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The Bach Odyssey Ⅰ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2017.5.29

“バッハ オデッセイ”と銘打ったアンジェラ・ヒューイットの渾身の大プロジェクトがいよいよ日本でもスタートしました。4年間、全12回のコンサートシリーズで当世きってのバッハ弾きと目されるアンジェラ・ヒューイットがバッハの全ソロ鍵盤曲を完奏するという大企画です。saraiもこの企画に乗ることにしました。人生でこういう経験ができるって、何て幸運なんでしょう。まずは今日と明日が1回目と2回目のリサイタルです。ちなみに海外では、ニューヨーク、ロンドン、オタワ、フィレンツェなどの各地でこのコンサートシリーズが催行されるそうです。既に昨年の8月にイギリスのオールドバラで1回目のリサイタルがスタートしています。

今日のプログラムは以下です。

ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
 
J.S.バッハ・プログラム Odyssey Ⅰ

幻想曲 ハ短調 BWV906
イタリア風のアリアと変奏 BWV989
2声のインヴェンション(15曲) BWV772-786

  《休憩》

3声のインヴェンション(シンフォニア)(15曲) BWV787-801
カプリッチョ 変ロ長調“最愛の兄の旅立ちにあたって”BWV992
カプリッチョ ホ長調 “ヨハン・クリストフ・バッハをたたえて” BWV993
幻想曲とフーガ イ短調 BWV904

  《アンコール》

ゴールドベルク変奏曲BWV.988~アリア


今日のリサイタルは2声のインヴェンションと3声のシンフォニアが中心です。まずは幻想曲 ハ短調で開幕です。開幕にふさわしいバッハの響きに満足。極上の滑り出しです。アンジェラ・ヒューイットの実演を聴くのは初めてですが、想像していたよりも力強いタッチで明快な演奏にうっとりと聴き入ります。
続いて、イタリア風のアリアと変奏です。美しいアリアと変奏曲と言えば、まるでゴールドベルク変奏曲みたいなものです。アリアの主題提示部自体で様々な弾き方をしてくれるので、それも変奏のように聴こえます。ピアノの機能性を活かしたアーティキュレーションで弾かれていくアリアと変奏は素晴らしいとしか言えません。まさにバッハの鍵盤音楽がピアノで演奏される楽しさがここに凝縮しています。
前半の最後は2声のインヴェンション、全15曲です。子供の練習曲と言って、なめてはいけません。バッハの鍵盤音楽の基本がここにあります。長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さはここにもちゃんとあることをヒューイットのピアノは見事に表現してくれます。第9曲 ヘ短調と第15曲 ロ短調の演奏が心に沁みます。

後半は3声のインヴェンション(シンフォニア)、全15曲でスタートします。2声のインヴェンションに比べると響きが豊かになります。ここでも長調の闊達さが耳に心地よく響きますが、心に沁みるのは短調の曲です。とりわけ、第2曲 ハ短調、第7曲 ホ短調、第9曲 ヘ短調に酔わされました。
続いて、カプリッチョ 変ロ長調“最愛の兄の旅立ちにあたって”です。6楽章から成る作品ですが、アダージッシモの第3楽章のパッサカリアは心のこもった演奏で胸に迫ってきます。バッハが10代で作曲したそうですが、やはり、若くとも天才音楽家は素晴らしい作品を作り出しています。また、ヒューイットの類稀なる音楽性にも驚きを禁じ得ません。
圧巻だったのは最後に演奏された“幻想曲とフーガ イ短調”です。幻想曲は極めて表現力の高い演奏で魂がゆさぶられます。終盤では感動してしまいました。感動も束の間、すぐにフーガが始まります。フーガは2つのパートから成り、後半の下降音型によるフーガは構築性に富んだスケールの大きな演奏です。終結部では2つのフーガのテーマが交錯し、バッハならではの高度な対位法の世界を感じさせられます。ヒューイットの素晴らしい演奏に圧倒的な感銘を受けました。

アンコールに先立って、ヒューイットから今後の“バッハ オデッセイ”についての挨拶があり、今後を予告する意味もあって、ゴールドベルク変奏曲のアリアが演奏されました。そのアリアの筆舌尽くし難い演奏には瞼が熱くなりました。彼女のゴールドベルク変奏曲を聴けるのはきっと2020年、オリンピックの年になるでしょう。それまでは何としても、元気にこの“バッハ オデッセイ”を聴き続けるぞ!! 素晴らしきかな、アンジェラ・ヒューイットのバッハ。明日はフランス組曲全曲演奏です。楽しみです。



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テーマ : クラシック
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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