なかでも、今年は何故か、縁がある《コジ・ファン・トゥッテ》は今、モーツァルトのオペラの中で一番のお気に入りです。聴けば聴くほど、モーツァルトの天才ぶりが随所にうかがわれます。恋心を歌うアリアの数々、活き活きとした重唱の数々、出番は少なくても勢いのある合唱、どれをとっても天才ならではの深さを感じさせられます。ストーリー自体は無理があっても、モーツァルトの天才的な曲作りによって、単なる恋愛ゲームが感動的なラブストーリーに昇華していく様はまるで魔法のように思えます。特に第2幕の充実した音楽の素晴らしさは例えようもありません。
今日のオペラはコンサート形式ではありましたが、舞台セットがないことと舞台衣装をまとっていないことを除けば、舞台の上を自在に動き回りながらの演技があったので、さながらオペラを見ているような感じでした。トーマス・アレンを除いて、それほどのスター歌手が出演していたわけではありませんが、音楽的にもとても充実した内容でした。本当はこの公演はフィオルディリージ役で出演予定だったミア・パーション目当てでチケットを購入したので、公演直前に彼女が出演キャンセルのニュースを聞いて、とてもがっかりしていたんです。でも、オペラ自体は素晴らしい出来だったので、満足です。もちろん、ミア・パーションが歌ってくれたら、今年のザルツブルグ音楽祭と同じくらい感激したかもしれませんけどね。そうそう、今年はザルツブルグ音楽祭で素晴らしい《コジ・ファン・トゥッテ》を聴きました。特にフィオルディリージ役のユリア・クライターの歌唱が素晴らしかったんです。これで今日、ミア・パーションのフィオルディリージを聴けば、saraiがひそかに現在の最高のフィオルディリージ歌いと思っている2人(ミア・パーションとユリア・クライター)を聴くことができたのに、とっても残念です。ともあれ、今日のキャスト6人は皆素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。ミア・パーションの代役を務めたヴィクトリヤ・カミンスカイテは予想外の素晴らしい歌唱。ミア・パーションほどでないにしても、まったく、満足の歌唱でした。グリエルモ役のマルクス・ウェルバの張りのあるバリトンの美声も聴きものでした。トーマス・アレンはベテランらしく、舞台を引き締めていました。そう言えば、彼は今年のザルツブルグ音楽祭のアデスの新作オペラ《皆殺しの天使》にも出演していましたが、女声陣のあまりの素晴らしさの陰であまり存在感を発揮していませんでした。今日はたっぷりと彼の渋い歌唱を聴かせてもらいました。
今日の本当の主役は指揮のジョナサン・ノットではなかったでしょうか。モーツァルトのオペラを実に楽しそうに指揮している姿は絵になりました。これから、ダ・ポンテ3部作をコンサート形式で聴かせてくれるようですから、楽しみです。特にフィガロは聴き逃がせませんね。今度こそ、ミア・パーションをスザンナ役で聴きたいものです。きっとチャーミングでしょう。
ということで、7月のザルツブルグ音楽祭と今日の公演で《コジ・ファン・トゥッテ》を聴いたsaraiはモーツァルトのオペラの最高傑作は《コジ・ファン・トゥッテ》かなと思っています。でも、フィガロを聴けば、また、フィガロが最高傑作と思うんだろうなあ・・・。ドン・ジョヴァンニも魔笛も捨て難いオペラだしね。モーツァルトはやっぱり、オペラとピアノ協奏曲が最高に素晴らしいという思いを新たにしました。
キャストは以下です。
指揮&ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット
舞台監修:トーマス・アレン
フィオルディリージ:ヴィクトリヤ・カミンスカイテ
ドラベッラ:マイテ・ボーモン
デスピーナ:ヴァレンティナ・ファルカス
フェルランド:アレック・シュレイダー
グリエルモ:マルクス・ウェルバ
ドン・アルフォンソ:トーマス・アレン
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団
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