すると、折も折、そのホープリッチが来日して、モーツァルトのクラリネット五重奏曲を演奏するということで、早速、コンサートのチケットを入手した次第です。
ホープリッチと一緒に演奏する弦楽四重奏団はロンドン・ハイドン・クァルテット。ピリオド楽器で演奏する団体で、ホープリッチと共演してモーツァルトのクラリネット五重奏曲のCDを録音もしています。これは興味津々です。
で、今日聴いた感想ですが、実に面白いものでした。これがオリジナルなのねって、深い思いに至ります。一言で言えば、渋い演奏ですね。オリジナルのバセット・クラリネットは渋いというか、おとなしい音色です。低域の音は深みがあります。高域は現代のクラリネットのような張りのある輝かしい音色ではなく、ふわっとした柔らかい音です。古き良き時代に思いを馳せながら聴きました。正直、音楽的には物足りないものもありました。一昨年聴いたヴィトマン&ハーゲン・カルテットの演奏には大変感動しました。そのときの記事はここです。その演奏と比較するのは酷でしょう。今日は音楽史的に貴重な演奏が聴けたのでよしとしましょう。アンコールは第2楽章でしたが、今日の演奏ではこの第2楽章がしみじみとしていて、一番、よかったと感じました。2度も聴けて、嬉しく思いました。
前半はハイドンの中期の弦楽四重奏曲が2曲。これは滅多に演奏されない曲でもちろん、初聴きです。ピリオド奏法で演奏されたので、ハイドンのいつもの明快で爽快な感じではなく、まるでバロック音楽でも聴いているような感じです。これまた、貴重な演奏を聴かせてもらいました。これはこれで、とても美しい音楽ですが、やはり、モダンな奏法のほうがすっきりと美しいかなと思います。
今日のプログラムは以下です。
弦楽四重奏:ロンドン・ハイドン・クァルテット
第1ヴァイオリン:キャサリン・マンソン
第2ヴァイオリン:マイタル・グレヴィチ
ヴィオラ:マイタル・グレヴィチ
チェロ:ジョナサン・マンソン
バセット・クラリネット:エリック・ホープリッチ
ハイドン:弦楽四重奏曲 第37(45)番 Op.50-2
ハイドン:弦楽四重奏曲 第47(59)番 Op.54-3
《休憩》
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 K.581
《アンコール》モーツァルト:クラリネット五重奏曲 K.581より第2楽章
最後に予習について触れておきましょう。
ハイドンの弦楽四重奏曲2曲は以下のCDで予習しました。
エンジェルス四重奏団
ロンドン・ハイドン・クァルテット
エンジェルス四重奏団は全集盤です。もちろん、モダンなカルテットで、とても美しい演奏です。ハイドンの素晴らしさに浸りきりました。
ロンドン・ハイドン・クァルテットは今日の演奏団体です。ハイぺリオンから順次、ハイドンのCDを出しています。演奏はもちろん、今日聴いた演奏とほぼ同じです。ピリオド奏法のハイドンはとても同じ曲とは思えないほど変貌します。古き良き時代、貴族たちの間で聴かれていた雰囲気を思い起こさせられます。
モーツァルトのクラリネット五重奏曲は以下のLP、CDで予習しました。
ランスロ、バルヒェット四重奏団 LP
ボスコフスキー、ウィーン八重奏団 LP
ホープリッチ、ロンドン・ハイドン・クァルテット
ランスロとバルヒェット四重奏団はsaraiがこの曲を初めて聴いた思い出の1枚。いつ聴いても青春の思い出と重なります。ランスロのクラリネットも素晴らしいし、それ以上にバルヒェットのヴァイオリンが見事です。でも、それ以上に素晴らしいのはボスコフスキーとウィーン八重奏団の1枚です。ウィーン・フィルのメンバーでないと出せないウィーン風の柔らかい響きにうっとりとします。これを聴くとこの曲がモーツァルトの最高傑作に思えてしまいます。クラリネットと弦楽が重なるところの美しさにはため息が出ます。
そして、ホープリッチとロンドン・ハイドン・クァルテットという今日の演奏メンバーのCD。感想は今日の演奏と同じです。やはり、バセット・クラリネットの高域の響きは物足りなさを感じます。
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