前半のブラームスの弦楽四重奏曲 第1番は出だしが素晴らしく、とっても熱情的でロマンティックな響きに魅了されます。いったんは不安感が払拭されます。ただ、第1ヴァイオリンのフォルテのときの金属的な響きが気にはなりました。全体としては素晴らしい演奏です。しかし、中間の第2楽章、第3楽章が何となく、漫然とした演奏で心に響いてきません。4人のバランスも悪く、第1ヴァイオリンの音がうるさく響きます。まさに不安的中の感じです。それでも、第4楽章はよい出来でした。両端楽章がよい演奏で全体として、まあまあの感じですね。ちなみに第1ヴァイオリン以外の3人は以前からのメンバーです。チェロの女性奏者アンナ・ゴレロヴァは深くて美しい響きです。内声部の2人は以前もそうでしたが、技術以前の問題として、おとなしい弾き方です。もっと内声部の音を響かせてほしいところです。時折聴こえてくる響きは美しいので、もっと内声部を響かせてくれれば、このブラームスもずい分、印象が変わったと思います。
前半最後のヴィトマンの弦楽四重奏曲 第3番「狩の四重奏」は現代作曲家の作品ですが、これは4人のバランスも響きも素晴らしくて、圧倒的な演奏でした。曲はもちろん、ノントナールですが、裏に調性音楽が隠れているという風情の音楽で、聴きやすい現代音楽です。聴きやすいというのが最近の現代音楽の傾向なんでしょうか。ちなみにヴィトマンの作品を聴くのは初めてですが、彼のクラリネット演奏は聴いています。ハーゲン・カルテットと共演したモーツァルトとブラームスのクラリネット五重奏曲は最高に素晴らしい演奏でした。来年初めにも来日するので、聴きたかったのですが、ほかのコンサートと日程がバッティングしたのであきらめました。
後半のチャイコフスキーの弦楽四重奏曲 第1番は前半のブラームスとは一転して、4人の響きのバランスもよくなって、とても美しい演奏。いかにもチャイコフスキーらしいロシア風の抒情が満喫できました。とりわけ、長大な第1楽章は見事な演奏でした。そして、有名な第2楽章のアンダンテ・カンタービレはその美しさに陶然としてしまいます。名曲アワー的ではありますが、美しいものは美しいのですから、どっぷりと名曲に浸りきりました。第3楽章も切れがよく、アンサンブルもきれいで満足。第4楽章は勢いのあるフィナーレでチャイコフスキー節をたっぷりと味わいました。
こうなると、アンコールも名曲アワー。ボロディンの弦楽四重奏曲 第2番の第3楽章(ノクターン)です。甘いメロディーに魅了されました。なんの文句もありません。
今日のプログラムは以下です。
弦楽四重奏:アトリウム・カルテット
ボリス・ブロフツィン(セルゲイ・マーロフから変更) vn アントン・イリューニン vn
ドミトリー・ピツルコ va アンナ・ゴレロヴァ vc
ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 Op.51-1
ヴィトマン:弦楽四重奏曲 第3番「狩の四重奏」
《休憩》
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 Op.11
《アンコール》
ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 より、第3楽章アンダンテ ノクターン
最後に予習について触れておきます。
1曲目のブラームスの弦楽四重奏曲第1番は力を入れて予習したかったのですが、時間がなく、以下の2枚だけ聴きました。
エマーソン・カルテット
ブダペスト四重奏団
ブダペスト四重奏団の見事な演奏に感動しました。ブッシュ四重奏団、アマデウス四重奏団、メロス・カルテット、ハーゲン・カルテットあたりも聴きたかったんですけどね。ブラームスの素晴らしい音楽にたっぷり浸れなくて残念です。
2曲目のヴィトマンは予習すべきCDを持っていません。
3曲目のチャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番は以下の2枚を聴きました。
エマーソン・カルテット
ボロディン弦楽四重奏団
ボロディン弦楽四重奏団の見事な演奏に魅了されました。なお、このところ、エマーソン・カルテットでどの曲も予習しているのは、彼らのCDボックスを購入したからです。
エマーソン弦楽四重奏団 DG録音全集(51CD+ボーナスCD)
何とか、この51枚のCDを聴き尽そうと躍起になっているんです。録音の音質もよく、いずれの演奏驚くほど高い水準ばかりです。
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