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五嶋みどり・ヴァイオリン・リサイタル@サントリーホール 2014.10.7

五嶋みどりはもちろん、天才少女だった頃から名前は知っていましたが、その演奏を聴くのはこれが初めてです。一体、どんな演奏をするのか、楽しみです。

まず、今日のプログラムを紹介しておきます。

  ヴァイオリン:五嶋みどり
  ピアノ:オズガー・アイディン

  シューベルト:ピアノとヴァイオリンのためのソナチネ ニ長調 D384
  シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 Op.121

  《休憩》

  モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K304
  R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18

   《アンコール》
     ドビュッシー:『前奏曲集第1巻』から「亜麻色の髪の乙女」

まず、シューベルトのピアノとヴァイオリンのためのソナチネです。単純で明快な曲ですが、シューベルトらしいメロディアスな名曲です。しかし、その美しい曲が何故か、よく響いてきません。ヴァイオリンの音色自体は美しいのですが、ホールに響いてきません。時折、綺麗な旋律も聴こえてはきますが、全体としてはヴァイオリンの響きが低調に感じます。首をひねっているうちにこの短い曲が終了。不発のままに終わってしまった感じです。

次はシューマンのヴァイオリン・ソナタ第2番。今日のプログラムで一番期待していた曲です。気持ちを入れ直して、演奏に耳を傾けます。しかし、第2楽章までは依然として、ヴァイオリンの響きがもう一つの感がぬぐえません。そして、大好きな第3楽章。ピチカートでコラールの旋律が始まります。少し平板な表現に思えます。ピチカートの部分を終え、美しいレガートの演奏に耳を奪われ始めます。saraiの集中力も高まり、じっと音楽に没入します。ヴァイオリンの響きは小さな音量ですが、実に美しい音楽がそこにあります。ダブルストップの演奏になり、さらに楽趣が高まります。やっと、このあたりで、五嶋みどりの演奏スタイルの独自性が分かってきました。彼女のヴァイオリンは大きな響きで聴衆にこれみよがしに語りかけてくるのではなく、小さな響きでそっと内省的な音楽を奏でるだけで、その音楽を聴衆が自ら聴きにいかなければならないようです。誤解かもしれませんが、五嶋みどりの音楽は彼女だけで創造するのではなく、聴衆も参加して、一緒に作り上げていくものだと悟りました。そうすることで、聴衆一人一人とパーソナルに対話する音楽が生まれます。アクティブに彼女の音楽に参加することで、音楽の素晴らしい美しさを感じとることができます。第3楽章は素晴らしい感銘がありました。第4楽章はどうでしょう。やっぱり、そうでした。こちらからアクティブに彼女のヴァイオリンを聴きにいくと、そこには美しい音楽の本質的なものが感じられます。しかも単にヴァイオリンの美しい響きだけではなく、五嶋みどりの誠実で純粋な心を感じ取ることができました。心を開き、彼女と音楽を共有する。それが五嶋みどりの音楽の世界です。

休憩後の後半はまずは、モーツァルトの美しいヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K304です。先ほどと同様に心を開いて、彼女の音楽に参加します。すると、えも言われないような美しいモーツァルトの抒情が感じられます。特に第2楽章の美しさはもううっとりとします。受け身に聴き流して、うっとりではなく、うっとりする音楽を彼女と一緒に作り上げるのです。ヴァイオリンの響きが聴こえてくる前に、自分なりの音楽を予測して組み立て、実際に聴こえてくる彼女のヴァイオリンの響きと合成しながら聴くという作業です。美しい音楽を感じ、また、五嶋みどりの純粋な心を受けとめることができました。こういう体験は初めてです。

最後はR.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ。これは実に素晴らしい演奏でした。この日、一番、心に響いてきました。自分なりに音楽を感じ取ることで、若き日のR.シュトラウスのリリックな音楽を存分に感じることができました。第2楽章の美しさは心に残りました。

音楽をじっくりと味わうことができました。しかし、聴衆として、大変な集中力を要したことも事実で、ぐったりと疲れました。半分、自分で音楽を創造したような感じです。こういう音楽の聴き方をしたのは長い人生で初めてのことで、そういう意味では面白い体験になりました。




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Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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