今日のプログラムは以下です。
ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅰ
幻想曲 ハ短調 BWV906
イタリア風のアリアと変奏 BWV989
2声のインヴェンション(15曲) BWV772-786
《休憩》
3声のインヴェンション(シンフォニア)(15曲) BWV787-801
カプリッチョ 変ロ長調“最愛の兄の旅立ちにあたって”BWV992
カプリッチョ ホ長調 “ヨハン・クリストフ・バッハをたたえて” BWV993
幻想曲とフーガ イ短調 BWV904
《アンコール》
ゴールドベルク変奏曲BWV.988~アリア
今日のリサイタルは2声のインヴェンションと3声のシンフォニアが中心です。まずは幻想曲 ハ短調で開幕です。開幕にふさわしいバッハの響きに満足。極上の滑り出しです。アンジェラ・ヒューイットの実演を聴くのは初めてですが、想像していたよりも力強いタッチで明快な演奏にうっとりと聴き入ります。
続いて、イタリア風のアリアと変奏です。美しいアリアと変奏曲と言えば、まるでゴールドベルク変奏曲みたいなものです。アリアの主題提示部自体で様々な弾き方をしてくれるので、それも変奏のように聴こえます。ピアノの機能性を活かしたアーティキュレーションで弾かれていくアリアと変奏は素晴らしいとしか言えません。まさにバッハの鍵盤音楽がピアノで演奏される楽しさがここに凝縮しています。
前半の最後は2声のインヴェンション、全15曲です。子供の練習曲と言って、なめてはいけません。バッハの鍵盤音楽の基本がここにあります。長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さはここにもちゃんとあることをヒューイットのピアノは見事に表現してくれます。第9曲 ヘ短調と第15曲 ロ短調の演奏が心に沁みます。
後半は3声のインヴェンション(シンフォニア)、全15曲でスタートします。2声のインヴェンションに比べると響きが豊かになります。ここでも長調の闊達さが耳に心地よく響きますが、心に沁みるのは短調の曲です。とりわけ、第2曲 ハ短調、第7曲 ホ短調、第9曲 ヘ短調に酔わされました。
続いて、カプリッチョ 変ロ長調“最愛の兄の旅立ちにあたって”です。6楽章から成る作品ですが、アダージッシモの第3楽章のパッサカリアは心のこもった演奏で胸に迫ってきます。バッハが10代で作曲したそうですが、やはり、若くとも天才音楽家は素晴らしい作品を作り出しています。また、ヒューイットの類稀なる音楽性にも驚きを禁じ得ません。
圧巻だったのは最後に演奏された“幻想曲とフーガ イ短調”です。幻想曲は極めて表現力の高い演奏で魂がゆさぶられます。終盤では感動してしまいました。感動も束の間、すぐにフーガが始まります。フーガは2つのパートから成り、後半の下降音型によるフーガは構築性に富んだスケールの大きな演奏です。終結部では2つのフーガのテーマが交錯し、バッハならではの高度な対位法の世界を感じさせられます。ヒューイットの素晴らしい演奏に圧倒的な感銘を受けました。
アンコールに先立って、ヒューイットから今後の“バッハ オデッセイ”についての挨拶があり、今後を予告する意味もあって、ゴールドベルク変奏曲のアリアが演奏されました。そのアリアの筆舌尽くし難い演奏には瞼が熱くなりました。彼女のゴールドベルク変奏曲を聴けるのはきっと2020年、オリンピックの年になるでしょう。それまでは何としても、元気にこの“バッハ オデッセイ”を聴き続けるぞ!! 素晴らしきかな、アンジェラ・ヒューイットのバッハ。明日はフランス組曲全曲演奏です。楽しみです。
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