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ボヘミアの心フルシャ+プラハ・フィルと巨匠マイスキー@サントリーホール 2015.2.6

フルシャは必ず完全燃焼の演奏を聴かせてくれます。ましてや、お国もののドヴォルザークともなると、素晴らしい演奏は最初から約束されたも同然。
なお、ちょうど、3年前の2012年3月11日にフルシャ+プラハ・フィルの来日コンサートを聴きました。そのときの記事はここです。東北大震災の1年後ということで鎮魂のコンサートでもありました。

1曲目のドヴォルザークの序曲『謝肉祭』から素晴らしい響きが全開。これがプラハ・フィルかと驚くほど、3年前の来日時の演奏よりも充実した響きがホールに満ちます。特に以前は不満に感じた木管が美しい響きを聴かせてくれるのにびっくりです。音楽監督のフルシャが3年間、アンサンブルの充実に力を入れてきたんでしょう。心地よく響き渡る強奏から抒情に満ちた弱奏まで、ボヘミアを感じさせる演奏に大満足でした。

2曲目はドヴォルザークのチェロ協奏曲。名曲中の名曲です。チェロは巨匠マイスキー。実演で聴くのは初めてです。第1楽章、フルシャは抑えた響きでオーケストラのパートを開始します。次第にこれぞボヘミアという雰囲気の音楽が展開されていきます。オーケストラの演奏は最上級とも思える演奏です。マイスキーはまだチェロを弾き始めていませんが、そのボヘミアの響きを体に受け止めて、どんどん充電しているようです。やがて、マイスキーの演奏が始まります。気迫のこもった力強い演奏です。巨匠らしい自在な演奏ではありますが、少し、力が入り過ぎの感もあります。しかし、フルシャはそのマイスキーの自由闊達な演奏を見事に受け止めて、オーケストラとうまく協調させて、美しい音楽に昇華させます。マイスキーの気迫の演奏とフルシャ指揮のプラハ・フィルのボヘミアの響きが融合して、素晴らしく充実した第1楽章が展開されました。ほっと一息ついて、第2楽章。マイスキーもこのあたりから力がうまく抜けて、バランスのとれた演奏になり、味わい深い響きが聴けます。オーケストラの柔らかい響きと混ざり合って、しみじみとした抒情の音楽です。第3楽章では一気にヒートアップ。疾走したかと思えば、スローダウンして、しみじみとした音楽を展開します。フィナーレ近くでの独奏チェロとコンサートマスターの独奏ヴァイオリンのデュオは素晴らしいアンサンブルで耳を楽しませてくれます。そして、ギヤーを複雑に入れ換えながら、フィナーレの高みに上り詰めます。とても素晴らしい演奏でした。巨匠マイスターと若きマエストロのフルシャの見事な協奏でした。2人の醸し出す緊張感にはsaraiも巻き込まれてしまいました。

やんやの拍手の中、アンコールはチェロの独奏ではなく、独奏チェロとオーケストラのための音楽です。これは初めて聴きました。ドヴォルザークの《森の静けさ》です。元はピアノ連弾曲だった《ボヘミアの森から Ze Šumavy 》Op.68の第5曲をドヴォルザーク自身が独奏チェロとオーケストラ用に編曲したものだそうです。あまり、派手さのない曲ですが、美しい演奏でした。
さらに今度はチェロだけのアンコール曲。やっぱり、バッハの無伴奏チェロ組曲です。マイスキーはさすがの演奏で、バッハの孤高の世界をとことん堪能させてくれました。いつまでも聴いていたいような気にさせてくれる圧巻の演奏でした。

休憩後、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」です。いまさらながらの超有名曲ですが、いい機会なので、力を入れて、予習しました。このコンサートに向けて、予習したのは以下。

 ヴァーツラフ・ノイマン指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1972年録音)。
 ヴァーツラフ・ノイマン指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1981年録音)。
 ヴァーツラフ・ノイマン指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1993年録音)。
 ヴァーツラフ・ノイマン指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1995年録音)。
 カレル・アンチェル指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1961年録音)。LPレコード。
 ズデニェック・コシュラー指揮/チェコ・ナショナル響(1994年録音)。
 ヴァーツラフ・ターリッヒ指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(1954年録音)。
 ラファエル・クーベリック指揮/ベルリン・フィル(1973年録音)。
 ラファエル・クーベリック指揮/バイエルン放送響(1980年録音)。

いずれもチェコ出身(コシュラーは正確に言えば、スロヴァキアですが、以前はチェコと同じ国でした)の指揮者。チェコは多くの逸材を産んでおり、今日聴くフルシャもその継承者の一人です。
ヴァーツラフ・ノイマンは亡くなる年に録音した1995年録音の演奏が優れていますが、全体に面白味がもうひとつに感じます。
やはり、断トツに素晴らしいのはヴァーツラフ・ターリッヒの演奏です。骨太で直線的な演奏。この曲の本質をずばっと突いた超名演です。音質も上々です(アンドロメダ盤)。
それに次ぐのはズデニェック・コシュラーとラファエル・クーベリック(バイエルン放送響)です。
今回は聴きませんでしたが、チェコ出身ではないジュリーニのいくつもの演奏も好んでいます。

そういうところで今日の演奏ですが、さすがにターリッヒとまではいきませんが、歴代のチェコ出身の名指揮者達と肩を並べるような素晴らしい演奏でした。ダイナミックスさと抒情にあふれる演奏でしたが、一番の美質はフルシャの音楽に対するひたむきな熱情と言えるでしょう。彼の熱情にこちらもすっかり、引き込まれてしまいました。その最たるものが熱く演奏した第4楽章です。若々しく、たぎる情熱の波に翻弄されてしまいました。もちろん、第2楽章のしみじみとした表情も味わい深いものでした。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  チェロ:ミッシャ・マイスキー
  管弦楽:プラハ・フィルハーモニア管弦楽団

  ドヴォルザーク:序曲『謝肉祭』 Op.92
  ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104
   《アンコール》
    ドヴォルザーク:森の静けさ
    J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第2番 BWV1008 から「サラバンド」

   《休憩》

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 「新世界より」 Op.95

   《アンコール》
    ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調 B147/2 (Op.72-2)
    ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ハ長調 B147/7 (Op.72-7)

アンコールのスラヴ舞曲2曲はいずれも有名な曲ですが、とても美しい演奏で高揚させられました。全曲を聴かせてもらいたいものです。

3年前には、ドヴォルザークの交響曲第8番を聴きましたが、今日の高いレベルの演奏で聴き直したいものです。次回の来日では、何を聴かせてくれるでしょう。


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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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