今日からいよいよオーケストラ・シリーズ。待ちに待った
ハイティンク指揮ロンドン交響楽団で、今日はまず、期待のマーラーが聴けます。
ペライアのピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲も聴けるという贅沢さ。このシリーズはこの後、ミューザ川崎でのブルックナーの交響曲第7番、NHKホールでのブラームスの交響曲第1番と続いていきます。
今日のマーラーは奇跡のような演奏・・・saraiの人生で最高のマーラーでした。この
ハイティンクのマーラーを聴いて、もう死んでも悔いがないとさえ思いました。そういえば、
ハイティンクのブルックナーの交響曲第8番を聴いて同じ思いに駆られたことを思い出します。そのときの記事は
ここです。マーラーもブルックナーも最高の演奏を聴かせてくれたのはやはり
ハイティンクでした。凄い指揮者です。86歳にして、この音楽、というか、86歳だから、この音楽だと言うべきでしょうか。しかし、
ハイティンクは老境に達して枯れてしまったのでは決してありません。通常の意味での80歳を超えた巨匠ではないと思います。
ハイティンクは常に平常心で今も進化し続けているように感じます。彼は死ぬまで音楽に奉仕する一人の人間として精進していくのでしょう。
ハイティンクのマーラーを生で初めて聴くのですから、予習には万全を期しました。予習したCDは以下です。ハイティンクで聴けるCDはほぼ聴き尽した感があります。
1. 1967.12. コンセルトヘボウ管、エリー・アメリンク(S) (マーラー全集から)
2. 1982.12.(Live) コンセルトヘボウ管、マリア・ユーイング(S) (クリスマス・マチネーのCD/DVD)
3. 1983.10. コンセルトヘボウ管、ロバータ・アレクサンダー(S)
4. 1991.12.(Live) ベルリン・フィル、シルヴィア・マクネマー(S) (DVD)
5. 1992.6. ベルリン・フィル、シルヴィア・マクネマー(S)
6. 2002.10.11.(Live) コンセルトヘボウ管、バルバラ・フリットリ(S)
7. 2005.11.4.(Live) バイエルン放送交響楽団、ユリアーネ・バンゼ(S)
8. 2006.11.(Live) コンセルトヘボウ管、クリスティーネ・シェーファー(S)
9. 2013.8.17.(Live) ボストン交響楽団、カミラ・ティリング(S) (タングルウッド)
この録音の量は異常な多さです。ハイティンクがいかにこのマーラーの交響曲第4番に愛情を注ぎこんできたかが分かります。これ以外には、録音の量で第2番《復活》と第9番が続きます。オーケストラでは、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が中心を占めているのは当然として、ウィーン・フィルとシカゴ交響楽団の録音がないのが残念です。2.の1982年の演奏でハイティンクは演奏スタイルを確立した感じですが、それ以降もじわじわと演奏の細部を磨き上げていっているのが分かります。特に2000年代にはいってからの演奏レベルの高さには驚かされます。独唱ソプラノでは、シルヴィア・マクネマーが際立って、素晴らしいです。この9枚の中でどれかを選ぶとしたら、3.の1883年のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団か、9.の2013年のボストン交響楽団がわずかに頭を出していると思います。しかし、どれも水準以上の演奏です。
いかにCDで予習してみても生で聴くマーラーは想像だにできないものでした。
マーラーの交響曲第4番の第1楽章は静かに普通に始まります。もちろん、ハイティンク得意の第4番ですから、細部まで神経の行き届いたパーフェクトな演奏です。でも、saraiも平常心で聴けるような演奏です。しかし、1音1音を大事にするような音楽が続き、次第に心に沁み渡っていきます。音楽も熱を帯びてきて、第1楽章も半ば近くなると、マーラーの美しい自然を謳うフレーズに心が崩壊していきます。ロンドン交響楽団のアンサンブルも素晴らしく、世界のベスト5のオーケストラを凌駕する響きを聴かせてくれます。ハイティンクが振るとオーケストラもベストパフォーマンスで音楽を奏でてくれます。言葉では言い尽くせない素晴らしい音楽が続きます。
第2楽章も見事な演奏ですが、ここではsaraiも再び平常心を取り戻し、落ち着いて音楽を聴けます。素晴らしい響きは続きます。
そして、第3楽章が始まります。第1音を聴いただけでsaraiの心は崩れ去り、もう、夢の中で音楽を聴いているようです。なんと美しい天上の響きでしょう。普通のテンポでの演奏に思えますが、あまりに音楽的な内容がぎっしりとつまっているためにスローモーションで音楽を聴いている錯覚に陥ります。低弦から始まった音楽が高弦に引き継がれ、管楽器も加わり、高揚していきます。細部を磨き上げられた音楽はどこまでもどこまでも心の高揚感を高め続けます。そして、終盤のクライマックス・・・そこで高まった緊張感は最後のカタルシスに向かっていきます。人生の終わりを思わせるように静かに音楽は閉じます。
すぐに第4楽章が始まります。これは人生のエピローグでもあるかのような音楽。若くて美しいソプラノ歌手アンナ・ルチア・リヒターのちょっと鼻にかかったようなピュアーな歌声を楽しみます。次第に彼女の見事な歌唱に引き込まれていきます。表情豊かに歌う彼女の美声が心に迫ってきます。終盤の歌唱で見事に心を捉えられてしまいました。感動しました。そして、オーケストラの後奏が静かに閉じていきます。ハープの響きが消え去り、ハイティンクの手がそっと降ろされます。何と言う感動でしょう。涙が滲んでいます。
一瞬の静寂に包まれました。この静寂を作り出してくれた聴衆の皆さんに感謝です。素晴らしいマーラーでした。今後、こんな素晴らしいマーラーを聴くことがあるでしょうか。
今日のプログラムは以下です。
指揮:ベルナルト・ハイティンク
ピアノ:マレイ・
ペライア ソプラノ:アンナ・ルチア・リヒター
管弦楽:ロンドン交響楽団
モーツァルト: ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491
《休憩》
マーラー: 交響曲第4番 ト長調
あまりにマーラーが素晴らし過ぎて、前半のモーツァルトのピアノ協奏曲に触れませんでした。
ペライアのピアノは最高でした。期待通りの美しい響きでモーツァルトの音楽を味わわせてくれました。普通のコンサートであれば、これがメインでもおかしくないような素晴らしい演奏でした。モーツァルトのピアノはこういう粒立ちのよいタッチで聴くと最高ですね。終始、うっとりと
ペライアのピアノの響きに心を奪われていました。特に音階を切れ味鋭く、かつ、美しい響きで弾くところの素晴らしさと言ったら、これ以上の演奏はないほどでした。モーツァルトのピアノ協奏曲は前回聴いたピリスも素晴らしかったし、
ペライアも最高。ピリスと
ペライアのモーツァルトは何ものにも代えがたい素晴らしさであることを再認識しました。
まだ、ハイティンクのブルックナーとブラームスが聴けると思うと大変幸せです。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽