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昔も今もさすがのバッハ!ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル@横浜みなとみらいホール 2016.6.12

saraiの最も愛する音楽家ヒラリー・ハーンですが、今回ばかりは不安いっぱいで、購入したチケットもこのリサイタルのみ。いつもは聴ける公演はすべて足を運んでいましたが、今回はこれ一本に絞りました。それと言うのも前回の来日公演でのブラームスのヴァイオリン協奏曲がとても期待外れだったからです。そのときの記事はここここ。あまり、思い出したくないコンサートです。

不安感もあり、大きな期待を抱かずに聴き始めます。まずはモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ 第27番です。これはモーツァルトとしてもシンプルな音楽です。ヒラリーのヴァイオリンは派手過ぎず、抑え過ぎずという中庸な表現で今まで聴いた彼女のモーツァルトの中ではよい出来でした。ただ、彼女のヴァイオリンの響きがもう一つに感じます。あの絶頂期の素晴らしい響きとは一線を画しているように感じます。心配ですね。

次はバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番です。これは素晴らしいです。第2楽章の長大なフーガは聴き応え十分です。ヴァイオリンの響きがどうのこうのということはもうどうでもいいです。シャコンヌと同じくらい素晴らしい音楽です。終始冷静で心のこもった音楽は終盤熱く高揚します。圧巻の素晴らしさです。この楽章の終了後、一部の聴衆から拍手があがりますが、まあ許しましょう。ここで一息ついて、第3楽章に進みます。緩やかなラルゴが静謐に演奏されます。ヒラリーの人生にも色んなことがあったのでしょう。哀しみを感じるような深みのある音楽です。心にしみじみと響いてきます。そして、本当に素晴らしかったのは第4楽章のアレグロ・アッサイです。これは究極のバッハ。パーフェクトなバッハです。シンプルなパッセージさえも何かしらの意味を持っているように聴こえてきます。完璧なテクニックでヴァイオリンの響きも冴え渡ります。終盤の熱い盛り上がりには感銘を受けました。彼女が20歳にもならない頃に録音したこの曲のCDはsaraiの愛聴盤ですが、あのころはひたすら何も考えずにバッハの音楽に奉仕していた演奏でした。それが素晴らしい演奏になっていたのはバッハの音楽の素晴らしさと彼女の若さの勢いが見事に調和したからだったんでしょう。今日の演奏はあの頃の勢いはないかもしれませんが、深い人生の哀感が音楽を高めています。

ヒラリーは現在、音楽家としての岐路に立っているような感じがします。ここを乗り越えて、素晴らしい音楽家に大成することを祈らずにはいられません。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
  ピアノ:コリー・スマイス

  モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第27番 ト長調 K.379
  J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005

   《休憩》

  アントン・ガルシア・アブリル:6つのパルティータより
                 第2曲『無限の広がり』、第3曲『愛』
  アーロン・コープランド:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
  ティナ・デヴィッドソン: 地上の青い曲線(27のアンコールピースより)

   《アンコール》

  佐藤聰明:微風Bifu
  マーク・アントニー・ターネジ:ヒラリーのホーダウンHilary's Hoedown
  マックス・リヒター:慰撫Mercy

後半とアンコールはいずれも現代あるいはそれに近い時代の作品でした。素晴らしいヴァイオリンではありましたが、これが彼女の目指す方向なのでしょうか。


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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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