ラインの滝の真ん前に立って、凄まじい水流の勢いに翻弄されます。ただただ、自然の力の偉大さを感じるだけです。

川縁には建物が見え、人間の作り上げてきた文化を見ることができますが、そんなものを嘲笑うか如く、ラインの滝は自然の力を見せつけます。所詮、人間の力は自然には及ばないということを実感します。

もう一歩、足を踏み出せば、もう、そこには、人間の力が無力になる世界があります。あえて言えば、その中で真っ白になりたいという魅力さえ感じてしまいます。自殺願望ではなくて、母なる自然と一体化したいという太古から人間の奥底に潜む願望のようなものが目覚めてくるのが分かります。

写真だけでは分かりませんが、このラインの滝は人間の5感すべてで感じることができます。大声を上げなければ、すぐ近くの配偶者とも言葉を交わせないほどの大音響。肌に感じる空気感と大震動。圧倒的な自然がここにあります。

頑強な手すりが身を守ってくれていますが、精神的には及び腰にもなります。

この自然の猛威の中、また、渡し船が滝の大岩に向かいます。ある意味、自然への冒涜のようにも感じるくらい、自然の力に圧倒的されているsaraiです。

川の中に滝見台のようなものが張り出していて、そこからまともに自分にめがけてラインの豊富な水が迫ってくる様には、思わず自然の迫力にひれ伏しそうになりますが、それではいかんと虚勢を張り、この圧力に立ち向かおうと両手を挙げて、雄叫びを上げます。(写真はたまたま、配偶者が撮っただけで、決して、ポーズを取ったわけじゃありません。自然に出たパフォーマンスです。)
自然と人間、人類の創生以来、自然との闘いに挑んできた闘争心がsaraiの原初的な本能を目覚めさせ、新たな自分を発見しました。

配偶者も大興奮。《ラインはここに始まれり》と騒いでいます。このラインの滝こそ、ラインの源流に相応しいと無茶なことを言いだしました。それもいいでしょう。この滝はライン川唯一の滝で、ちょっと下流のバーゼルまではロッテルダムからの船がやって来る港があるのですが、このラインの滝から先へは船は行けません。
対岸を電車が何事もないように走り、川の上は渡し船。自然と文明・・・自然に対峙する人間の雄々しさと愚かさを痛切に感じます。

大変な感動を味わいました。自然から感動を受けるのはsaraiにとって稀有なことです。文化信奉者ですからね。抑えきれない感動を心に抱いて、そろそろ、ラインの滝から撤収します。まだ、後ろから自然の力が追いかけてくるような錯覚に捉われますが、もう、先ほどのような大音響はありません。

川沿いの道に出ました。気持ちは落ち着いてきましたが、まだ、興奮の余韻に浸っています。

この道のすぐ先に鉄道の駅がありました。もちろん、有料の展望台地区の出口の先です。駅から無料で展望台に行けるわけではありません。
この駅は夏場だけ電車が停まる最寄駅Laufen am Rheinfallです。

電車(Sバーン)はほんの5分ほど前に通過したばかりです。ここで30分ほど待つことになります。ゆっくりと高揚感を静めましょう。ホームはひっそりとしています。

待っていると、人が少しずつ集まってきます。みんな、表情が明るいですね。大自然の中で、日ごろの悩みや辛さはすべて矮小化され、ピュアーな心になれます。ラインの旅の最後を飾るのに、こんなに素晴らしいところはありませんでした。私達のライン川の旅は、このラインの滝で終焉を迎えます。ライン川の旅をしめくくるのに最高の場所でした。もう大満足です。

電車がやってきました。これはシャフハウゼンに向かう電車です。逆方向なので、みんなが乗り込んでいくのを見送ります。

あまりの晴天で無性に喉が渇いてきました。駅は無人駅。日本のように自動販売機なんてものはありません。石段を上って、丘の上のラウフェン城に飲み物を調達に行きます。

これがその戦果です。そんなに冷たくもありませんが、世の中にこんなに美味しい飲み物があるのかという感じです。

飲み物を飲んでいると、ほてっていた体も穏やかになり、川を通る空気で爽やかになってきます。

やがて、予定通り、電車が到着し、無事、乗り込みました。ここからは、ヴィンタートゥール経由でチューリッヒに戻ります。この後もお楽しみがあります。
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