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Es muss sein! ロータス・カルテット:ベートーヴェン・サイクル第4回@鶴見サルビアホール 2017.6.13

何とも凄い演奏でした。批評家でもない一介の音楽愛好家としては情緒的で主観的な感想が許されるのが嬉しいところです。これまでに自分が聴いてきた室内楽のコンサートで最高のものでした。前半の弦楽四重奏曲 第16番 Op.135は第3楽章がかって聴いたことがないほどの美しい演奏で心を慰撫される思いになりました。そして、第4楽章もMuss es sein?(そうでなければならないのか?)と書き込まれた導入部の充実した響きに続いて、ポジティブで確信に満ちた主部が演奏されました。まさにEs muss sein!(そうでなければならない!)という感じです。この第3楽章から第4楽章への構成は交響曲第9番と同じですね。圧巻のフィナーレで一瞬、このチクルスもこれで完了という充実感に至りました。しかし、まだ、第4回目のコンサートの前半が終わっただけです。その高揚感のまま、後半の弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130を聴きます。この第13番が第1楽章から最高に素晴らしい演奏です。まさにEs muss sein!を実感させるような演奏です。第4楽章まで高い緊張感を保ったまま、美しい響きに耳を傾けます。そして、第5楽章のカヴァティーナの最初の響きを聴いたとき、もろくもsaraiの心は崩壊します。心の奥襞に沁み込んでくるような美しい音楽が心に突き刺さり、感動の涙が止まりません。その後は放心状態。最後の大フーガも素晴らしい演奏でしたが、アドレナリン不足の状態なので遠くで音楽が響いているような感じでした。それでも壮大なフィナーレには深い感銘を受けました。
音楽って、何て、素晴らしい!!

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  ロータス・カルテット ベートーヴェン・サイクル 2017

  ロータス・カルテット
    小林幸子vn  マティアス・ノインドルフvn
    山碕智子va  斎藤千尋vc

  弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 Op.135

   《休憩》

  弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130

   《休憩》

  大フーガ 変ロ長調 Op.133

個々の曲に細かい感想はありますが、このブログは音楽批評ブログではないので、こんなに感動したコンサートの些細な話は省略させてください。
それにしても、音楽に国境はないということは分かっていますが、日本人演奏家がヨーロッパ文化の最も深い(とsaraiが勝手に思っている)ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲をこんなにパーフェクトに演奏するのは驚愕以外の何物でもありません。ヨーロッパ在住の日本人が里帰り公演でこんな素晴らしい、それも多分、ヨーロッパでもそんなには聴けないような演奏をするんだったら、有り難がって、わざわざヨーロッパ遠征をして音楽を聴いているsaraiは何をやっているのか、ばかばかしい感じもします。時代が変わったんでしょうか。

明日は、いよいよ最終日。第15番と第14番という超ド級のプログラムです。このまま、さらにステップアップするんでしょうか。ロータス・カルテット、恐るべし!!

因みに関係ない話で恐縮ですが、Muss es sein? Es muss sein!で思い出しました。比較的、最近、読んだチェコ出身の作家ミラン・クンデラの小説《存在の耐えられない軽さ》で、小説のメインモティーフになっていたのが、この弦楽四重奏曲 第16番のMuss es sein? Es muss sein!です。政治状況の悪かったチェコを出て、スイスの病院に勤務していた主人公の外科医トマーシュは一緒に暮らしていた恋人のテレザの突然のチェコへの帰国を受けて、このEs muss sein!(そうでなければならない!)の言葉を発して、あえて、苦しい決断をして、彼女のあとを追って、チェコに帰国します。そもそも彼にベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第16番を聴くことを勧めたのは誰あろう、テレザだったんです。第4楽章に書かれている表題はDer schwer gefaßte Entschluß(苦しい決断の末)です。トマーシュもまた、ベートーヴェンの音楽に魅入られたように苦しい決断をして、表面的には転落の人生に落ち込んでいきます。でも、何が人の幸福なのか・・・それも人生、あれも人生ですね。この小説がハッピーエンドなのか、そうでないのか、それは読んだ人の人生の価値観に依るでしょう。ベートーヴェンだって、苦しい状態で後期の弦楽四重奏曲を書いたのがよかったか、悪かったか・・・そんなことは問題ではないでしょう。人生はすべからく、Es muss sein!ですからね。念のためですが、saraiはこの小説はハッピーエンドと信じて、感動しました。saraiも人生は Es muss sein! と信じて疑わない人間です。


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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