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ミンコフスキによる素晴らしきグルックのオペラ《アルチェステ》@パリ・オペラ座(ガルニエ) 2015.7.7

何と言っても、ミンコフスキ指揮のグルノーブル・ルーヴル宮音楽隊のしっかりした低音部をベースにした繊細かつ華麗なアンサンブルの美しさに音楽を聴く喜びを触発され尽くしました。グルックの音楽、オペラがこんなに美しいものだとは思ってもみませんでした。特にひそやかな抒情を歌う場面での音楽ときたら、うっとりするのみです。ミンコフスキがオーケストラの響きを極限まで抑え、タイトルロールのアルチェスト役のヴェロニク・ゲンスが抒情の限りを尽くして歌うシーンでの感動といったら、オペラ好きのかたならば、状況をお察しくださると思います。オーケストラだけが美しい音楽を奏でるところも素晴らしさの限りです。
コリフェ4人(合唱隊の先導役)の素晴らしい歌唱も見事でした。特に若いソプラノの見事な歌唱にはほれぼれ。合唱も素晴らしく、合唱とコリフェが交互に歌うシーンは舞台上の位置をよく考えてあり、素晴らしい効果を生んでいました。
演出は白墨で黒板にリアルタイムに絵を描いていくのが骨子になっていました。演奏開始前からのそういう演技と言い、最近の流行のようですね。まあ、これは可もなし不可もなしと言う感じです。おっと驚いたのが幕間休憩後の第3幕で、それまでピットにいたオーケストラが舞台に上がり、舞台の前面と一番奥、そして、ピット内で歌手たちが演技・歌唱したことです。視覚面では効果がありましたが、これって、演奏会形式のオペラみたいだし、その上、ピットの分、音楽が後ろに引いてしまったみたいで、音楽面では確実にマイナスになっていました。特にそれまで美しく響いていたオーケストラの音が遠くなり、今回の公演で一番素晴らしかったオーケストラの良さを減じてしまった格好です。saraiの個人的な思いでは、演出はあくまでも音楽を美しく聴かせることを最優先にすべきだと感じていますが、残念ながら、最近はしばしば、音楽を軽んじた結果になる演出も見受けられます。今回は音楽が素晴らしかっただけにもったいないことだったと思います。演出のオリヴィエ・ピィはアヴィニョン演劇祭のディレクターをしていた人だそうです。

ところでこのグルックのオペラは最初、イタリア語版で作られて、ウィーンで初演されたものです。グルックの有名なオペラ《オルフェオとエウリディーチェ》と同様にフランスで再演するにあたって、フランス語版に書き変えて、フランス好みに音楽の追加・変更を行い、パリ版としたものが今日公演されたものです。グルックはドイツに生まれ、オーストリアで活躍し、その後、音楽教師として仕えていたマリー・アントワネットに従って、フランスに渡りました。生涯でドイツ語のオペラを一つも作らず仕舞でした。そんな時代だったのでしょう。まるでイタリアの作曲家かフランスの作曲家と誤認してしまいそうですが、最後はウィーンで亡くなったれっきとしたドイツ・オーストリア系の作曲家です。しかし、今日のオペラを聴いていると、いい意味でフランスのバロックの音楽家と思えてしまいます。このオペラはウィーンでは今でもウィーン版(イタリア語版)で上演されているんでしょうか。

プログラムとキャストは以下です。

  指揮:マルク・ミンコフスキMarc Minkowsk
  演出:オリヴィエ・ピィOlivier Py
  管弦楽・合唱:グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊Chorus and Orchestra of Les musiciens du Louvre Grenoble.

  グルック:オペラ《アルチェステ》(パリ版:フランス語版)初演1776年4月23日、パリ/Paris,王立音楽アカデミー/Opera national de Paris(パリ・オペラ座)

  アルセスト/Alcesteテッサリア地方ペライの王女(S)
    ヴェロニク・ゲンスVéronique Gens
  アドメート/Admeteテッサリア地方ペライの王(T)
    スタニスラス・ド・バルベイラクStanislas de Barbeyrac
  祭司長/High Priest アポロ神殿の祭司長(Br)、エルキュール/Herculesギリシャの英雄ヘラクレス、アドメート王の友人(Br)
    ステファーヌ・デグーStéphane Degout
  エヴァンドロ/Evandreアドメート王の信頼篤き廷臣(T)、コリフェcoryphée alto
    Manuel Nuñez Camelino
  コリフェCoryphée soprano
    Chiara Skerath
  アボローン/Apollonアポロの神(Br)、伝令官/Herald アドメート王の廷臣(B)、コリフェCoryphée basse
    Tomislav Lavoie
  コリフェCoryphée ténor
    Kevin Amiel
  託宣者/Oracle神のお告げを伝える者(B)、地獄の神/Thanatos死の神(B)
    François Lis


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さすがにバレエの殿堂:バレエ《ラ・フィーユ・マル・ガルデ》@パリ・オペラ座(ガルニエ) 2015.7.8

さすがにパリ・オペラ座のバレエです。実に完成度の高い舞台を見せてくれました。まさにバレエの殿堂にふさわしいものです。とは言え、このバレエ《ラ・フィーユ・マル・ガルデ》自体はフランス生まれのバレエですが、このバレエ振付はフレデリック・アシュトンが英国ロイヤル・バレエで1960年に行ったものをそっくり、そのまま、2007年にパリ・オペラ座に持ってきたものです。そういう意味では、ロイヤル・バレエが作り上げたバレエをパリ・オペラ座のバレエ・ダンサーたちが演じているもので、両者を融合したバレエと言えます。舞台装置も含めて、ロイヤル・バレエと全く同じものです。舞台で踊っているダンサーの後ろにいるダンサーたちの小芝居の仕草までロイヤル・バレエを思わせるものです。

主役のリーズを踊ったレティツィア・ガロニの小気味よい踊りが光りました。驚くことに彼女はまだコリフェ(パリ・オペラ座のランクではエトワール、プルミエール・ダンスーズ、スジェに続く4番目のランク)なんですね。エトワールが踊る役柄に抜擢されたのですから、余程、将来を嘱望されているんでしょう。試されていると言ってもいいのかもしれません。まだ、23歳くらいのようです。第3幕でのタンバリンの踊りの見事さには、目を奪われました。試験としては合格かも知れませんが、年末の昇格試験をパスしないと上には上がれないそうです。頑張ってほしいですね。
コーラスを踊ったマチアス・エイマンはエトワール。見事な踊りに客席が沸きました。日本公演ではバジルを踊った人ですね。

パリ・オペラ座で見るバレエの楽しさは格別でした。

プログラムとキャストは以下です。

  指揮:Philip Ellis
  振付:フレデリック・アシュトンFREDERICK ASHTON
  管弦楽:パリ・オペラ座管弦楽団

  バレエ《ラ・フィーユ・マル・ガルデ》LA FILLE MAL GARDÉE 音楽:フェルディナン・エロール 編曲:ジョン・ランチベリー

  リーズ:レティツィア・ガロニLetizia Galloni
  コーラス:マチアス・エイマンMathias Heymann
  未亡人シモーヌ:Yann Saïz


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モンマルトル散策

泊まっているホテルがモンマントルのブーランシュなので、安易ですが、今日はモンマルトルを散策してみましょう。
その前に早起きして、近くのパン屋で朝食用のバゲットを調達。パリの朝食は焼きたてのバゲットでしょう。

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朝食後、まずは起点になるピガールまでメトロ一駅分、歩きます。この界隈は結構、いかがわしいお店も並んでいます。パリでも下町ですね。ピガール広場からモンマントル・バスという小型バスに乗って、モンマルトルの丘の上を目指します。歩いて上るのは大変なので、丘の上から散策を開始します。バス路線があまり、よく分からないので、丘の一番上のバス停で下り損ね、慌てて、坂道を下り始めたところで降ります。ワイン畑のあたりです。いったん、丘の上のサクレクール寺院まで坂道を少し上ります。久々のサクレクール寺院です。

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そこから、パリの市街地を展望します。観光客の多さにも驚きます。パリでも有数の観光地ですね。

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サクレクール寺院を見学。ここには以前も来ましたが、寺院の内部は初体験。ビザンチン様式の美しい内部です。
そこから、モンマルトル博物館(ルノワールの住居)、ワイン畑と見て歩きます。ここでできるワインは周辺のレストランで飲めるそうです。

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ムーラン・ド・ラ・ギャレットはちょっと探して見つけました。次は洗濯船を目指しますが、これはどうしても分かりません。いったん、探すのを諦めましたが、その後、偶然に発見。しかし、洗濯船のあった跡があるだけです。なお、洗濯船はピカソ、ルノワール、モディリアーニらがアトリエを構えていたところです。

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ここまでで充分に疲れたので、休息を兼ねて、眺望のよいテラス・ホテルへ歩きます。7階の展望レストランでシャンパンをいただきながら、眺めを楽しみます。本物のシャンパンを飲むのもずい分、久しぶりのような・・・。遠くエッフェル塔も見えます。今回のパリ滞在でエッフェル塔を見る唯一の経験になりそうです。

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元気の出たところで、ゴッホが弟テオのアパートに居候していた建物を見ます。銘板が張ってありました。ゴッホがパリに出てきて、2年ほど住んだ記念すべき場所です。ゴッホのファンとしては、見逃せない場所です。

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最後は滞在しているホテル近くのカフェ・デ・デュ・ムーランを外から覗きます。映画《アメリ》が撮影されたところ。カフェの奥に《アメリ》のポスターが貼ってありました。

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ほぼ、モンマルトルの要所は巡りました。疲れたのでホテルの部屋で休息。
夜はパリ・オペラ座でバレエを見て、大満足。これでオペラ、コンサート、バレエは予定通り、すべて見た(聴いた)ことになります。計14回の嬉しい経験になりました。

明日は1日、パリ見物。夜の便で帰国です。ヨーロッパからの現地レポートは今回で終了します。帰国後、ブログを再開しますので、また、お付き合いくださいね。


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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