ハインリッヒ・シフ(チェロ)、ルトスワフスキ指揮バイエルン放送交響楽団
アンドレイ・バウアー(チェロ)、アントニ・ヴィト指揮ポーランド国立放送交響楽団
いずれも素晴らしい演奏ですが、所詮は録音にしか過ぎず、今日のライブの迫力には及びません。
今日の演奏はまず、長大な独奏チェロのカデンツァから始まりますが、チェロの美しい響きに耳を奪われます。次第にウィスペルウェイの気迫が聴く者を圧倒します。即興性も感じられる演奏は見事の一語。オーケストラが入ってくると、さらにヒートアップしていきます。終盤に入り、オーケストラと独奏チェロが爆走し始めます。もう狂ったように突進するのみ。息を呑んで聴いていますが、その迫力に押し潰されそうになります。リントゥの指揮も素晴らしく冴えわたっています。都響の演奏も凄まじい響きを聴かせてくれます。やがて、独奏チェロの響きが止んで、曲が終わったことを悟ります。大変な感銘を受けました。渾身の演奏という言葉は、こういう演奏を表現するためにあるのでしょう。凄まじくもカッコいい演奏でした。それにしても、ルトスワフスキ恐るべし!
ところで、今日のプログラムは以下です。
指揮:ハンヌ・リントゥ
チェロ:ピーター・ウィスペルウェイ
管弦楽:東京都交響楽団
シベリウス:交響詩『夜の騎行と日の出』 Op.55
ルトスワフスキ:チェロ協奏曲(1970)
《アンコール》 J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番から サラバンド(チェロ・アンコール)
《休憩》
一柳慧:交響曲第9番〈都響委嘱作品・世界初演〉
始めに演奏されたのはシベリウスの交響詩『夜の騎行と日の出』。そんなに聴く曲ではありません。予習したのは以下のCD。
ネーメ・ヤルヴィ&イェーテボリ交響楽団
ヴァンスカ&ラハティ交響楽団
特にヴァンスカの演奏は素晴らしいものです。やはり、お国ものは違います。今日の指揮者ハンヌ・リントゥもフィンランド出身。さすがに素晴らしい指揮で、ヴァンスカとはタイプが違いますが、美しい音楽を聴かせてくれました。スケールの大きな指揮で深々としたシベリウスでした。
続くルトスワフスキのチェロ協奏曲は上述の通り、最高の演奏でした。アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲でしたが、出だしはルトスワフスキのチェロ協奏曲のカデンツァの出だしのレの音の連打で始めるというお洒落で茶目っ気のあるもの。しかし、続く演奏の中身はバッハの音楽の真髄を抉り出すような精神性に満ちたもの。出色の演奏でした。マタイ受難曲の一節を聴いたような思いに駆られる厳しい音楽。現代のルトスワフスキから古典音楽の原点であるバッハまで弾きこなすウィスペルウェイの底知れぬ実力には脱帽です。
最後は一柳慧の交響曲第9番。これは世界初演。フルオーケストラを駆使した多彩な響きの曲。ただ、正直、その評価はどうも分かりません。指揮も都響の演奏も見事でしたが、saraiは消化できませんでした。
今日は今年最初のサントリーホール詣で。今年も数多く、足を運ぶことになりそうです。2月はティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン、3月はヒラリー・ハーンと楽しみな公演が目白押しです。その最初の出足としてはなかなかよかったかな。
↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね
いいね!
