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束の間のミュンヘン:レンバッハハウス美術館のワシリー・カンディンスキー、2/3

2014年6月17日火曜日@ミュンヘン/5回目

青騎士の館、レンバッハハウス美術館を鑑賞しています。

前回からは青騎士のリーダー、ワシリー・カンディンスキーの作品を鑑賞しています。前回は1908年までの作品を見てきました。まだ、カンディンスキーが自己の様式を確立するまでには至っていませんでした。今回は1909年にバイエルンの自然の中に佇むムルナウの町で一気に自分の進む道を見つけていく過程を見ていきます。この2年間の彼の充実ぶりはどうでしょう。この過程を経て、その後、1911年に青騎士が生まれることになります。まさにこの2年は青騎士の誕生の歴史でもあります。

《ムルナウ - 虹の見える風景》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。まだ、ものの形はありますが、細かいところは一切デフォルメされています。色も同様です。抽象化への道がいよいよ始まりました。

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《ムルナウ - 城と教会》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。ものの形や色はその具象性を示すためではなく、画面を構成する要素として、画面全体の構成美を高めることに主眼があるようです。画家の美意識を覗き見ているようで、楽しいですね。

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《ムルナウ - グリュン小路》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。抽象化はまだ途上です。

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《ムルナウ近郊の鉄道》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。これは素晴らしい。具象性と抽象性のバランスがとれています。ただ、抽象化への道は止まることはありません。

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《コッヘル - まっすぐな道》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。コッヘルはムルナウ近くの小さな村です。この作品ではモノは単純化されることによって、その存在感を増しています。モノは単純な直線とべた塗りの色彩で構成されるようになってきました。絵画の本質を問うような作品です。

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《コッヘル - 墓地と牧師館》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。抽象化されない部分が残りますが、具象の判別は難しくなってきました。

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《コッヘル - 墓地》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。これは粗いタッチの印象派とも見紛う感じ。この時代は1作1作が実験的であったんでしょう。抽象化は目的ではなく、美に至る過程をいかに見い出すかが問題ですからね。

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《コッヘル - 散歩道と家並み》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。これは対象の選択がよかったようです。抽象化が自然なプロセスに感じられます。

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《 室内(私の食堂)》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。これはマティスを思わせる色彩ですね。具象性の高い作品です。

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《山》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。いやはや、この作品あたりになると、もう、何が描かれているかは判然としません。赤と青と緑が盛り上がったところが山なんだろうとしか、言えません。一気に抽象化が進んでしまいましたね。実は山の上にはモスクワのクレムリンの玉ねぎ型の塔が描かれていて、山の麓には2人の人間がいます。もちろん、実際に見た風景ではなく、画家の心象風景なんでしょう。しかし、何が描かれているかが重要ではなく、シンプルな形と色の持つ根源的とも言える美感が伝わってくる作品です。

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《馬》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。白馬を中心モティーフにした抽象的作品です。そう言えば、カンディンスキーの作品にはよく白馬が登場します。上の《山》にも白馬に乗った人が描かれていました。

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《オリエント風》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。これがオリエント風かどうかはさておき、実にリッチな色彩に満たされた作品です。画面上の色の構成を追及して、素晴らしい美感に到達しています。具象的な作品では、こういう賑やかな色彩構成は難しいでしょう。

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《インプロヴィゼーションⅡへの習作》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。カンディンスキーは自らの絵画論「芸術における精神的なもの」の最終章で、彼の考える《純粋芸術》(抽象絵画とも言っていいかもしれません)に至る3つの構成について述べています。1つ目は外面的な自然・対象から受ける直接的な印象を描く《Impression:印象》。2つ目は無意識のうちに心の中でわきあがる印象を描いた《Improvisation:即興(インプロヴィゼーション)》。3つ目はそれをじっくりと心の内面で練り上げて作り出す《Composition:コンポジション》。そのいずれも抽象絵画へのアプローチ手段となりうるものですが、どうしても、印象よりも、インプロヴィゼーションやコンポジションのほうが抽象性が高くなっていったのはもちろんのことです。カンディンスキーはこの3つの系列の絵画シリーズを並行的に制作していきました。この作品はインプロヴィゼーションの先駆けとも言える作品です。この後、5年間でこのインプロヴィゼーション・シリーズは30枚ほど描かれます。カンディンスキーの内面にある記憶や想像が描かれているので、その抽象度は極めて高いものです。

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《インプロヴィゼーション6(アフリカ)》です。1909年、カンディンスキー43歳頃の作品です。インプロヴィゼーションとしては意外に明快な作品ですが、それは雰囲気だけ。ディテールは何も分かりません。明るい色彩が印象的です。

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《教会のある丘の風景》です。1910年、カンディンスキー44歳頃の作品です。色彩のかたまりの持つ力強さが画面に力を与えている作品です。

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《教会のあるムルナウ》です。1910年、カンディンスキー44歳頃の作品です。これは色彩の具象性すらも奪ってしまい、曖昧模糊とした画面構成になっています。柔らかいカラートーンは分かりますが、ここまでやられると、saraiもお手上げです。

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《牛》です。1910年、カンディンスキー44歳頃の作品です。まあ、言われれば、牛と乳搾りをしている女性、その先の風景が見えますが、この作品の主眼はそういうものを描き出すことではないでしょう。ふんわりした柔らかいフォルムと淡い色彩でそこはかとない雰囲気を味わう作品だと感じます。

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《《秋 I》のための習作》です。1910年、カンディンスキー44歳頃の作品です。マッシブな山とそれを輪郭とした幾何学的な町が見事に構成されています。

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《《冬Ⅱ》のための習作》です。1910年、カンディンスキー44歳頃の作品です。カンディスキーらしい暖色系の色彩と家々の鋭角的なフォルムで構成された作品です。

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カンディンスキーはこの2年間で抽象絵画の先鞭をつけ、その後の道筋も示しました。そして、ミュンヘンの前衛画家たちが青騎士という芸術運動の旗のもとに集うことになります。
次回はカンディンスキーの最終回。彼のその後の成熟した画業を辿ります。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ミケランジェロさん、saraiです。

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06/23 23:50 sarai

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最終公演に行きますが、ムーティ&ウィーン・フィルは渾身の力で凄い演奏を聴かせてくれますよ。特にシューベルトは有終の

11/09 22:13 sarai

尻上がりに素晴らしくなりました!
あの弦の響きにもうハマるのですよ!
あと2公演ありますが、もう既に同じプログラムを2回演奏しているので、ますます良くなるか、ち

11/09 10:56 えりちゃ

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん
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