お二人がステージに登場すると、おじいちゃんと可愛い孫娘という感じでほのぼのムード。庄司紗矢香がずい分気を使っているのが微笑ましい感じ。
まず、モーツァルトのソナタが始まると、第1音からいつもと違って聴こえます。慈しみながら、演奏している感じです。こんなに音楽に愛情を注いだ演奏って聴いたことがありません。モーツァルトのこの曲の素晴らしさとあいまって、強い感慨が湧き起ります。ちょっとしたテンポの変化にもほろりと感じます。モーツァルトの室内楽でこんなに感動した記憶はありません。プレスラーのピアノはさすがにテクニックの衰えを感じますが、それを補って余りある味わいと余裕を感じます。その深い音楽に包まれて、庄司紗矢香も音量を抑えた魂のこもった演奏です。美しい響きよりも、かすれた味わいの音を選択したのは正解でしょう。プレスラーと寄り添った演奏は深い味わいを感じさせます。じわじわと感動に襲われます。最高のモーツァルトでした。
次のシューベルトは基本的にモーツァルトと同様の演奏。もっと歌わせてほしかったところ。ちょっとだけ、味わい深い演奏ではありました。
休憩後のシューベルトのソナタ(ソナチネ)は肩の力の抜けた軽妙な演奏。若い時代のシューベルトを気持ちよく聴かせてくれました。
最後は期待していたブラームス。これは庄司紗矢香が満を持して、素晴らしい響きでロマンチックな演奏でうっとりさせてくれます。さすがの演奏で大満足。予習で聴いた以下のCDの素晴らしい演奏とも肩を並べる快演でした。
デュメイ、ピリス
ブッシュ、ゼルキン
スーク、カッチェン
シェリング、ルビンシュタイン
クレーメル、アファナシエフ
今日のプログラムを紹介しておきます。
ヴァイオリン:庄司紗矢香
ピアノ:メナヘム・プレスラー
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第40番 変ロ長調 K.454
シューベルト:ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲 イ長調 Op.162 D.574
《休憩》
シューベルト:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ長調 Op.137-1 D.384
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調《雨の歌》 Op.78
《アンコール》
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女(ヴァイオリン編曲版)
ショパン:ノクターン第20番嬰ハ短調(ピアノ独奏)
ブラームス:愛のワルツ Op39-15(ヴァイオリン編曲版)
ショパン:マズルカop17-4(ピアノ独奏)
アンコールはプレクスラーがご機嫌で自身の独奏2曲も含めて、4曲も演奏。ご高齢にもかかわらず、お疲れ様でした。
今日のリサイタルは楽趣に富み、とても心に残るリサイタルでした。庄司紗矢香の精神的な充実が目立ってきました。彼女のコンサートは今、聴き逃せません。
そうそう、忘れるところでした。今日のリサイタルはNHKが録画していました。ステージ脇にひっこむところまで撮影していたので、単なるリサイタルの放送ではなく、ドキュメンタリー風の番組でも作るのでしょうか。楽しみに待ちましょう。
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