前半はブラームスとバルトークのソナタ。特に期待していたのはバルトークです。まず、ブラームスはなかなかロマンティックで繊細な演奏なのですが、ホールにヴァイオリンが響き渡らない感じで少々インプレッシブさが不足する感じです。バルトークもソフィスティケイトされた演奏なのですが、野性味に欠けるというか、変な言い方かもしれませんが、前衛さが感じられないという思いに駆られます。若手の演奏家なのですから、もっとバリバリと弾いてもらいたいと思います。もっとも、こういう繊細な演奏はかぶりつきで聴かないと正当な評価は難しいかもしれません。微妙なところです。
前半は若干欲求不満気味でしたが、後半は硬さがとれたよい演奏です。最初のバルトークのルーマニア民俗舞曲はストレートな表現でばりばりと弾きこなしていきます。こうでなくっちゃね。エンターテインメント性の高い演奏ではありますが、それはそれで楽しめます。次のクライスラーは《愛の悲しみ》以外は耳馴染みのない曲なので、もうひとつピンときません。素晴らしかったのはファリャのスペイン舞曲。すかっとする乗りのよい演奏。胸のすくようなヴァイオリンの響きで圧巻の演奏。これくらい思いっきり、切れ込んだ演奏をしてくれれば、何を言うこともありません。
後半のプログラムがまるでアンコール曲のような小曲で構成されていたので、一体、アンコールはどうするのかと思っていたら、ちゃんとアンコール曲は用意されていました。1曲目はそれこそ前衛的な曲ですが、素晴らしい気迫に満ちた演奏です。これはルトスワフスキのスビト。ルトスワフスキが人生の最後に完成させた音楽だということです。最後まで刺激的な音楽を描き続けたんですね。いいものを聴かせてもらいました。アンコールの最後はフォーレの《夢の後に》。うっとりするような美しい演奏。心に沁みるようなしみじみとした表現です。リサイタルを閉じるのにふさわしい音楽です。この日、一番心に響いた素晴らしい演奏でした。最後がよければ、満足です。
今日のプログラムは以下です。
ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン
ピアノ:イタマール・ゴラン
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100
バルトーク:ヴァイオリン・ソナタ第2番 BB.85 / Sz.76
《休憩》
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 BB.68 / Sz.56
クライスラー:ウィーン小行進曲
クライスラー:愛の悲しみ
クライスラー:シンコペーション
ファリャ/クライスラー(編):歌劇「はかなき人生」第2幕 スペイン舞曲第1番
ファリャ:7つのスペイン民謡より(第1曲~第6曲)
《アンコール》
ルトスワフスキ:スビト
フォーレ:夢の後に
今日はNHKのTV収録がありました。放送予定は決まっていないそうですが、きっとBSのクラシック倶楽部での放映でしょう。とすれば、55分枠でのリサイタルを抜粋した放映になるでしょうが、絶対にアンコール曲2曲は外さないでね、NHK殿。
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