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フィリップ・ジャルスキー&ヴェニス・バロック・オーケストラ @東京オペラシティ 2014.4.25

今日はカウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーのリサイタルを聴きました。ジャルスキーを聴くのも初めてだし、カウンターテナーのリサイタルを聴くのも初めてです。これは5月末からのヨーロッパ遠征の前哨戦です。ザルツブルグ精霊降臨音楽祭で同じくカウンターテナーのフランコ・ファジョーリのリサイタルを聴くので、とりあえず、同じカテゴリーのプログラムを体験しておこうということです。(フランコ・ファジョーリのリサイタルはオランダ在住のお友達レイネさんの強いお勧めで行くことにしました。カウンターテナーのことは彼女以上に詳しい人は知りません。詳しくはレイネさんのブログをご覧ください。)
ただし、今日のジャルスキーのリサイタルは18世紀のバロック・オペラのアリア、ザルツブルグ精霊降臨音楽祭のファジョーリのリサイタルは19世紀のオペラのアリアとかなりの相違点はあります。どちらもカストラートをテーマにしているところは同じです。カストラートは19世紀に活躍したGiambattista Vellutiが最後の代表的なカストラートで、その後、カストラートは禁止になりました。現代の我々は決してカストラートの声を聴くことはできません。一体、どんな声だったんでしょう。一度だけでも聴いてみたいものです。生でね。ザルツブルグ精霊降臨音楽祭のファジョーリのリサイタルは最後のカストラート、Vellutiをテーマにしています。今日のジャルスキーのリサイタルはは18世紀前半に活躍したファリネッリとカレスティーニをテーマとしています。今や若手の実力派カウンターテナーの眼は過去のカストラートに向けられているようです。
今日のリサイタルはポルポラがファリネッリのために作曲したアリア、ヘンデルがカレスティーニのために作曲したアリアを大きく取り上げたものです。

まず、今日のプログラムを紹介しておきます。

  カウンターテナー:フィリップ・ジャルスキー
  管弦楽:ヴェニス・バロック・オーケストラ

  ポルポラ:歌劇『ジェルマーニコ』序曲
ポルポラ:歌劇『アリアンナとテーゼオ』より「天をご覧なさい」 
ポルポラ:歌劇『身分の知れたセミラーミデ』より「これほど憐れみ深く貴方の唇が」 
ヘンデル:《12の合奏協奏曲》第4番 op.6-4 HWV322
ヘンデル:歌劇『アルチーナ』より「甘い情愛がわたしを誘う」 
ヘンデル:歌劇『アルチーナ』より「いるのはヒルカニアの」 

  《休憩》

ヘンデル:歌劇『オレステ』より「凄まじい嵐にかき乱されながらも」
ヘンデル:歌劇『アリオダンテ』より「戯れるがよい、不実な女め」 
ヘンデル:《12の合奏協奏曲》第1番 op.6-1 HWV319
ポルポラ:歌劇『ポリフェーモ』より「いと高きジョーヴェさま」 
ポルポラ:歌劇『ポリフェーモ』より「愛しの人を待つあいだ」 

   《アンコール》
     ヘンデル:歌劇『リナルド』より「私を泣かせてください」
     ヘンデル:歌劇『セルセ』より「オンブラ・マイ・フ」

今日のプログラムを概観すると、最初のポルポラの序曲を除くと、前半のプログラムと後半のプログラムが対称形に配置されています。いかにもバロックの建築様式を模しているようでとてもお洒落ですね。なお、今日のプログラムでのアリアはすべて、ジャルスキーの歌唱をYOUTUBEで聴くことが可能です。saraiも十分に予習しました。

最初のポルポラの歌劇『ジェルマーニコ』序曲を聴くと、ヴェニス・バロック・オーケストラはバロックの典雅さを感じさせるだけでなく、イタリアの晴れ渡る青空のような明るい響きに満ちています。よく言えば爽やか、悪く言えば軽すぎるというところ。まあ、決して、悪い印象はありません。

ジャルスキーは最初は少し抑え気味に感じられる歌唱。ピュアーで透明な声の響きは健在です。それにスター性のある存在感があります。ヘンデルの歌劇『アルチーナ』のアリアあたりから、声もよく響くようになって、素晴らしい歌唱です。高音も素晴らしいです。しかし、圧巻は後半でした。まず、ヘンデルの歌劇『アリオダンテ』より「戯れるがよい、不実な女め」のアリアはヘンデルの天才的なメロディーメーカーぶりも幸いして、素晴らしい歌唱です。余程、相性のよい曲らしく、気魄のこもった歌唱で、悲嘆、詠嘆、復讐心などの感情が見事に表現されていて、すっかり堪能させてもらいました。さらにポルポラの歌劇『ポリフェーモ』より「いと高きジョーヴェさま」の美しい歌唱にはうっとりです。最後の同じく歌劇『ポリフェーモ』より「愛しの人を待つあいだ」もテクニックも感情も最高のものでした。贅沢を言えば、バロック歌唱のコロコロがチェチーリア・バルトリ並みとは言いませんが、もう少し迫力があればと思わないでもありませんでした。

アンコールはヘンデルの最高の名曲2曲を美しく聴かせてもらい、何も言うことはありません。

ジャルスキーを最初に注目したのは、2012年のザルツブルグ精霊降臨音楽祭でのヘンデルのオペラ《ジュリオ・チェーザレ》。セスト役のジャルスキーとセストの母コルネリア役のフォン・オッターの2重唱の美しさには、正直、参りました。それでジャルスキーには注目していたんです。今後のヨーロッパ遠征ではジャルスキーを始め、若手のカウンターテナーの動静とバロック・オペラからは目が離せません。高水準のバロック・オペラはヨーロッパでしか鑑賞が難しいですからね。





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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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