今日のプログラムは以下です。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 Op.78《雨の歌》
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
ピアノ:ラルス・フォークト
シューマン:詩人の恋 Op.48
テノール:ユリアン・プレガルディエン
ピアノ:ラルス・フォークト
《休憩》
ブラームス:ピアノ四重奏曲第2番 イ長調 Op.26
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
ヴィオラ:レイチェル・ロバーツ
チェロ:ターニャ・テツラフ
ピアノ:ラルス・フォークト
最初はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》です。これは期待通りのとてもよい演奏でした。特に第1楽章の第1主題のひそやかでとてもロマンティックなヴァイオリンの演奏にすっかり魅了されました。繰り返し演奏されるたびに胸にジーンと響いてきます。クリスティアン・テツラフのあえて抑制した響きと表現にうっとりします。決して美音ではないのですが、やはり、音楽は最終的に心を打つ表現力に尽きます。彼の弱音での表現力の素晴らしさは特筆すべきものです。もっとも強音ではもっと美しい響きが欲しいものですが、二兎を追うことは困難なことかもしれません。彼はかってストラディヴァリウスを弾いていたそうですが、現在、ドイツの現代楽器を選択したとのことで、それが彼の響きと表現に関連しているのではないでしょうか。saraiは今回がクリスティアン・テツラフの初聴きなので、過去の演奏と比較することはできません。小さな響きに耳をそばだてて聴き入ってしまいました。ラルス・フォークトのピアノもクリスティアン・テツラフのヴァイオリンにもっと寄り添って、繊細な表現を志向してもらいたかったところです。トータルにはラルス・フォークトのピアノも決して悪い演奏ではなかったんですが・・・。
次のシューマンの《詩人の恋》は最高の演奏とは言えませんが、何と言っても作品が素晴らしいことで、トータルにはとても満足して聴けました。歌曲でこれほどのピアノパートを作曲したシューマンのありあまるほどの才能には改めて驚愕の思いです。ラルス・フォークトのピアノも時として、鍵盤を強く叩き過ぎることを除くと、とても素晴らしい演奏でした。シューマンのピアノ独奏曲が聴きたくなったほどの出来のよい演奏です。宝石のように散りばめられた美しいタッチのピアノの響きに強く惹かれました。テノールのユリアン・プレガルディエンですが、実はsaraiがチケットを買った時点では、彼の父親のクリストフ・プレガルディエンと誤認していて、本当に聴きたかったのは父親のほうだったんです。実際、これまで、トッパンホールには父親のクリストフ・プレガルディエンが何度も登場していたし、そもそも彼の息子もテノール歌手だなんて知りませんでしたからね。ともあれ、ユリアン・プレガルディエンは決して美声ではありませんが、その真摯な表現はこの《詩人の恋》に向いています。しかし、まだ、完成度という点では、今ひとつだったでしょうか。それでも抒情的な曲(作品全体が抒情的ですが、その中でもという意味で)での表現には心惹かれました。特に1曲あげれば、第12曲の《まばゆく明るい夏の朝に》は素晴らしい歌唱でした。全体では最初のうちは固い印象でしたが、徐々に音楽に深く入り込んだ歌唱になり、第4曲あたりからはなかなかの歌唱でした。いずれにせよ、シューマンの傑作を気持ちよく聴かせてくれましたから、お二人の演奏には満足です。
休憩後はブラームスのピアノ四重奏曲第2番。第1楽章はシューマンを思わせる祝祭的な楽曲ですが、4人の演奏者がそれをバランスよく聴かせてくれました。ここでもクリスティアン・テツラフのヴァイオリンの弱音表現の素晴らしさが光ります。第2楽章が美しく抒情的に演奏されて、最後の第4楽章は再び、祝祭的なムードで結ばれます。フィナーレの盛り上がりが一番、印象的でした。何せ、とても長大な作品で、ブラームスを満喫させてもらいました。文句のない演奏でした。
次は第6回目のコンサート、すなわち、最終日のコンサートを聴きます。シューベルトの傑作、弦楽五重奏曲が楽しみです。
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