スヴャトスラフ・リヒテル、1970年7月、セッション録音、ザルツブルク、クレスハイム宮およびエリーザベト教会
フリードリヒ・グルダ、1972年、セッション録音
アンドラーシュ・シフ、2011年、セッション録音、スイス、ルガーノ
この平均律クラヴィア曲集は第1巻と第2巻から成り、それぞれ、24のプレリュードとフーガの楽曲です。第1巻だけでもCD2枚で2時間弱の長さなので、まとめて3つも聴くのは初めてです。まとめて聴くと、今更ながら、この曲集が理解できてきます。いつものその量と内容で圧倒されて、頭にしっかりと入ってきません。複数のピアニストの演奏をまとめて聴くと、おぼろげながら、その実像が明確になってきます。プレリュードは速い曲とゆったりした曲という違いはありませすが、旋律線が明確で美しい楽曲です。続くフーガが難物です。抽象的なフーガ主題の楽曲が多いんです。大袈裟に言えば、シェーンベルクの無調音楽を連想させるものもあります。分かりやすい旋律を排しているかのようです。しかし、その抽象的な主題が繰り返して現れることで曲の後半には次第に明確な存在感を示してきます。その感覚たるや、大伽藍を築き上げているかの如くです。このフーガをいかに見事に演奏するかというところでピアニストの力量が問われます。リヒテル、グルダ、シフはその点、別格ですね。とりわけ、グルダはフーガを恐ろしくスローに、しかも明晰に弾き、顕微鏡的な演奏を聴かせてくれます。最後の第24番のロ短調のフーガはスローな演奏で主題を積み上げて、後半は感動の頂点に至ります。バッハの平均律クラヴィア曲集が何たるかを教えてくれるような最高の演奏です。リヒテルの幻想的な演奏、シフの美しい響きの演奏も素晴らしいです。実はこれは来年のアンジェラ・ヒューイットのリサイタルに向けての予習スタートでもあるので、彼女のCDはあえて聴かずに最後にとってあります。
で、昨日のバルダの異形のバッハでした。何となく、そのままでは気持ちが悪いので、今回は異例の復習をしました。バルダのライヴがあんなのだったので、ライヴのCDを聴くことにしました。
スヴャトスラフ・リヒテル、1973年、ライヴ録音、インスブルック
リヒテルの平均律クラヴィア曲集第1巻と第2巻をまとめた録音は予習したセッション録音とこのライヴ録音の2つだけです。リヒテルの平均律クラヴィア曲集と言えば、普通はセッション録音のことをさします。ライヴ録音は入手性が悪いこともあって、あまり知られていないようです。今回、初めて、このインスブルック・ライヴを聴きましたが、最高に素晴らしい演奏で音質も上々です。第8番や第24番のフーガは感銘して聴き入ってしまいました。セッション録音と同時期の演奏ですが、やはり、リヒテルにはライヴが似合います。リヒテル自身も満足の演奏のようです。
実はエトヴィン・フィッシャーの伝説の名演も聴き始めましたが、第1番だけ聴いたところであまりの音質の悪さに聴くのを中断しています。EMI盤(非ART処理)に比べるとMEMBRAN盤はまだ良いほうですが、それでも聴き通す気にはなれません。ART処理されたEMI盤はどうなんでしょう。
この平均律クラヴィア曲集は鍵盤音楽ですから、ピアノではなくチェンバロ演奏もあります。以前、ヴァルヒャのレコードを聴きましたが、そのほかにグスタフ・レオンハルト、スコット・ロスも名盤を残しています。これも聴かないとね。
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