この日のプログラムは以下の内容です。
ピアノ:ミシェル・ダルベルト
シューマン:3つの幻想的小品 Op.111
シューベルト:ピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D.958
《休憩》
ドビュッシー:《映像》第1集
ドビュッシー:子供の領分
ラヴェル:夜のガスパール
《アンコール》
ショパン:前奏曲嬰ハ短調 Op.45
前半はドイツ・オーストリアのロマン派の音楽です。
まず、シューマンの《3つの幻想的小品》です。のっけから、ピアノの響きの明るさに驚きます。フランス人のピアニストの音ですね。これはこれで面白いですが、違和感も覚えます。シューマンらしいロマン派の味わいに欠けるのが残念です。特に第2曲のしみじみとした感じが表出されないのが残念。まあ、こういう響きのシューマンは聴いたことがないので、それなりに楽しんで聴けました。
次は、シューベルトのピアノ・ソナタ第19番ハ短調 D.958です。シューベルトの最晩年の最後の3曲のソナタ、D.958、D,959、D.960のうちの1曲。saraiの愛する音楽です。
この曲は明るい響きにも違和感を覚えません。美しい演奏です。特にインテンポで演奏する部分の歯切れの良さには感銘を覚えます。一方、細かい表情を付けて演奏する部分で、タメをきかせて、丁寧に演奏してくれるのはよいのですが、何か、しっくりきません。これはドイツ系のピアニストの重厚な演奏とはちょっと違うからかもしれません。聴き慣れれば、こういう演奏も楽しめるのかもしれません。いずれにせよ、先ほどのシューマンを上回る演奏でした。
休憩後、ドビュッシーの《映像》第1集です。第1曲の《水に映る影》の色彩感に満ちた煌めくようなピアノの響きには、もう、うっとりとします。こんな素晴らしいドビュッシーを聴いたのは初めてです。第3曲の《動き》の圧倒的なピアニズムにも感銘を覚えます。明瞭な響きが大音量で迫ってきます。かぶりつきで聴いているんです。今日は《映像》は第1集だけなのがとても残念。第2集も聴きたかったところです。
次は、ドビュッシーの《子供の領分》です。第3曲《人形のセレナード》、第4曲《雪が踊っている》は見事な演奏。明るく冴えた音色に魅了されます。
最後は、ラヴェルの《夜のガスパール》です。これは第3曲《スカルボ》の中盤から終盤にかけての気魄に満ちた凄絶な演奏に感動します。超難曲に対して、チャレンジャブルでミスを恐れぬ気合のはいった演奏。テクニックだけでなく、音楽の真髄を極めた演奏です。大袈裟に言えば、ピアノ演奏の極致とも思えます。よもや、ここでこんな凄い演奏に出会うとは予想だにしませんでした。ミシェル・ダルベルト渾身の演奏です。彼も精も根も尽き果てた感じです。それほど、集中力のある演奏でした。聴いているこちらとて、大変な集中力を要求されました。一音たりとも聴き逃さないという気持ちでこの演奏を受けとめました。
もちろん、演奏後、盛大な拍手。再三のカーテンコールで、アンコール。ショパンのプレリュードです。これも見事な演奏。明るい響きにもかかわらず、憂いをふくんだ演奏にうっとりしました。これで、彼はもう、これ以上、弾けないよという仕草。それはそうでしょう。あれだけ弾けば、限界でしょう。久々に素晴らしいフランス音楽が聴けて、満足のリサイタルでした。
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