルス第3日

第6番ヘ長調Op.68《田園》

《休憩》

第7番イ長調Op.92

今日ももう、これ以上書く必要はないかもしれませんが、一応、今日の演奏について、軽く触れておきます。

まず、第6番《田園》です。

第1楽章、実に柔らかな響き。この第6番は1936年のワルター指揮の演奏を思い起こさせるような、これぞ、《田園》という演奏。もちろん、演奏スタイルは全然異なりますが、ウィーン・フィルの柔らかな響きがあまり変わっていなくて、その響きが《田園》にぴったりなんです。やはり、この《田園》はウィーン・フィルの演奏が独壇場です。ティーレマンもあまり、余計な手を加えないで自然な演奏に徹しています。聴衆としては、ただ、うっとりと耳を傾けるだけです。この曲だけはティーレマンの指揮よりもウィーン・フィルの伝統的で典雅な響きがすべてです。もちろん、一瞬一瞬のタメの利いた演奏の素晴らしさはティーレマンの指揮ならばこそではありますけどね。

第2楽章、ますます、弦の響きが典雅さを増していきます。それに木管のソロの素晴らしいこと! 一部、木管の特定パートに問題はありましたが、そんな些細なことはまったく気にならない素晴らしい演奏です。フルーリーのフルートの美しい響き、クラリネットの抑えた深い響き、まるで、木管と弦楽のためのコンチェルトを聴いているような思いになります。

第3楽章、田舎の賑わい、楽しさも加わって、祝典性さえ感じます。ウィーン・フィルの名人技を聴き入るのみです。

第4楽章、激しい嵐が吹き荒れる大迫力の演奏ですが、響きの柔らかさは失われません。それにしてもティーレマンのパワフルなあおりで凄まじい音楽です。

第5楽章、ミレーの農民画を思わずイメージしてしまう静謐で祈りの音楽です。もっとも、この曲はウィーンの街はずれ、ウィーンの森近くのハイリゲンシュタットで作曲されたので、ああいうフランスの平原とは異なりますが、これがベートーヴェンの内面に投影された心象風景なんでしょう。ティーレマンはあくまでも自然なスタイルで、この曲のしみじみとしたところを表現し、時に気持ちの高揚感を表現していました。

この第6番《田園》はティーレマンがうまく、ウィーン・フィルの美しい響きを活かしつつ、必要最小限、ダイナミックさを付け加えた素晴らしい名演奏でした。

次は、第7番です。

第1楽章、素晴らしいアインザッツの和音がピタッと決まり、序奏が開始。何て、美しい序奏でしょう。テンポも見事。アンサンブルも一糸乱れずです。そして、輝かしい主題がトゥッティで高らかに奏でられ、主部が始まります。その導入部分のフルーリーのフルートソロも見事です。この楽章、ティーレマンはそんなにルバートはせずに、雄渾とも思える演奏。その演奏に釘付けになるような魅力的な音楽でした。

第2楽章、いやはや、素晴らしいアレグレット。何も言うことはありません。ティーレマンも無駄な動きなし。芯の通った美しさを堪能するのみです。

第3楽章、力強い演奏。ここでも音楽は自然に流れていきます。古典的なスタイルの演奏もいいものです。

第4楽章、怒涛の音楽。ティーレマンはここぞというところでアッチェレランド。それで熱くヒートしていきます。そして、前述した通り、圧巻のフィナーレ。

この第7番を聴いて、ティーレマンがいかに凄い指揮者であるかを再認識しました。硬軟織り交ぜての多様な音楽を聴かせてくれます。彼はどこまで底力があるのか、計り知れないポテンシャルを持っているようですね。

最後に今日の2曲の予習について、リンクを張っておきます。何かのご参考になればと思います。

交響曲第6番《田園》については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ
交響曲第7番については1回目をここ、2回目をここ、3回目をここ、4回目をここ、5回目をここ、6回目をここ



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テーマ : クラシック
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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10/07 08:57 堀内えり

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思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
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07/08 18:59 sarai

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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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