fc2ブログ
 
  

精妙なボストリッジの歌唱・・・大野和士&東京都交響楽団@サントリーホール 2016.6.9

今日は実に多彩なプログラム。ブリテン、ドビュッシー、スクリャービンです。冒頭のブリテンの「4つの海の間奏曲」以外は初聴きの曲です。CDでも多分、聴いたことがありません。一応、CDで予習はしましたが、なかなか難解な曲ばかりです。

まず、最初のブリテンの「4つの海の間奏曲」ですが、これは都響の美しいアンサンブルが光る演奏。冒頭から。ヴァイオリン群のユニゾンの響きの美しさに魅了されます。ブリテンの傑作オペラのドラマティックな内容を彷彿とさせる演奏でした。

次もブリテン。テノール独唱と弦楽合奏による《イリュミナシオン》です。これは参りました。精妙なボストリッジの歌唱が素晴らしくて、心に迫るのですが、浅学なsaraiにとって、ランボーの詩の内容が難解で意味が理解できません。フランス語はもちろん分かりませんが、その日本語訳も意味不明なんです。同性愛者だったブリテンの同性の恋人への心情もこめられているそうですが、これもあまり理解できません。決して耽溺的な音楽ではありませんが、魂の叫びらしきものは感じられます。浅いレベルで音楽は楽しめましたが、文化的に深いレベルでの同調はできなかったというのが正直なところです。芸術文化への理解がそれなりにできているつもりでしたが、あまりに自分のレベルの低さに落ち込みました。まずはフランス詩を少しは勉強しないと話になりませんね。自分の弱点を知りました。残念です。

休憩後、ドビュッシーの《夜想曲》です。いかにもドビュッシーらしい音楽が流れます。指揮者の大野和士によると、最初の曲の「雲」はセーヌ川の上に浮かぶ雲が描かれており、ドミソの和音のドが欠如しているために無重力的な浮遊感があるのだそうで、もし、ドの音が和音の底部を支える音として付きまとえば、雲はたちまちにして、セーヌ川に落ち込むそうな・・・。この音楽家的な発想は彼が子供のときから感じていたというのですから、やはり、音楽家は我々、素人とは次元を異にしていることが分かります。saraiのような素人が聴けば、ドビュッシーの東洋音階に基づく不安定感のある和音の響きで、とりとめのない柔らかさが雲を表現しているようだとしか感じられません。茫洋としたドビュッシーの音楽をそういうことを思いながら聴いていると、どうやら退屈せずに済みました。なお、その大野和士のメッセージを今月の解説から見つけ出したのは配偶者でした。彼女も見るべきところを見ていますね。まあ、大野和士と配偶者のお陰でドビュッシーの音楽をいつもと違う観点で楽しめました。

最後はスクリャービンの《法悦の詩》です。今のところ、スクリャービンは初期の頃の美しい作品のほうが好みです。神秘主義に走った後の作品はまだ何とも感想がありません。まあ、都響のきらめくような音響の洪水は凄いですけどね。おいおい、スクリャービンも聴き込んでいきましょう。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:大野和士
  テノール:イアン・ボストリッジ
  管弦楽:東京都交響楽団

  ブリテン:歌劇『ピーター・グライムズ』より「4つの海の間奏曲」Op.33a
  ブリテン:イリュミナシオン Op.18

   《休憩》

  ドビュッシー:《夜想曲》より「雲」「祭」
  スクリャービン:法悦の詩 Op.54 (交響曲第4番)

今回も大野和士のプログラムは意欲的ではありました。また、何と言っても、ボストリッジの多彩な表現の歌唱が聴けたのも収穫でした。そのうち、ドイツ・リートも聴かせてもらいましょう。


↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR