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エル・グレコはプラド美術館から:ムリリョと言えば《無原罪の御宿り》、そして、素晴らしきフランドル絵画の傑作群

2014年5月27日火曜日@マドリッド、セゴヴィア/17回目

プラド美術館には、まだまだ、名品があります。

スペインを代表する画家のひとり、ムリリョも見逃せません。
ムリリョは1618年、アンダルシア地方のセビーリャに生まれました。以後、ずっと、そこで活躍しました。50歳以降の1670年から晩年まで、その芸術は頂点に達します。宗教画の世界で、スティロ・バポローソ(薄もやの様式)と呼ばれる、画面がぼんやりと柔らかい薄もやに包まれた幻想的な表現で描いた聖母マリアの姿はムリリョならではのものです。特に繰り返し描いた《無原罪の御宿り》はムリリョの独壇場の画題です。無原罪の御宿りというのは、聖母マリアの処女懐胎のことではなく、マリア自体もその母アンナの胎内にいたときから、原罪を逃れていたというものです。つまり、男女の情欲なしにマリアも生まれてきたというもので、マリア信仰の基礎になる考え方です。そういう無原罪の存在としてのマリアが描かれたのが《無原罪の御宿り》の絵画で、言わば、そのスペシャリストであったのがムリリョです。無論、エル・グレコの《無原罪の御宿り》も大傑作ですが、ムリリョは飽きることなく、何枚もこの《無原罪の御宿り》の傑作を描き続けました。

これはその《無原罪の御宿り》の一枚です。1670~80年頃、ムリリョ52~62歳頃の作品です。ムリリョの描くマリアはあどけなさを残し、とっても愛らしい存在に感じます。この画題では、いつもほとんど同じ構図ですが、天を仰ぎみるマリアの美しさはなんとも言えません。夢か幻のようなマリアの姿はマリア信仰にふさわしく神々しいものです。


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これも《無原罪の御宿り》の一枚です。1678年頃、ムリリョ60歳頃の作品です。真っ白い衣に青いマントのマリアは三日月に乗って、天使たちに支えられながら、天から舞い降りてきます。キリスト教徒ならずとも、マリアにうっとりと魅了されてしまいます。あー、マリアが可愛い!!


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これはそれらの作品に先立って、若い頃にムリリョが描いた《ロザリオの聖母子》です。1650年頃、ムリリョ32歳頃の作品です。聖母子が実にリアルな人間として、写実的に描かれています。夢幻などではなく、現実に存在する人間です。しかし、ここでもマリアは美しいですね。この美しい表現はロココ美術の先駆けとなるものでした。


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これは《善き羊飼い(善き牧者としての幼児キリスト)》です。1655~60年頃、ムリリョ37~42歳頃の作品です。フェリペ5世の王妃がセビーリャ滞在時に気に入って買い上げて、以後、アランフェス宮殿の国王夫妻の寝室に飾れていたそうです。牧歌的な美しい作品です。画題は、罪を犯した人間が悔い改めて、それを神が受け入れる姿を、子羊が迷っているのを羊飼いが見つけることができて、喜んでいる姿として、なぞられた教義≪善き羊飼い≫です。きっと、スペイン国王も人間としての救いを希求していたんでしょう。


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スペイン絵画はここまでにします。まだ、スルバランとか重要な画家はいますが、スペイン人画家以外の素晴らしい作品もあります。

まずはフランドル絵画で、ヤン・ファン・エイクと並ぶファン・デル・ウェイデンです。
ファン・デル・ウェイデンは近年、ぐんぐん評価がうなぎ上りの初期フランドル絵画を代表する画家です。しかし、世界に約60点ほど残る彼の作品のうち、1点も確実に真筆と認められている作品はないという異常な状況です。その中で、ほぼ真筆であろうと言われている作品が3点あり、資料が一番多いのが次の作品です。

これは《十字架降下》です。1435年頃、ウェイデン35~36歳頃の作品です。これは素晴らしい傑作ですね。緻密な表現ではヤン・ファン・エイクに一歩譲るかもしれませんが、実に深い表現の作品です。亡くなったキリストを悼む空気感が強く感じられます。構図も考え抜かれた素晴らしいものです。宗教画を超えて、人間の普遍的な悲しみが見事に表現されています。初期フランドル絵画、恐るべしと思いました。


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次は同じ15世紀から16世紀にかけて活躍したドイツ・ルネサンスの巨匠アルブレヒト・デューラーです。

これは《自画像》です。1498年頃、デューラー26歳頃の作品です。あらゆる自画像の見本とも思える出来栄えの素晴らしい作品です。ミュンヘンのアルテ・ピナコテークにある自画像も見事な作品ですが、こちらも同様な価値を持つ作品です。それにしても、若きデューラーの自信満々の姿って、笑ってしまうほどです。


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これは《アダムとイブ》です。1507年頃、デューラー35歳頃の作品です。いやはや、これも傑作ですね。特にイブの裸婦像が独特な表現で素晴らしいです。身体の微妙なバランスの感じがなんともいえません。


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次は16世紀フランドルの画家ピーテル・ブリューゲル(父)です。

これは《死の勝利》です。1562年頃、ブリューゲル32歳頃の作品です。ブリューゲルというと、必ず、その絵に寓意を込めています。この作品の寓意は、死は貴賤の違いにかかわらず、誰にも訪れるというもの。画面上、あらゆる階層の人間が死に襲われる様が描かれています。当時、ペストがヨーロッパ中に大流行したことも下地にあります。また、フェリペ2世のフランドルへの暴政に苦しまされた民衆の暴動も頻発し、この絵はスペイン圧政への抗議も込められています。それにしても画面一杯に広がる様々な表現の多様さは凄まじいばかりです。


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次はオランダを代表するというか、世界的巨匠のレンブラント。

これは《アルテミシア》です。1634年頃、レンブラント28歳頃の作品です。アルテミシアは古代小アジアの提督の妻で、夫の死後、夫の遺灰を飲み込み、自らを夫の墓と化したと言われています。モデルは妻サスキア。夫婦の愛をこの作品に込めたのでしょう。


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次は17世紀フランドル最大の画家にして、スペインを外交官として訪れたルーベンスです。ベラスケスとも親交を結びました。

これは《三美神》です。1636~37年頃、ルーベンス59~60歳頃の作品です。ルーベンスが外交官としてスペインを訪問して以来、フェリペ4世はルーベンスの絵画の虜となっていきました。作品収集を続ける中、ルーベンスが1640年に亡くなります。死後、競売に出された作品の中から、この《三美神》を購入しました。こうして、プラド美術館に素晴らしいルーベンス・コレクションが出来上がることになります。実はこの作品以外にも素晴らしい作品が満載です。ですが、saraiは残念ながら、ルーベンスは好みではないので、コレクションの中の最高の一枚だけを紹介するだけにします。この作品はルーベンスの美点が表出している傑作です。


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プラド美術館のコレクションもあとイタリア絵画を残すのみとなりました。次回をお楽しみに。







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Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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