感動しました。フィンランド独立100周年を記念したコンサートでしたが、期待を上回る素晴らしい演奏でした。まず、讃えたいのはハンヌ・リントゥのダイナミックな指揮です。オーケストラと合唱を鼓舞するかのように激しく体を動かしながら、熱く音楽を盛り上げます。それに応えた都響はあくまでも精密なアンサンブルを崩しません。まるで室内オーケストラのような緻密な響きを聴かせてくれました。ふと頭によぎったのは、ベルグルンド&ヨーロッパ室内管弦楽団のシベリウス交響曲全集です。あれは素晴らしい最高の演奏でした。ただ、残念だったのはこのクレルヴォ交響曲が全集に含まれていなかったことです。しかし、まるでそのベルグルンド&ヨーロッパ室内管弦楽団がクレルヴォ交響曲を演奏しているかのような今日の演奏です。精密で切れのあるシベリウス。そして、生き生きと躍動している音楽です。さらに第3楽章からはフィンランドからやってきたフィンランド ・ポリテク男声合唱団の澄んだ歌声が加わります。メゾソプラノのニーナ・ケイテルとバリトンのトゥオマス・プルシオも完璧な歌唱で見事です。第3楽章終盤のケイテルの歌唱には鳥肌が立ちます。クレルヴォの妹役の彼女が歌い終えて、一瞬の静寂があります。まさにこの瞬間、クレルヴォと結んではいけなかった関係を持った妹は絶望のあまり、急流に身を投げて、命を絶ったことを悟らされます。そして、クレルヴォ役のプルシオが悲痛に満ちた雄叫びのような圧倒的な歌唱で続きます。怒涛のような音楽に大変な感銘を受けました。最後の第5楽章は熱いオーケストラの響きに精妙な男声合唱が加わり、次第にヒートアップしていきます。圧倒的なフィナーレに深く感動しました。都響の精密で切れのいいアンサンブルに本場のフィンランドからの指揮者と声楽が加わった演奏は滅多に聴けない素晴らしさでした。多分、もう2度と聴けない最高のクレルヴォ交響曲でした。この場にいれて、実に幸運でした。
さらにまだ、予告されたアンコールという前代未聞のものが演奏されます。男声合唱付きの交響詩《フィンランディア》です。これは痺れました。何て熱い演奏なんでしょう。本場のオーケストラでもこういう熱い演奏はしないでしょう。指揮のリントゥと都響が一体になって熱い音楽を繰り広げます。そして、後半は男声合唱が加わり、感動的に音楽が盛り上がっていきます。未曽有のフィナーレでした。さきほどのクレルヴォ交響曲と同様の素晴らしい演奏でした。
今日のプログラムは以下のとおりでした。
指揮:ハンヌ・リントゥ
メゾソプラノ:ニーナ・ケイテル
バリトン:トゥオマス・プルシオ
男声合唱:フィンランド ・ポリテク男声合唱団
管弦楽:東京都交響楽団
シベリウス:クレルヴォ交響曲 op.7
《予告付きアンコール》
シベリウス:交響詩《フィンランディア》 op.26(男声合唱付き)
こんな素晴らしい音楽を聴かせてくれる都響に感謝します。が、都響の来年度のプログラムのあまりの魅力のなさは如何ともしようがありません。8年間続けてきた定期会員の継続は見送ることに決めました。来季からは読響と東響に鞍替えします。今年度の都響のコンサートは魅力的なものがまだ続きます。来年3月のインバルの指揮によるコンサートで永年の関係も終止符を打ちます。また、都響の会員に復帰できるようにプログラムの魅力アップに取り組んでください・・・。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽