そう思いながら、厳粛な気持ちで聴き始めました。最初のキリエを聴くと、胸が感動でいっぱいになります。実に清らかな美しい演奏ですが、それだけではなくて、深い内容を湛えています。驚くようなレベルの素晴らしい演奏です。技術的にも最高ですが、それよりもピュアーな精神性の満ちているところに魅了されます。とりわけ、合唱のソプラノパートの美しさには心を打たれます。古楽器アンサンブルの朴訥とした響きがそれにぴったりと合います。結局、全編、感じたことはそれだけです。それで十分ではないでしょうか。最高のミサ曲ロ短調を聴けました。
いくらなんでも、感想がそれだけというのは何ですので、もう少しだけ。
特に前半のキリエ、グリーリアに感銘を受けました。一番、素晴らしかったのは合唱です。バッハの声楽曲はやはり、合唱が命です。
後半では、第24曲のベネディクトゥス。菅きよみのフラウト・トラヴェルソにはいつも感銘を受けますが、ここでも究極とも思える演奏。現代フルートでは絶対味わえない響きを堪能させてくれました。彼女のオブリガートとともにテノールの櫻田亮も美しい響きの絶唱。
第26曲のアニュス・デイもカウンター・テノールのロビン・ブレイズのピュアーな歌唱に感銘を受けました。女声のアルトでは絶対に不可能な清らかさです。女声好きのsaraiも納得の歌唱でした。
女声好きとしては、ソプラノのハンナ・モリソンの美しい声の響きに魅了されました。ソプラノのよいアリアがないのが残念です。
ところで、今回もそれなりに予習しました。
1961年録音。カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団
マリア・シュターダー、ヘルタ・テッパー、エルンスト・ヘフリガー、キート・エンゲン、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
1967年録音。オットー・クレンペラー指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団、BBC合唱団
アグネス・ギーベル、ジャネット・ベイカー、ニコライ・ゲッダ、ヘルマン・プライ、フランツ・クラス
1990年ライヴ録音。サー・ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団&合唱団
フェリシティ・ロット、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター、ハンス・ペーター・ブロホヴィッツ、ウィリアム・シメル、グウィン・ハウエル
1990年ライヴ録音。セルジュ・チェリビダッケ指揮ミュンヘン・フィル、マインツ・ヨハネス・グーテンベルク大学バッハ合唱団
バーバラ・ボニー、ダニラ・ドノーズ、マリア・ルクサンドラ、コルネリア・ヴルコップ、ペーター・シュライヤー、ヤロン・ヴィンドミュラー
1994年ライヴ録音。カルロ・マリア・ジュリーニ指揮バイエルン放送交響楽団&合唱団
ルート・ツィーザク、ロバータ・アレクザンダー、ヤルド・ファン・ネス、キース・ルイス、デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン
1996年録音。トーマス・ヘンゲルブロック指揮フライブルク・バロック・オーケストラ、バルタザール・ノイマン合唱団
2010年ライヴ放送録画@NHKホール。アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、アーノルト・シェーンベルク合唱団
ドロテア・レッシュマン、エリーザベト・フォン・マグヌス、ベルナルダ・フィンク、ミヒャエル・シャーデ、フローリアン・ベッシュ
カール・リヒターは極め付きの演奏。テッパー、フィッシャー=ディースカウの独唱は最高です。オットー・クレンペラーも素晴らしい演奏。圧倒的です。サー・ゲオルク・ショルティも予想以上の演奏。これはフォン・オッターのアニュス・デイが見事。セルジュ・チェリビダッケも美しい、納得の演奏です。カルロ・マリア・ジュリーニはもっと高い評判になってもいい最高の演奏。優しく滋味深い表現に癒されます。バイエルン放送交響楽団&合唱団も素晴らしい演奏です。トーマス・ヘンゲルブロックは評判通り、古楽の響きを活かした現代風の素晴らしい演奏。アーノンクールの来日演奏はsaraiはサントリーホールで聴きました。放送でもアーノルト・シェーンベルク合唱団の素晴らしさが伝わります。レッシュマンも好調です。シャーデ、フィンクはサントリーホールのほうがよかったようです。ホールの違いもあるのかもしれません。全体にサントリーホールでの演奏が最高だったような気がします。
今日のプログラムは以下です。
指揮:鈴木雅明
ソプラノ:ハンナ・モリソン
ソプラノ:レイチェル・ニコルズ
アルト(カウンターテナー):ロビン・ブレイズ
テノール:櫻田亮
バス:ドミニク・ヴェルナー
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
ヴァイオリン(コンサート・ミストレス):若松夏美
フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
J.S.バッハ:ミサ曲 ロ短調 BWV232
1部(ミサ)と2部(ニケーア信経)の間に《休憩》
先日は素晴らしい《マタイ受難曲》も聴きました。今日のミサ曲ロ短調と合わせて、バッハの最高傑作の2作品はいずれも素晴らしい演奏。日本でこんなに手軽に聴けて、本当にいいのって感じです。バッハというより、西洋音楽の最高峰とも称される2曲の究極の演奏が聴けて、幸せです。あとはヨハネ受難曲を聴きたいものですが、とりあえず、9月には、モイツァ・エルトマンが共演する農民カンタータを聴きます。エルトマンに聴きに行くと約束しちゃいましたからね。ともかく、しばらくはBCJ(バッハ・コレギウム・ジャパン)がマイブームになりそうです。
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