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最後のパリ散策:《貴婦人と一角獣》のタペストリーはラブストーリー?

2015年7月9日木曜日@パリ/3回目

クリュニー美術館Musée de Clunyの1階の展示室で中世の美術品を見ているところです。1階の一番奥にある展示室に入ります。この展示室はフリギダリウムFrigidariumと呼ばれています。フリギダリウムというのは、古代ローマの公衆浴場で熱い風呂を楽しんだ後に入る大きな冷水のプールがある部屋のことです。今風に言えば、プールみたいなものですね。この部屋だけは15mほどもある高い天井になっています。ハイサイドの窓から明るい光が降り注いています。右側が北の壁、左側が西の壁です。

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こちらは南の壁です。

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こちらは東の壁です。下の窓の向こうには、さっき見たノートルダム展示室が見えています。

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西の壁の壁龕に入って、東の壁を眺めます。聖人の彫像の後ろ姿も見えています。

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これが部屋の東半分ほどの光景です。とっても大きなプールだったようです。

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1階最後の展示室には、中世の道具が展示されています。この美しい細工ものは法杖でしょうか。

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15世紀の見事なタペストリーもあります。《聖ペテロの解放》を主題としたものです。

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さて、次は2階の展示室に行きましょう。いよいよ、《貴婦人と一角獣》のタペストリーと対面できます。

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2階に上がると、早速、《貴婦人と一角獣》のタペストリーが飾ってある部屋に直行。やはり、《貴婦人と一角獣》の6枚のタペストリーがひときわ異彩を放っています。配偶者は各タペストリーに登場する一角獣の可愛さを賛美しています。中世に宗教的なテーマではなく、哲学的とも思える命題による一角獣の物語が描かれたのに驚かされます(宗教的なテーマだという説もあります)。一角獣はなかなか可愛いく表現されています。どれもとっても美しく繊細で、織物とは思えません。

この《貴婦人と一角獣》のタペストリーは1841年、歴史記念物監督官で小説家でもあったプロスペル・メリメがブーサック城(Château de Boussac)で発見しました。タペストリーは保存状態が悪く傷んでいましたが、小説家ジョルジュ・サンドが『ジャンヌ』(1844年)の作中でこのタペストリーを賛美したことで世の関心を集めることとなりました。1882年、このタペストリーはクリュニー美術館に移され、展示されています。

6枚のタペストリーは人間の六つの感覚を示したものと言われています。「味覚」、「聴覚」、「視覚」、「嗅覚」、「触覚」、そして「我が唯一つの望み」(A mon seul désir)という五感を統合するココロです。しかし、実際のところ、本当の主題は何なのかはいまだ不明で、色んな説があります。saraiは一角獣は純真な恋する男で、若い貴婦人に一途な愛を捧げているという説に一票を投じたいと思います。そういう観点で一枚ずつ、タペストリーを見ていきましょう。

味覚(Le goût)です。若い貴婦人は侍女から白い粒の甘いお菓子を受け取っています。ですから、味覚と解釈されました。背景は千花模様(ミル・フルール)が赤い色彩で描かれています。若い貴婦人の手には小鳥がとまり、その貴婦人に向かって、一角獣が前足を上げて、求愛のポーズをとっています。気性の激しい一角獣も愛する女性に対しては、ただただ、従順に愛を捧げるだけの存在です。

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聴覚(L'ouïe)です。若い貴婦人はトルコじゅうたんを掛けた机の上のポジティブオルガン(小型のパイプオルガン)を弾いています。侍女は机の反対側に立ってオルガンのふいごを動かしています。ですから、聴覚と解釈されました。一角獣はおとなしく座わりこんで、若い貴婦人の演奏する音楽に耳を傾けながら、じっと女性に愛の視線を送っています。愛する女性のすることには何にでも賛美の心を持つのが愛というものでしょう。

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視覚(La vue)です。若い貴婦人は右手に手鏡を持ち、一角獣が膝に前足を乗せることを許しています。一角獣は貴婦人の手鏡に映る自身の姿を見ている素振りをしています。ですから、視覚と解釈されました。一角獣は愛する女性の体に触れる喜びで実は視覚などはそっちのけの状態なんです。貴婦人は優しい眼差しを一角獣に向けています。

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嗅覚(L'odorat)です。若い貴婦人は立ち上がって、花輪を作っています。侍女は花が入った籠を持っています。猿は貴婦人の後ろで花の匂いをかいでいます。ですから、嗅覚と解釈されました。一角獣は旗を捧げ持って、前足を上げて、貴婦人に恭順の姿勢です。もう愛は盲目の状態です。

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触覚(Le toucher)です。若い貴婦人は立って自ら右手で旗を掲げて、左手は一角獣の角に触れています。ですから、触覚と解釈されました。愛する女性から角を持たれた一角獣はもう有頂天です。この構図は性的なものを連想してしまいますね。

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我が唯一つの望みに(À mon seul désir)です。絵の中央にある深い青色のテントの頂に金色で「我が唯一つの望み」(A Mon Seul Désir)と書かれています。このタペストリーだけは絵の構図で五感と解釈されるのではなく、明確に意味が記されています。しかし、その言葉は一見、謎のようでもあります。この「我が唯一つの望み」とは、一体、誰の望みなんでしょう。それは若い貴婦人と恋する一角獣の双方の望みだと思います。「味覚」、「聴覚」、「視覚」、「嗅覚」、「触覚」で一角獣の心を魅惑した貴婦人の思い、そして、貴婦人の甘い罠に自ら落ちた一角獣の深い愛情の行き着く先の陶酔こそ、このタペストリーに描かれたラブストーリーの終着点です。社会的な意味であれば、結婚を意味しますが、性的な意味すら連想してしまうのは、いけないことでしょうか。若い貴婦人はこれまでの5枚のタペストリーで身に着けていたネックレスを外して、侍女が差し出した小箱にそのネックレスを納め、一角獣を青いテントの中に誘おうとしています。まさに貴婦人と一角獣の愛は成就しようとしています。それ以外に「我が唯一つの望み」なぞ、ありはしないでしょう。

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素晴らしくロマンティックな恋愛物語でした(???)。

もう一度、恋する一角獣の可愛い姿、6連発をアップでご覧ください。

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本当に可愛いですね。3年前、2013年に日本でも展示されたので見られたかたもいらっしゃると思いますが、saraiは2015年にフィンランドの女性作曲家サーリアホのクラリネット協奏曲《D'OM LE VRAI SENS》の日本初演を聴くまでは、このタペストリーの存在すら知りませんでした。遅ればせながら、素晴らしい作品に出会えました。



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テーマ : ヨーロッパ
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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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はじめまして。ブログ拝見させていただきました。私は、個人ブログを運営しているyuichironyjpと申します。フリーランサーとして活動しており、フリーランスで稼ぐ方法や、

06/14 23:46 Yuichironyjp

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico
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