モーツァルト:ピアノ・ソナタ第18(17)番 ニ長調 K.576
アンドラーシュ・シフ
シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960
アンドラーシュ・シフ
ハイドン:ピアノ・ソナタ 変ホ長調 Hob. XVI: 52
アルフレード・ブレンデル
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 op.111
アンドラーシュ・シフ
ハイドンだけはシフのCDがないので、一番、無理のないところでアルフレード・ブレンデルのピアノです。さらに明日のアンコール曲のヤマを張って、以下のシューベルトの作品も聴きました。いずれもシフのピアノです。当たるかな? 一応、シューベルトの後期の作品を網羅しました。やはり、即興曲を何曲か、聴きたいですね。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 op.109という意外な可能性もありますが、これはシフのピアノで予習済です。シューベルトのピアノ・ソナタ第19番D.958の一部という線もなくはないですが・・・。
シューベルト
ハンガリーのメロディー D817
即興曲集 D899
アレグレット D915
グラーツのギャロップ ハ長調 D925
即興曲集 D935
3つの小品(即興曲) D946
明日のリサイタルはやはり、シューベルトとベートーヴェンの最後のソナタが楽しみです。いずれも傑作であるだけでなく、大好きな作品です。体調不良でも、無理しても聴きに行きます。むしろ、体調不良だと、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 op.111の第2楽章がとても心に響きます。
さて、シューベルトとベートーヴェンの予習についてはご紹介しましたが、今度はモーツァルトの予習です。
モーツァルトの後期2曲、ピアノ・ソナタ第17(16)番 変ロ長調 K.570とピアノ・ソナタ第18(17)番 ニ長調 K.576を集中的に聴きます。因みに第17番/第18番は新全集での番号で、カッコ内も番号は旧全集での番号です。
モーツァルトのピアノ・ソナタ全集や作品集でたいていはこの2曲をまとめて聴くことができます。聴いたCD、LPは以下です。計12種類です(レーゼルは第17(16)番のみ、シフのフォルテピアノでの演奏も第17(16)番のみ)。
ヴァルター・ギーゼキング 1953年録音 セッション録音 モノ
イングリット・ヘブラー 1964/1963年録音 セッション録音 LP
グレン・グールド 1965~74年録音 セッション録音
クリストフ・エッシェンバッハ 1967-70年 セッション録音
クラウディオ・アラウ 1973~1987年録音 セッション録音
マリア・ジョアン・ピリス 1974年録音 東京、イイノ・ホール セッション録音
アンドラーシュ・シフ 1980年録音 ロンドン スタジオ録音
ペーター・レーゼル 1982年録音 ドレスデン セッション録音 第17(16)番のみ
フリードリヒ・グルダ 1982年録音 アッター湖畔のヴァイセンバッハ グルダ自身によるプライヴェート録音
内田光子 1983~87年録音 ロンドン セッション録音
マリア・ジョアン・ピリス 1989~1990年録音 セッション録音
アンドラーシュ・シフ 1991年録音 ザルツブルク モーツァルトの持っていたフォルテピアノ使用
モーツァルトはやはり、粒立ちのよい響きで奏でてくれるピアニストで聴きたいものです。いわゆる、モーツァルト弾きといわれる人たちです。何故か、saraiの好みに合うのは、その彼らが若い時に弾いた録音です。ヘブラー、エッシェンバッハ、ピリス、内田光子、みんなそうです。そして、今回、ちゃんと聴いて、アンドラーシュ・シフもそうだということが分かりました。シフがまだ20代、37年前の録音ですね。昨日、彼の弾くモーツァルトを聴いて、その若き日の粒立ちのよいピアノの響きとは別のところに行ってしまったことが残念に思われました。明日の演奏はどうなんでしょう。現代におけるモーツァルト演奏の問題点なのかもしれません。故吉田秀和氏がいみじくも現代におけるモーツァルト演奏が難しくなったということを指摘していましたが、saraiの不確かな耳でさえ、そう思ってしまいます。妙に難しく考えて弾き過ぎるのかなと思っていましたが、そんなに簡単なものではなさそうです。一言で言えば、音符の数が少なくてシンプルなのに音楽自体が深みがあり過ぎるというギャップです。でも、それは昔でもそうだったはずで、何故か、クララ・ハスキルは見事なモーツァルトを聴かせてくれます。そうそう、今回の2曲のピアノ・ソナタはハスキルとリパッティの録音がないのが残念です。ハスキルの第10番K330、リパッティの第8番K310でとても素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
まず、ヴァルター・ギーゼキングですが、これは一時代を作り出した演奏記録です。この演奏を今聴いてみても、その素晴らしさに胸を打たれます。音質もなかなか良いです。次にイングリット・ヘブラーですが、吉田秀和氏が大変褒めていたので、手持ちのLPレコードを取り出して聴いてみました。なるほどね。創造性に欠けるが、滅法、楽譜に忠実な精細な演奏ということです。楽譜を見ながら聴いたわけではないので、その点は分かりませんが、ここは吉田秀和氏を信頼してもいいでしょう。これがリファレンスとなるべき演奏なんですね。吉田秀和氏はピアノの音が綺麗ではないと断じていましたが、いえいえ、そういうことはありません。この6枚組のLPレコードは亡くなった叔父さんから譲り受けたLPライブラリーの一部です。なかなか美しい演奏でした。再録音したCDは聴いていませんが、想像するにこの旧録音のほうがよさそうです。そのうちにヘブラーが60歳になって再録音したCDも聴き比べしてみましょう。いずれにせよ、旧録音の6枚組のLPはsaraiのお宝になりそうです。
グレン・グールドはsaraiにモーツァルトのピアノ・ソナタの何たるかを教えてくれた思い出のCDです。今回聴き直して、その素晴らしさを再認識しました。因みにグレン・グールドのモーツァルトで一番好きなのは幻想曲 ニ短調 K397です。エッシェンバッハのピアノはあんまり聴いていませんが、彼のモーツァルトのピアノ・ソナタ全集は若い頃のみずみずしさがあふれ出るような素晴らしい演奏です。クラウディオ・アラウは何を弾いても素晴らしいですが、今回、モーツァルトのピアノ・ソナタを聴くと、ちょっと重たいかなと思ってしまいました。ちょっとベートーヴェンのような様式の演奏になっています。若い頃のアラウはどうだったんでしょう。もっと颯爽とした演奏だったのかな。
マリア・ジョアン・ピリスの旧録音はsaraiにとって特別なCDです。極論すれば、これさえあれば、ほかのCDはいらないと思うほど大好きなCDです。彼女が30歳と若い頃に日本のイイノ・ホール(今はなくなったそうです)で録音したものです。張りつめた緊張感、ガラスのような繊細な神経、すべてがピリスの若さ故の記念碑的作品です。後年の再録音も素晴らしい演奏ではあるものの、あまりに落ち着いた演奏になり過ぎの感です。
シフの録音も若さ故の粒立ちのよい響きがとても心地よい演奏です。再録音は不要ですね(笑い)
ペーター・レーゼルもやはり40歳前の比較的若い頃の録音ですっきりした演奏です。フリードリヒ・グルダは何とも上手いものです。この人のモーツァルトは特別でしょう。吉田秀和氏によると、これこそウィーン風のモーツァルトだそうです。何がウィーン風かと言うと、ここぞと言う旋律をピアノ(弱く)奏でることによって、際立たせるというものなのだそうです。特にピアノ協奏曲で顕著だそうですが、これからは気を付けて聴いてみましょう。いずれにせよ、自由で見事な演奏です。内田光子のモーツァルトはしばらくsaraiが夢中になって聴いていたCDです。何と言うか、飛び跳ねるような躍動感が素晴らしいです。久しぶりに聴いてみましたが、やはり、独特の魅力があります。変な言い方ですが、日本人のsaraiにしっくりと収まる演奏です。
最後にシフがザルツブルクでモーツァルトの持っていたフォルテピアノを使用した演奏ですが、なかなか魅力的な演奏です。モーツァルトの時代のフォルテピアノって、こんなによい音だったんですね。シフが自分の所有するウィーン製のフォルテピアノでシューベルトを録音したアルバムがありますが、このモーツァルトのフォルテピアノのほうが格段にいい音に感じます。
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