配偶者がチケット購入の列に並んでくれているうちに、トレドのカテドラルSanta Iglesia Catedral Primada de Toledoを外部から子細に眺めることができました。各時代の色々な様式が混ざってはいますが、全体的にはゴシック様式の荘厳な建物です。
配偶者が待つチケット売り場の列に戻ります。ほどなくチケットを購入できました。拝観料は1人8ユーロです。

英語版の案内パンフレットもゲット。

カテドラルの入り口でチケットをチェックしている人に示すと、すんなり通してくれました。入場者の列もありません。
中に入ると、スペインのカテドラルの建築を代表する建物の圧倒的な空間の素晴らしさに魅了されます。

トレドのカテドラルの立派さに感動します。それもその筈、マドリッドに首都が移る前はトレドがスペインの首都。トレドのカテドラルはスペイン・カトリックの総本山として、絶対的な権威を誇っていました。
内陣の祭壇裏の通廊を進んでいきます。

内陣裏には美しい空間が広がります。

上部にある美しい装飾は華麗な色彩に満ちていて、見事な彫刻が配置されています。あっけにとられるような美的な空間です。

内陣裏に回り込むと、内陣の祭壇裏の巨大な大理石の祭壇彫刻に驚愕します。これはトランスパレンテEl Transparenteと呼ばれる彫刻群です。

なかでもトランスパレンテ下部にある聖母子像は一際、印象的です。外部から差す光で明るく浮かび上がっています。

しばし、このトランスパレンテに目を奪われます。これはスペインとジェノヴァの大理石で創られたスペイン・バロックの傑作。1732年のナルシソ・トメによる労作です。

トランスパレンテの脇を見ると、微細な彫刻が続いています。そこまでやるかという感じです。もちろん富の力も大きいですが、芸術家の執念によるパワーが真実の美を生み出すことが実感できます。

内陣裏をぐるっと回って逆サイドの通廊に出ると、そこは聖具室の入口です。カテドラル内部の鑑賞はひとまず後に回しましょう。
このカテドラルの華は何といっても聖具室Sacristiaです。聖具室に足を踏み入れます。聖具室の天井はフレスコ画に覆い尽くされて、美しい空間です。

このカテドラルの聖具室いっぱいに飾られたエル・グレコの19作品は、見ごたえ十分。ひとつの部屋にこんなに多くのエル・グレコの作品が展示されているところはどこにもないでしょう。中でも最高傑作のひとつ《聖衣剥奪》の素晴らしさには息をのみます。1577~79年、エル・グレコ36歳から38歳頃の作品です。この聖具室を飾るために、キリストが磔刑の前に着衣をはがされるというテーマの絵画がエル・グレコに依頼されました。聖具室には法衣などが収められているので、ぴったりのテーマだったんです。画面の中心を覆う聖衣の赤い色は迫力に満ちています。この赤い聖衣こそ、この絵の主役とも言えます。天を見上げるキリストの穏やかな表情に、この絵を見る人々は救われる思いを抱くことでしょう。これから、人類の罪をすべて背負って、キリストは従容として磔刑を受け入れて死に赴くわけですからね。また、画面の下部左にいる青いローブの聖母マリアが悲しそうに十字架を見つめている視線には心が痛みます。この作品はエル・グレコがトレドに渡って、初めて作り上げた傑作です。この後、40年弱に渡って、エル・グレコはトレドで傑作を書き続け始めますが、この作品がその記念すべき第一歩になりました。

聖具室の先には、ティツィアーノの傑作、さらに予想だにしなかったカラヴァッジョの作品までありました。
聖具室でエル・グレコの作品を堪能し、カテドラル内部の鑑賞に戻ります。
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