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有無を言わせぬ庄司紗矢香の空前絶後の凄演!ゲルギエフ&マリインスキー歌劇場管弦楽団@サントリーホール 2017.12.6

いやあ、凄い庄司紗矢香の演奏でした。第2楽章と第4楽章は爽快とも豪快とも言える演奏で素晴らしかったのですが、このあたりは今どきの腕達者なヴァイオリニストならば、それなりに説得力のある演奏をするのは当たり前かもしれません。本当に素晴らしかったのは第1楽章と第3楽章の深くて精神性の高い表現でした。第1楽章の冒頭の暗闇から浮かび上ってくるような響きですぐさま、魅了されます。そのまま、哲学的とも瞑想的とも言える見事な演奏が続き、その精神性の高さに強く心を揺さぶられます。いきなりの感動で涙が滲みます。第3楽章の主題の抒情的な表現にも強く心を打たれて、感動の涙が浮かびます。庄司紗矢香の魂の叫びが聞こえてくるような凄絶な演奏です。サポートするゲルギエフはショスタコーヴィチの演奏を得意にする巨匠ですから、いつものごとく、素晴らしい演奏です。ただ、いつものような暗黒のような暗さは影を潜めています。庄司沙矢香の陰りはあるけれど、光も差しているような表現に合わせているようです。ゲルギエフの引き出しの多い、こういうサポートも見事です。そして、ゲルギエフの精妙な指揮とそれにこたえるマリインスキー歌劇場管弦楽団の高いレベルのアンサンブルをベースに庄司沙矢香のヴァイオリンが冴え渡ります。その極限まで抑えたピアニッシモはまさに消え入るような響きでオーケストラの響きと溶け合います。saraiは幸い、正面の2列目で聴いていたので、その繊細なヴァイオリンの響きが聴き取れましたが、後ろのほうの席まで響きが伝わったのかは不明です。ある意味、室内楽的な表現の演奏だったので、こういう大ホールで全聴衆を対象にするには難しいのではないかと思えた表現でした。また、超感動的な演奏でしたが、まだ、のびしろも残しているようにも感じました。特に第3楽章の終盤に置かれたカデンツァの前半のピアノの部分の表現がつめきれていないと思えたところです。ここはもっと感動的に弾いてもらいたかったと感じました。カデンツァの後半の盛り上がりは素晴らしかったので、前半の表現が今ひとつだったのは残念なところでした。しかし、逆に言えば、まだ、庄司紗矢香はさらなる飛躍への道も残しているとも言えます。とは言え、今日の彼女の演奏はsaraiの音楽受容力を凌駕するような高みに達していて、その深い精神性を完全に理解したとは言い難いものでした。ですから、むしろ、彼女の表現を完全に理解するために精進すべきはsaraiのほうだとも痛感させられました。saraiをインスパイアするような庄司紗矢香の高い精神性の演奏に深く感動しました。今年、聴いた音楽で最高であることはもちろん、ここ数年来聴いたコンサートで最高の演奏でした。

そうそう、庄司紗矢香のアンコール曲は今日は普通のアンコール曲のバッハの無伴奏パルティータ。いつももっと凝った選曲ですが、今日はオーソドックスです。彼女の無伴奏は何度も聴いていますが(実演やCD)、結構、個性的な表現であまりsaraiの好みではありません。今日もいつものパターンの演奏です。でも、今日はこの個性的な表現にも慣れてきたのか、それほどの違和感はなく、すんなりと聴けます。こういう個性的な表現もありかなと少し納得しました。みんなスタンダードな演奏ばっかりだったら、つまらないかもしれません。庄司紗矢香のバッハも考え抜いた上での表現なのでしょう。現代は色んなバッハ演奏が許容される時代なので、彼女のバッハももっと聴き込んでみましょう。

後半のベルリオーズの幻想交響曲は前半の庄司紗矢香のショスタコーヴィチで精神的体力を使い果たしたので、しっかりと聴き取る自信はありませんでしたが、それは杞憂でした。まあ、何て素晴らしい演奏だったことでしょう。ゲルギエフの精妙な棒(実に小さなタクト!)のもと、マリインスキー歌劇場管弦楽団の妙なる響きがとっても魅惑的でした。交響曲と言うよりも歌のないオペラを聴いているようなものです。音色が鮮やかで、魅惑的なストーリー性に満ちています。何よりもゲルギエフがオーケストラを完全にコントロールしていて、彼の表現したい内容が完璧にオーケストラの音として実現できています。ゲルギエフがウィーン・フィルを振ったCDを予習しましたが、それは今日の演奏に比べると何と未成熟な演奏だったでしょう。オーケストラとしてはウィーン・フィルのほうが数段上でしょうが、ゲルギエフがその思いを表現するためにはこのマリインスキー歌劇場管弦楽団のほうが数段高いところにあります。第1楽章の美しい表現、第2楽章の舞踏会のシーンの魅惑的な表現、第3楽章の自在な表現、第4楽章の断頭台への行進の切れのある表現、そして、圧巻だったのは第5楽章。いつもはエピローグとして聴きますが、今日は堂々たるフィナーレとして聴けます。それほど、際立った演奏でした。

前半の冒頭のリムスキー=コルサコフの組曲「金鶏」もベルリオーズの幻想交響曲同様にゲルギエフの精妙な指揮が冴え渡っていました。安定して、美しい響きの弦をベースに木管の自在な表現を引き出していたのはゲルギエフの力でしょう。これはまさにオペラから抜粋した組曲ですから、オペラを聴いているような感覚だったのは当然のことです。この曲を聴いていて、何か心にひっかかるところがあります。そのうちに思い当りました。木管の自在な表現はまるでストラヴィンスキーの《火の鳥》のようです。オペラというよりも、この組曲はそのままバレエ音楽になりそうです。リムスキー=コルサコフの美しい響きはそのまま、ストラヴィンスキーに引き継がれたのでしょうか。そんなことを思いながら、素晴らしい演奏を聴いていました。

そして、なんと、アンコール曲はそのストラヴィンスキーの《火の鳥》でした。もちろん、最高に素晴らしい演奏でした。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  ヴァイオリン:庄司紗矢香
  管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

  リムスキー=コルサコフ:組曲「金鶏」
  ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 Op.77
   《アンコール》 J. S. バッハ:無伴奏パルティータ 第2番より「サラバンド」 BWV1004

   《休憩》

  ベルリオーズ:幻想交響曲 Op.14

   《アンコール》
    ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」から子守唄~終曲


ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の予習は以下のCDだけを聴きました。

 バティアシュヴィリ、サローネン指揮バイエルン放送交響楽団

バティアシュヴィリのヴァイオリンがとても素晴らしかったのですが、今日の庄司紗矢香はそんなレベルの演奏ではありませんでした。庄司紗矢香がゲルギエフと再録音すれば、素晴らしいCDになるでしょう。でも、現役のヴァイオリニストはCDよりもやはり実演を聴くのが一番ですね。所詮、CDは過去の記録に過ぎません。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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