今日はモーツァルト、リスト、ショパンを弾きましたが、モーツァルトを弾くときはモーツァルト弾き、リストを弾くときはリスト弾き、ショパンを弾くときはショパン弾きというように、作曲家のスタイルに合わせた多彩で知的なアプローチには脱帽です。とりわけ、リストの演奏が素晴らしく、巡礼の年《ダンテを読んで》はもう、ありえないような演奏。予習で聴いたアラウの演奏も素晴らしい演奏でしたが、それをはるかに凌駕する演奏。リストのピアノ曲の真髄を極めたような演奏を聴いているうちに感動の波が襲ってきました。リストの作品を聴いて、こんなに感動したのは初めてです。ともかく、ピアノの豊かな響きが圧倒的。それに加えて、実に音楽的な表現が自然に表出する感じ。スーパーモードとしか思えない演奏です。どこにも無理がなく、軽やかにピアノを弾いていますが、何せ、これはリストの難曲です。前回聴いたリサイタルでは、こんなに凄かったという記憶はありません。この1、2年で高みに上り詰めたということでしょうか。
今日のプログラムは以下です。
ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ
モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番ニ長調 K.284
リスト:ヴェルディのオペラ《アイーダ》より、神前の踊りと終幕の二重唱 S.436
リスト:巡礼の年 第2年《イタリア》から、ダンテを読んで(ソナタ風幻想曲)
《休憩》
ショパン:24の前奏曲 Op.28
《アンコール》
ショパン: ノクターン ヘ長調 op.15-1
ショパン: ワルツ 変イ長調 op.34-1
ショパン: マズルカ 変ロ長調 op.7-1
1曲目のモーツァルトのピアノ・ソナタ第6番はモーツァルトらしい粒立ちのよいタッチの響きに乗せて、高貴とも思える音楽が展開されます。長大な第3楽章の変奏曲の終盤あたりで、思わず、はっと居住まいを正します。香気が立ち上るような何と美しい音楽なんでしょう。神が乗り移ったような演奏、ミューズが舞い降りてきたようです。最高のモーツァルト、最高の音楽です。
2曲目のリストは打って変わって、華やかな演奏です。《アイーダ》のエジプト風の妖しい調べを幻想的に演奏していきます。しかも自在な演奏です。先ほどまでの古典的な響きや表現とは異質な演奏ですが、芯は同じく、音楽的な演奏だということです。知的に考え抜きながらも、自然に音楽的な表現になるのがこのアヴデーエワの美質のようです。
3曲目のリストは初めから、圧倒的な迫力の演奏です。思いっ切り、激しいアプローチですが、彼女の超絶的な技巧は冴えわたり、まったく、ミスらしいミスもないパーフェクトな演奏。自然に楽々と弾きこなしているようですが、聴いているこっちは次第に熱くなっていきます。大変な感動に襲われました。こんなピアノ演奏を聴くのは初めてです。《ダンテを読んで》がこんなに凄い曲だったとは・・・ピアノ音楽の奥義を聴かされた思いです。最高の音楽体験となりました。
休憩後のショパンの前奏曲は前半に聴いたリストがあまりに凄過ぎて、少し、拍子抜けの感じ。それでも、第12番あたりから、演奏が冴えわたり、後半は素晴らしい音楽です。最後の第24番は素晴らしい響きに魅了されました。
アンコールはショパン3曲。特に有名なワルツは少し乱暴とも思えるほどの凄まじい演奏。究極のショパンです。
アヴデーエワ最高!! 来年のショパンのコンチェルトもチケット入手済です。とても楽しみです。今後、聴き逃せないアーティストがまた一人増えました。
↓ saraiの旅を応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
