前半のプログラムでは、冒頭のモンテヴェルディの短い宗教曲《主をほめ讃えよ》でうーんと唸らせられます。
続くメールラの《子守歌による宗教的カンツォネッタ「今や眠りの時」》 の静謐で祈りに満ちた歌唱にはうっとりとさせられます。
そして、前半のハイライトはヴェネチアの女流作曲家バルバラ・ストロッツィの3つの愛の歌です。まず、曲が素晴らしいです。今風に言えば、シンガーソングライターだった彼女の曲にはハートがあります。その曲をドロテー・ルクレールは歌い紡ぎます。時にアジリタを交えて、素晴らしい歌唱でした。
後半のプログラムはヘンデルのソロ・カンタータ《ルクレツィア「おお、永遠の神々よ」》が圧巻でした。古代ローマの共和制への移行の礎になった女性の鑑のようなルクレツィアの強くて一途な心情をドロテー・ルクレールは歌い上げました。中間部でのアジリタも見事でしたし、最後のアリオーソでは胸がジーンとしました。ヘンデルを堪能しました。
バロック・アンサンブルのフォンス・ムジケの素朴な響きも美しい伴奏になっていました。テオルボ(リュートみたいな楽器)やバロック・ギターを聴いたのも初めての経験です。とても音量が小さくて、現代の大きなホールの演奏には適しませんが、往時の宮中音楽を偲ばせるものです。
この日のプログラムは以下の内容です。
バロック・アンサンブル フォンス・ムジケ
ドロテー・ルクレール(ソプラノ) レア・ラヘル・バーダー(バロック・チェロ)
プリスカ・ヴァイベル(バロック・ギター) ルカ・オベルティ(チェンバロ)
今村泰典(テオルボ / リーダー)
モンテヴェルディ:主をほめ讃えよ
メールラ:子守歌による宗教的カンツォネッタ「今や眠りの時」
ストロッツィ:恋するエラクレイト「恋する人たちよ聞いておくれ」
J.S.バッハ:協奏曲 ニ長調 BWV972(原曲:ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲 Op.3-9)(チェンバロ・ソロ)
ストロッツィ:もしあなたが望むなら、私はそれで構わない
ストロッツィ:何ができよう?
《休憩》
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第3番~プレリュード、サラバンド、ブーレ(テオルボ・ソロ)
ボノンチーニ:チェロと通奏低音のためのソナタ
ヘンデル:カンタータ ルクレツィア「おお、永遠の神々よ」 HWV 145
《アンコール》
ヘンデル:歌劇『リナルド』より「私を泣かせてください」
シャンソン 『枯葉』(ジョゼフ・コズマ作曲)
アンコールの「私を泣かせてください」は素晴らしい歌唱でうっとりとして聴き入るばかりでした。最後の『枯葉』もさすがにフランス人歌手らしく、見事な表現でした。
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