日本期待の若手指揮者である山田和樹は実は初聴きです。彼のマーラー・ツィクルスにも食指が動いたのですが、これ以上、音楽スケジュールがたて込むと大変なので自重しました。今日聴いた感想ですが、その素直な音楽性は好ましく思えました。妙な思い入れのない、よい意味で普通の音楽作りです。それにとても丁寧で手抜きのない音楽が流れます。それが如実に現れたのが最初に演奏されたベートーヴェンの『エグモント』序曲です。軽く演奏してもよかったのでしょうが、実に誠実に作り込まれた音楽に聴き入ってしまいました。きびきびと若さにあふれた音楽に爽やかささえ感じました。もちろん、きっちりとアインザッツも決め、重厚な音楽でもありました。でも一番の良さはオーソドックスな音楽表現であったことです。ベートーヴェンをベートーヴェンらしくということです。これは最後に演奏されたベートーヴェンの交響曲第7番にもそのままあてはまります。どこがどうという感想は控えますが、バーミンガム市交響楽団のしっかりしたアンサンブルを引き出して、正統的なベートーヴェンを聴かせてくれました。モダン過ぎず、重過ぎもせず、現代に演奏されるべきベートーヴェンという感じの演奏で、ワーグナーが絶賛して評した《舞踏の聖化(Apotheose des Tanzes)》を十分に表現し尽くした音楽作りに聴き惚れました。山田和樹は今後が楽しみである指揮者であることを実感しました。どういう方向に進んでいくのか注視していきたいですね。
今日のプログラムは以下です。
指揮:山田和樹
ピアノ:河村尚子
管弦楽:バーミンガム市交響楽団
ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』序曲
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番ニ短調 Op.30
《アンコール》 ラフマニノフ:エチュード Op.33-8
《休憩》
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 Op.92
《アンコール》
ウォルトン:「ヘンリー5世」より「彼女の唇に触れて別れなん」
ところで今日の河村尚子の弾いたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番はとても素晴らしかったのですが、未だにsaraiの聴いたベストのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は上原彩子の演奏です。そのときの記事はここです。もう4年前のことです。今の上原彩子ならば、もっと凄い演奏になりそうです。あー、聴きたい!!
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