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新時代の幕開けか・・・ロト&東京都交響楽団@サントリーホール 2016.4.7

今日は都響B定期(サントリーホール定期)の新シーズンの幕開け。と共にポスト・ピリオド時代の旗手フランソワ=グザヴィエ・ロトの指揮した都響の清新な演奏は新時代の幕開けを予感させるものでもありました。昨年12月のミンコフスキ指揮のコンサートでも都響は新しい響きを聴かせてくれていましたから、今日のような演奏は本当は驚くことはないのかもしれません。しかし、今日の演奏は色んなこと、そして、今後の可能性を考えさせてくれたんです。ベースにあるのはピリオド奏法の熟成です。それはノントナール、無調音楽の熟成を思い起こさせます。現代音楽では、ノントナール音楽は金科玉条のように守り通すものではなく、音楽表現のひとつとして、トナール音楽と使い分ける、あるいは組み合わせるようになっています(saraiの勝手な妄想かもしれませんが)。同様にピリオド奏法も音楽表現のひとつとして、普通の奏法と使い分け、組み合わせるものとなってきたようです。これがポスト・ピリオド時代です。今日のロトの音楽創造は実に変幻自在。彼は自己の音楽表現を実現させるために、驚くほどに様々な奏法を使いこなしていきます。それも高いレベルでの実現です。

まず、最初はウェーベルンが編曲したシューベルトのドイツ舞曲。予習したブーレーズのCDでは、ウェーベルンにしては平凡とも思える編曲だなと感じました。シューベルトのオリジナルのピアノ独奏版をアンドラーシュ・シフの演奏で聴きましたが、やっぱり、オリジナルがよっぽどいいと感じました。ところが今日のロト&都響を聴いて、印象は一変。シューベルトの音楽には違いありませんが、表現はウェーベルン。音楽の二重性を綱渡りのような巧みさで実現しています。ロトはあのブーレーズを超える才能なのかと驚嘆します。ポスト・ピリオド時代の音楽表現はその音楽が創られた時代の空気感を再生させることなのかもしれません。そういう意味では、ロトならではの音楽がこのウェーベルン編曲のシューベルトなのかもしれません。1930年代のウェーベルンが100年前のウィーンの先輩作曲家の音楽を再創造した頃の時代の空気感を見事に描き出したということです。まあ、2度と聴けないような素晴らしい音楽でした。

次はR.シュトラウスのメタモルフォーゼン。これはR.シュトラウスの晩年、すなわち、1945年頃の時代を直球勝負で描き出した演奏。通常の意味でのピリオド奏法ではなく、ある意味、普通の音楽表現です。しかし、表層的な意味で言うピリオド奏法ではないにしても、その時代を表現するという意味では真のピリオド奏法と言えるだろうし、室内楽的な明瞭さの演奏で本質にアプローチするところはまさにピリオド奏法の真骨頂といえるかもしれません。まあ、そういうことは抜きにしても、心にしみじみと語りかけてくる素晴らしい演奏だったんです。都響を長く聴いてきましたが、ついにここまで来たかという感慨にひたりました。都響のメンバーもこういう演奏を目指してやってきたんでしょう。一つの到達点に達しましたね。それにしてもR.シュトラウスの晩年の音楽は素晴らしいです。管弦楽曲では、この《メタモルフォーゼン》。声楽曲では《4つの最後の歌》。オペラでは、《カプリッチョ》。いずれも内面の深いところにしみじみとしたものを残してくれる傑作です。つらい時代の中、高齢で創造した珠玉の作品群です。芸術にすべてを捧げ尽くした天才が我々に残してくれた遺産です。そういうものをプログラムの中心にすえたロトの意図は明確でしょう。彼はこのR.シュトラウスの音楽を愛しており、それを我々聴衆と共有したかったんでしょう。十分にそういう気持ちが伝わってくる名演でした。

休憩後、ベートーヴェンの交響曲第3番《英雄》です。まあ、これはロトのやりたい放題の演奏。第1楽章はいかにもピリオド奏法の典型のような演奏スタイル。早めのテンポで強いアクセント。きびきびとした切れのいい演奏。これは挨拶代わりのようなものでしょう。軽めの表現に違和感は覚えますが、シューベルトのドイツ舞曲と同様にふわっとした飛翔感のある演奏には好感も感じます。重量感のある《英雄》を期待していると肩透かしに合います。ところが第2楽章にはいると一転します。ゆったりしたテンポでオーケストラの繊細な響きでしみじみとした演奏を繰り広げます。この楽章はある意味、メタモルフォーゼンの表現と連続性を持たせて、《英雄》の音楽的中心に据えたようです。第1楽章の軽み(かろみ)もそのための布石だったようです。ロマンティックな表現にも思えるほどの熱演に引き込まれてしまいました。それでもピリオド奏法を裏切らないのは、響きが濁らずにピュアーなことです。都響の素晴らしさもありますが、この純粋な響きの演奏は驚異的とも思えます。第3楽章はスケルツォですから、早めのテンポに戻りますが、他の指揮者と比べて、特に早いテンポには思えません。それほどピリオドっぽくは感じません。響きの純粋さは相変わらずです。この短い楽章が終わり、それなりに間を置いて、第4楽章に入ります。これはピリオドとかそういうことではなく、独自性にあふれる素晴らしい演奏です。いきいきと活力に満ちて、響きの純粋さに耳を奪われます。ここぞというところで踊るような動作でオーケストラを鼓舞すると、これまで聴いたことのないような強いアクセントで新鮮な響きが生まれます。ロトは己の生み出したい音楽表現がきっちりと頭の中にできていて、それを体の動作でオーケストラに伝えて、その通りの音楽が実現されるんです。これって、できそうでなかなかできないことです。ロトの音楽表現にすっかりと引き込まれてしまいました。滅多にできない音楽体験になりました。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト
  管弦楽:東京都交響楽団

  シューベルト(ウェーベルン編曲):ドイツ舞曲 D820
  R.シュトラウス:メタモルフォーゼン~23の独奏弦楽器のための習作

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 op.55《英雄》

インバルは今後も都響の音楽の軸ですが、今日のロト、そして、ミンコフスキがこれからの都響の将来を左右しそうな予感がします。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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