最初のラヴェルはそこそこの演奏。ピアノとのソナタと違って、同じ弦楽器のチェロとのソナタなので、同質性の高い弦の響きが美しいアンサンブルになります。綺麗な演奏なのですが、もう一つ、インパクトが感じられませんでした。
次のシュルホフの二重奏曲は素晴らしい演奏。第1楽章からぐっと惹き付けられて、集中して聴いてしまいました。シュルホフの作品を聴くのは初めてです。シュルホフは20世紀前半に活躍したチェコの作曲家。ユダヤ人で左翼的な思想を持っていたために弾圧の対象になり、ソ連に脱出する直前にナチスに囚われて、強制収容所で結核で亡くなりました。そのため、彼の作品はずっと埋もれていて、演奏されるようになったのは最近のことだそうです。このシュルホフの作品はちょっとノントナール風にも聴こえますが、しっかりとトナール音楽です。当時は前衛的だったと思われる響きですが、日下紗矢子は見事に表現します。特にゆったりした部分を実に美しく演奏します。よいものを聴かせてもらいました。シュルホフの曲もよく、日下紗矢子もよしという演奏でした。今日のリサイタルで一番の聴きものでした。
休憩後、コダーイの二重奏曲です。この曲は演奏者がヴィルトオーソ的に弾きまくるような曲の作りになっています。ヴァイオリンもチェロも思う存分、自在な演奏で弾きまくります。演奏者も気持ちよく演奏しているようです。こちらも十分に楽しませてもらいました。日下紗矢子は素晴らしいテクニックで衒いのない演奏。まあ、芸術性を云々するような曲ではありませんが、素晴らしい演奏に耳を楽しませてもらいました。
今日のプログラムは以下です。
ヴァイオリン:日下紗矢子
ピアノ:ペーター・ブルンズ
ラヴェル:ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
シュルホフ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲
《休憩》
コダーイ:二重奏曲Op.7
《アンコール》
グリエール:ヴァイオリンとチェロのための8つの小品 Op.39~第4曲《カンツォネッタ》
庄司紗矢香の輝くような個性とはまた違ったタイプですが、室内楽では安定した演奏が素晴らしく、今後、とても期待できそうです。ちなみに庄司紗矢香よりも4歳年上ですが、パガニーニ国際コンクールで庄司紗矢香が1999年に史上最年少で優勝した翌年の2000年に惜しくも第2位になり、キャリア的には遅い登場となりました。ヒラリー・ハーンとは同い年。ユトレヒトで聴いたジャニーヌ・ヤンセンは1歳上。国内外、この世代のヴァイオリニストは才能がひしめいています。saraiはまた、楽しみな逸材を見つけた感じで嬉しいリサイタルになりました。
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