オーケストラ編曲版では、ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の素晴らしい演奏がありますが、最近聴いたマルケヴィッチ指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団も素晴らしい演奏でした。
しかし、噂では、あのチェリビダッケの凄い演奏があるということで、これまで気になって、仕方がありませんでした。問題は非正規盤で入手性が悪いということです。
1986年9月23日ベルリン・ライヴ 米AUDIOR AUD-7009~10
オーケストラはチェリビダッケの鍛え上げたミュンヘン・フィルです。この20日後にチェリダッケがミュンヘン・フィルを率いて来日したときの記録も録音されています。1986年10月14日人見記念講堂ライヴです。ベルリン・ライブとはもちろん、別物です。こちらはFM東京の音源をALTUSが正規にリリースしています。
で、遂にそのベルリン・ライブの幻のCDを入手して、今日、聴いたんです。
絶句・・・何とも凄い演奏でした。噂通りです。まったく別次元とも思える演奏で、CDとは言え、自宅のオーディオルームで大変な緊張感を強いられて、実演を聴く感覚になりました。
冒頭のプロムナードでトランペットが厳かに吹奏するところから、この演奏の魔力に魅せられます。まるで秘密の儀式に参加しているかのような雰囲気です。それにその音の背後にチェリビダッケの物凄い《気》を感じます。だからこそ、まるでsarai自身がこのコンサートを生で聴いているような錯覚に襲われるのかも知れません。この後もsaraiはチェリビダッケの呪縛から逃れることはできません。演奏は後半になって、ますます物凄いことになっていきます。《カタコンベ》は通常の演奏では少し退屈することもありますが、この演奏では驚くほどの緊張感の高まりに襲われます。ともかく、ブルックナーで鍛え上げられた金管のセクションが凄い響きを聴かせてくれます。《ババ・ヤガー》の強奏と弱奏の対比的な演奏のあたりの高揚感で強い感動を味わいます。このエンターテインメントの代表格のような音楽で感動したのは初めてのことです。そして、終曲の《キエフの大門》に突入していきます。もちろん、突入といってもチェリビダッケの指揮ではいつものようにスローテンポですが、ゆったり感はなく、強烈な高揚感に満ちています。ここからは言葉では表現できない世界にはいり、saraiはしびれるような感覚で音楽と一体化するのみです。何度も感動の大波に襲われながら、フィナーレにはいっていきます。と、チェリビダッケの声と思われる一喝とともに頂点に上りつめます。歓声と拍手が巻き起こりますが、いささかタイミングが早過ぎます。まあ、ベルリンの聴衆の気持ちは分かりますが、もう少し、感動の空白が欲しいところでした。
凄い音楽を聴きました。これまでCDを聴いていて、実演と同様に感動したのは、チェリビダッケとミュンヘン・フィルが演奏した非正規盤のリスボン・ライブのブルックナーの交響曲第8番だけです。いやはや、チェリビダッケの凄さをまた体験してしまいました。彼の実演を聴き逃がしてしまったsaraiですが、CDで追体験できて幸せです。
なお、チェリビダッケのリスボン・ライブについて綴った記事はここです。
今更ながら、EMIの正規盤(1993年録音)と人見記念講堂ライヴも聴いてみましょうか・・・
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