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マーラー:交響曲第9番 ハイティンク&ウィーン・フィル 2回目@ザルツブルク祝祭大劇場 2017.7.30

終演後、祝祭大劇場を出るまで無言でしたが、配偶者にぽつりと「終わったね」と言いました。万感の思いです。saraiにとって、音楽は人生そのもの。中学生になって、親に買ってもらったステレオでクラシックを聴き始め、40歳になって、夢だったウィーン国立歌劇場でオペラを見て、それから、病みつきになって、ヨーロッパ遠征で音楽を聴き続けてきました。そして、一昨日と今日、ハイティンク指揮ウィーン・フィルで一番愛して止まないマーラーの交響曲第9番を聴き、これでもう思い残すことはありません。一応、まわりにはバイロイトで指輪、パルジファル、トリスタンを聴きたいものだとは言っていますが、それは付録のようなもの。マーラーの交響曲第9番は告別の音楽です。己の死期を悟ったマーラーが愛する大地、それは人生と言い換えてもいいでしょうが、それらへの告別、さらに妻アルマへの断ち難い愛への告別を持てる力のすべてを注ぎ込んで完成させた未曽有の音楽と言えるでしょう。マーラーの主観的な音楽ですが、いずれ己の人生と告別すべき運命にあるすべての人々が思いを共有できる音楽でもあります。saraiの音楽と人生の集大成にこれほどふさわしい曲もありません。そして、最も愛するオーケストラ、ウィーン・フィルでそれを聴くのは必然です。また、マーラーとブルックナーなどで現在、もっとも敬愛している巨匠ハイティンクでこれが聴けたのは僥倖とも思えます。高齢のハイティンクとはこれが告別になるかもしれません。今日は指揮台のハイティンクに最も近い席で聴かせてもらいました。指揮を終えた巨匠はすっかり憔悴していましたが、うっすらと涙を見せていたように感じたのはsaraiの感傷でしょうか。立ち上がって拍手をしながら、これまでの名演に感謝をしながら、告別の念を送り続けました。

今日の演奏は一昨日よりも第1楽章からウィーン・フィルのアンサンブルも揃っており、巨匠も高齢とは思えない力強い身振りでの指揮で、オーケストラもその指揮にぴったりと応えていました。実に丁寧に細部を整えた安定した演奏で、高潮すべきパートの迫力は凄まじいものです。しかし、pの繊細で柔らかい表現、響きが一番、印象的でした。第1楽章の充実ぶり、第2楽章の郷愁、第3楽章の前進力の後、まさに最後の告別の音楽、第4楽章。愛する大地への告別、しかし、生への哀惜の念も耐え難く、波のうねりのように行きつ戻りつしながら、終局に向かっていきます。木管の美しい響きの演奏の後、最後の頂点を極め、独奏チェロが愛の動機を演奏すると、長いpのパートに入っていきます。ウィーン・フィルの合奏力が最高に発揮されます。巨匠の姿を見ることはsaraiにはもうできません。目を閉じて、静かに告別の音楽を聴き続けます。最後に目を開けて、巨匠がゆっくりと棒をおろしていく様を眺めます。これでお別れですね。長い間、ありがとうございました。

今日のプログラムは以下です。

 指揮:ベルナルト・ハイティンク
 管弦楽:ウィーン・フィル

 マーラー:交響曲第9番


この日に向けて、予習もたくさんしました。ハイティンクのCDで聴いていないのは海賊版も含めて、クリーヴランド管弦楽団との演奏くらいでしょう。以下が予習したハイティンクのCDです。

1969.6 コンセルトヘボウ管 (全集)
   素晴らしい名演です。バルビローリ&BPOとも並び立つような演奏です。演奏、録音ともに素晴らしい響きで高弦のピアノの素晴らしさに魅了されます。第4楽章には大変な感動を覚えました。まるでライヴ演奏を聴いているような錯覚すら覚えます。涙なしには聴き通せません。

  1987.12 コンセルトヘボウ管 (クリスマス・マチネー)CD
   こういう演奏が聴きたくて、ずっと音楽を聴いてきました。第4楽章の終盤、チェロの独奏が入った後の薄明の世界ではもう我を忘れて聴き入るのみです。それにしても、演奏が終わると同時に拍手をする人たちはこの曲の何を聴いているんでしょう。できうれば、拍手なしでそっと席を立ちたいくらいの気分なのに・・・。その場で生の演奏を聴いているような素晴らしい録音でもありました。

1987.12 コンセルトヘボウ管 (クリスマス・マチネー)映像
   第3楽章まではCDの音質のよさに比べて、映像版の音質の不鮮明さに白けます。しかし、第4楽章は圧巻です。冒頭から素晴らしい演奏(もちろん、CDと同じ音源です)です。それがハイティンクの棒のもと、次第にヒートアップして、有機的にオーケストラが一体化していきます(変な表現ですが、そう感じるんです)。高みに上りつめて、一瞬のパウゼ・・・その後の空前絶後の素晴らしい演奏は奇跡とも思えます。管楽器のソロのリレーのレベルの高さ、高弦の美しさに魅了されます。そして、あのチェロの独奏後はCD以上の感動的な演奏です。最後に音が途切れるとき、高く上げたハイティンクの手から、指揮棒が落ちます。同時に拍手。早過ぎると思った拍手の真相はこういうことだったんですね。いやはや、大変、感動しました。

1993.3 ECユース管
   コンセルトヘボウ管を上回るようような素晴らしい演奏。とりわけ、第4楽章の後半の超絶的な美しさには感動するのみです。ところで、第2楽章の恐ろしいほど、ゆったりとした開始は何だったんでしょう。
 
  2004.4.25 ウィーン・フィル  
   第1楽章は、おいおい、どうしたんだって感じで速過ぎて、粗っぽくて、これがウィーン・フィルかって思いますが、後半には持ち直し、第2楽章、第3楽章の切れの良い演奏に満足します。そして、終わってみれば、第4楽章の分厚い弦の響きにうっとりして、感動の演奏でした。13年前の演奏ですが、この第2楽章以降の演奏を今度のザルツブルクで聴かせてくれれば、saraiは感動の涙にくれるでしょう。何と言っても、この曲はライヴで聴くのが一番ですからね。

  2009.7.20 ロンドン交響楽団 (Proms Live)
   何という演奏でしょう。まさにハイティンクの集大成とも思える最高の演奏。ロンドン交響楽団はハイティンクの指揮と完全に一体化します。全楽章、文句のつけようのない演奏です。人生の最期に聴くのにふさわしい演奏です。これ以上の演奏があるとは思えません。録音も臨場感のある素晴らしい音です。
      
2011.5.15 コンセルトヘボウ管 CD-R
   コンセルトヘボウ管のBDのマーラー全集にも収録されている演奏です。映像版は見ていません。CD版のみを聴きました。とても素晴らしい演奏です。生きとし生きるものを優しく慰撫するかのように美しく演奏されます。第1楽章は官能をそっと撫でてくれるような究極美の世界。第3楽章は色彩感あふれるコンセルトヘボウ管弦楽団の見事な演奏。そして、第4楽章の後半は永遠の世界を思わせる究極の音楽。これがハイティンクとコンセルトヘボウの最後のマーラーの第9番になるのでしょうか。

2011.12 バイエルン放送交響楽団
   第1楽章はしみじみとした素晴らしい演奏。しかし、第2楽章以降はバイエルン放送交響楽団の響きがいかにも硬くて、のりきれません。結局、終楽章のフィナーレの薄明の世界の美しさだけは何とか感じられるという感じ。折角のハイティンクの指揮なのに残念です。体調不良のヤンソンスの代役だったので、準備が間に合わなかったのでしょうか。2016年の来日演奏でもヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団は今一つの演奏だったので、オーケストラに問題があるのかもしれません。 

ハイティンク以外に聴いたCDは以下です。ウィーン・フィルは全部聴こうと思いましたが叶いませんでした。

  ワルター指揮ウィーン・フィル
  バーンスタイン指揮ウィーン・フィル DVD
  バーンスタイン指揮コンセルトヘボウ管弦楽団
  バーンスタイン指揮ベルリン・フィル

バーンスタインもニューヨーク・フィルとイスラエル・フィルも聴こうと思いましたが叶いませんでした。ワルターは初演者でもあり、別格の演奏です。バーンスタインはやはり、コンセルトヘボウ管弦楽団との演奏が一番でしょうか。

本は以下を読みました。
  吉田秀和:マーラー
  金子建志:マーラーの交響曲 (こだわり派のための名曲徹底分析)

いずれも大変、参考になりました。
大型スコアも買いましたが、スコアを見ながらだと、楽譜を追っかけるのが大変で耳がお留守になるのでやめました。



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       ハイティンク,  

オペラ《皇帝ティトの仁慈》クルレンツィス指揮ムジカエテルナ セラーズ演出@ザルツブルク・フェルゼンライトシューレ 2017.7.30

何の気なしに、ザルツブルク音楽祭でモーツァルトのオペラを聴こうと思ってチケットを買いましたが、クルレンツィス指揮ムジカエテルナは今や、飛ぶ鳥を落とす勢いの指揮者と古楽オーケストラ。saraiの今までの音楽の価値観を打ち砕くような演奏で、戸惑ってしまいました。とても簡単に書ける内容ではありません。詳細は帰国後、書きましょう(覚えていれば・・・)。

それにしても、saraiの音楽人生を集大成したハイティンク指揮ウィーン・フィルのマーラーの交響曲第9番を聴いた直後、saraiの音楽の価値観をひっくりかえすようなオペラを聴くことになるとはね。

これが今まで聴いてきたモーツァルトと同じものとは信じられません。歌劇「皇帝ティートの慈悲」の中に大ミサ曲 ハ短調 K.427(K.417a)、アダージョとフーガ ハ短調 k.546、フリーメイソンのための葬送音楽 ハ短調 K.477(479a)を挿入した重厚な内容になっています。
クルレンティスの登場がまず、ユニークです。真っ暗闇の中、懐中電灯を持って、指揮台に上がります。したがって、入場の拍手はできません。その指揮ぶりはまるで鳥が舞うような風情。それに呼応するオーケストラ、ムジカエテルナは立奏です。クルレンティスの舞に合わせて、体を揺り動かしながらの演奏で、まるで体全体を使って演奏しているようです。その音楽の生き生きしていること・・・他と比べられるレベルではありません。究極のバロックオーケストラです。鍵盤奏者はハンマークラヴィーア(フォルテピアノ?)を見事に奏します。しかも女性のマリア・シャバショワは音楽だけでなく、実に可愛い!! ハンマークラヴィーアは2台あり、時として重奏します。
書いていれば切りがありませんが、第1幕後半のセストの有名なアリアではクラリネット奏者が舞台上でセストと絡みながらの演奏。いかにモーツァルトがたくみにクラリネットを使ったかが明確になります。見事な音楽作りでした。
歌手たちはある意味、無名の妙な人たちの集団ですが、クルレンティスにかかると、そこらの有名歌手には及びもつかない素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。
いやはや、大変な感銘を受けました。それとともにsaraiが今まで聴いてきた音楽は何だったのかというショックにも見舞われました。これからの音楽はこういうものになるのでしょうね。ピリオド奏法も新しい段階に入り、いよいよ、モダン楽器のオーケストラが駆逐されていくような予感も覚えます。第2、第3のクルレンティスは現れるのでしょうか。

今日のプログラムは以下です。

 モーツァルト:歌劇「皇帝ティートの慈悲」KV 621

 指揮:テオドール・クルレンツィス
 管弦楽・合唱:ムジカエテルナ
 演出:ピーター・セラーズ

 皇帝ティト:ラッセル・トーマス
 ヴィッテリア:ゴルダ・シュルツ
 セルヴィリア:クリスティーナ・ガンシュ
 セスト:マリアンヌ・クレバッサ
 アンニオ:ジャニーヌ・ドゥ・ビク
 プブリオ:ウィラード・ホワイト

日本でも、このクルレンティス&ムジカエテルナのオペラは無理でも、コンサートを早く催すべきでしょう。日本の音楽界が世界の潮流から遅れてしまいます。

あっ、そう言えば、ピーター・セラーズの演出にはまったく触れませんでした。難民問題、世界融和、世界の指導者の問題など、喫緊の課題を満載した内容でした。賛否両論あるでしょう。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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