今日のプログラムは以下のとおりでした。
ロータス・カルテット ベートーヴェン・サイクル 2017
ロータス・カルテット
小林幸子vn マティアス・ノインドルフvn
山碕智子va 斎藤千尋vc
弦楽四重奏曲 第1番 へ長調 Op.18-1
弦楽四重奏曲 第2番 ト長調 Op.18-2
《休憩》
弦楽四重奏曲 第3番 ニ長調 Op.18-3
弦楽四重奏曲 第4番 ハ短調 Op.18-4
《休憩》
弦楽四重奏曲 第5番 イ長調 Op.18-5
弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 Op.18-6
初日はいきなり、作品18の弦楽四重奏曲全6曲がまとめて演奏されました。これがとてもよかったんです。たしかに長時間のコンサート(2回の休憩をはさんで約3時間!!)になりましたが、ベートーヴェンが初期の弦楽四重奏曲で表現した音楽世界がこんなにも充実したものだったとはと驚かされました。ロータス・カルテットの演奏は期待を上回る出来でした。熟成した木のような響き、安定したテクニック、ヨーロッパ的、さらに踏み込んで言えば、ウィーン風の音楽表現、すべてが充実していました。強いて言えば、スケール感はありませんが、ベートーヴェンを古典的に演奏するのにそれは必須ではありません。
まず最初は第1番です。冒頭の響きでえっと思います。もっとリッチな響きを想像していましたが、繊細で熟成した響きです。決して響きが乏しくはなく、小さなホールに音は満ちています。第2楽章の深みを感じさせられる演奏にはぐっと惹き込まれました。単に初期と言えないような、哀調に満ちた音楽に感銘を受けます。
第2番も第1番と同様に素晴らしい演奏。特に第1楽章が格調の高い演奏。第2楽章のアダージョ・カンタービレもとても美しい演奏です。
前半の2曲の見事な演奏ですっかり、いい気持ちになりました。
中間の演奏が始まります。
第3番はシンプルでバランスのとれた演奏です。第2楽章のアンダンテ・コン・モートは美しい響きの演奏。
第4番は作品18の中で最も有名な曲ですが、傑作でもあります。ハ短調というベートーヴェンにとって、特別な調でもあります。第1楽章の冒頭から、その思いつめたような響きに強い感銘を覚えます。曲も素晴らしく、演奏も素晴らしいという最高の音楽です。第2楽章のスケルツォもアンダンテで抒情的な響き。素晴らしいです。第4楽章もとても惹きつけられる演奏で終盤の盛り上がりに感銘を受けます。圧巻の演奏でした。
ここで再び、休憩。そして、後半の演奏に入ります。
第5番は軽快に始まります。第3楽章のアンダンテ・カンタービレは変奏曲形式です。とても聴きごたえのある演奏でした。
第6番は溌剌とした音楽。第4楽章は気分の移り変わる音楽ですが、最後は勢いよくフィナーレ。
作品18の6曲の素晴らしい音楽、そして、素晴らしい演奏を堪能しました。一夜でまとめて聴いたのは初体験ですが、ベートーヴェンの素晴らしい音楽であることを実感しました。後期の弦楽四重奏曲の超絶的な高みとはまた違った充実した音楽的な内容がそこにあります。ロータス・カルテットもこの作品18を十分に自己の音楽として、完璧とも言っていいレベルの演奏を繰り広げてくれました。目をつぶって聴いていると、いい意味でとても日本人が演奏しているとは思えませんでした。完璧にドイツ・オーストリアの音楽風土に根差した本物の音楽がそこにありました。
今回のベートーヴェン弦楽四重奏曲チクルスに向けて、一応、予習をしました。ブッシュ弦楽四重奏団(全曲録音はない)やブダペスト弦楽四重奏団の演奏が本命ですが、それは何度も聴いているので、今回はヴェーグ四重奏団かエマーソン四重奏団で聴くことにして、どちらにするか迷いましたが、まあ、録音のよいエマーソン四重奏団で聴くことにしました。短期で集中してベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴くととても聴き甲斐がありました。初期の素晴らしい演奏から後期の何とも言えない神のような音楽まで、堪能しました。初期の充実ぶりと中期のラズモフスキー3曲(とりわけ1番)の素晴らしさ、セリオーソ(第11番)の深い演奏。そして、後期、第15番、第13番+大フーガ、第14番の傑出した演奏。素晴らしいですね。次はきっとヴェーグ四重奏団(新盤)を通して聴いてみましょう。
明日は中期の2曲(ハープ、セリオーソ)と後期の第12番です。どんどん佳境に入ります。
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