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上原彩子、究極のピアニズム ラフマニノフのプレリュード@東京オペラシティ コンサートホール 2016.6.3

まあ、言うべき言葉がありません。実際に何を書いたらいいのか、途方にくれます。ただ、上原彩子がピアノを弾き、ひたすら、その響きに身を委ねていた自分がいた・・・ただ、それだけのこと。音楽の純粋さに向き合ってしまうと音楽自身がすべてであって、それを言葉に言い換えることなど何の意味があるでしょう。それにしてもこのところの上原彩子の音楽的充実度はどれほどのものでしょう。その素晴らしさがsaraiから言葉を奪ってしまいます。
上原彩子の演奏するラフマニノフは恐ろしいほど豊潤な響きの音楽に到達してきました。前回、彼女の弾くラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番を聴いて、やるせなくて、狂おしいラフマニノフの魂の叫びを感じましたが、今日はラフマニノフではあっても、そういうロシア的な魂よりも純粋に高められた音楽の響き、ピアノの音自身といってもいいかもしれませんが、無垢なピアノの音響が聴き取れました。これは何でしょう。ラフマニノフを聴くという点においては不満の残る演奏だったかもかもしれませんが、そういうことではなくて、作曲家や演奏家の個性を超えた音楽のミューズ的な本質に迫る演奏であったようにも思えます。芸術はその道具たる音楽や絵画を通して、神の領域に至る試みであるとすれば、そういう意味では、芸術が神に近づいた一夜を上原彩子は作り出してくれたとも思えます。

面倒なことを書きましたが、実はラフマニノフは上記のようなことしか書けないほど、豊潤なピアノの響きの奔流であったということです。一方、スクリャービンはロシア的な個性の音楽に仕立てあがっていました。よく、初期のスクリャービンはショパンの影響うんぬんを言われますが、上原彩子の弾くスクリャービンはラフマニノフ同様、ロシア的な精神に満ちた音楽であることを実感させてくれました。アンコールの最後で弾いたスクリャービンの練習曲は上原彩子とスクリャービンの魂が同化したかと思えるような凄絶な演奏でした。この音楽で感動しない人はいないでしょう。saraiはこの短い音楽で心を揺さぶられて、涙が滲みました。

今日のプログラムは以下です。

  ラフマニノフ:前奏曲「鐘」幻想的小品集 Op.3より第2番
  ラフマニノフ:10の前奏曲 Op.23より 第4番、第5番、第6番、第7番
  スクリャービン:24の前奏曲 Op.11

   《休憩》

  ラフマニノフ:13の前奏曲 Op.32

   《アンコール》

    ラフマニノフ:楽興の時第5番Op.16-5
    スクリャービン:練習曲嬰ニ短調「悲愴(Pathetic)」Op.8-12

予習したCDは以下です。

 ラフマニノフ  リヒテルの1960年10月28日のカーネギーホールのライブ(リヒテル ザ・コンプリート・アルバム・コレクションより)
 スクリャービン ヴェルデニコフ(ロシア・ピアニズム名盤選より)

リヒテルのライブCDはモノラルですが、音質は鑑賞には差し支えないレベル。演奏は圧倒的です。今日の上原彩子の演奏とは異なり、ラフマニノフの魂と同調するような凄まじいものです。前奏曲が抜粋で半分ほどの曲しか聞けないが残念ですが、こういうCDを聴くとほかのCDが聴けなくなります。
ヴェルデニコフのスクリャービンは静かで美しい演奏。ある意味、上原彩子の今日の演奏とは対極にあるような演奏です。



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テーマ : クラシック
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

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ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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