FC2ブログ
 
  

ベザイデンホウトが綴るモーツァルトの“鋭敏な知性”@東京文化会館 小ホール 2018.3.19

ヨーロッパではフォルテピアノで人気のクリスティアン・ベザイデンホウトのオール・モーツァルト・プログラムを聴きました。実は最近まで彼のことはよく知らなかったのですが、昨年夏のザルツブルク音楽祭でモーツァルトのピアノ協奏曲を聴き、大いに興味を持ちました。そのときはスタインウェイのピアノだったので、彼の本領がさらに発揮されるであろうフォルテピアノのコンサートを聴くことにしました。そして、その期待は十分、応えられました。

ベザイデンホウトが弾くフォルテピアノは蝶のように軽やかです。音量は小さいのですが、かえって、耳を凝らして聴こうとするので、集中力が高まります。そして、1800年頃のオリジナルのフォルテピアノをもとに2002年にチェコで作成されたレプリカのフォルテピアノは繊細極まりない響きで聴くものを惹き付けます。その繊細さの先に感じるのはベザイデンホウトの“鋭敏な知性”が表現するモーツァルトの芸術の奥深さです。モーツァルトがいかに“鋭敏な知性”で音楽を生み出していたのかということがまざまざと感じ取れます。モーツァルトの音楽のシンプルさに惑わされてしまいますが、純粋知性とでも言うべきものがその音楽の源にあるようです。それが作曲当時の響きを再現するフォルテピアノの繊細さを通して、伝わってきました。

前半のプログラムの初めに弾かれたピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330はシンプルな楽曲ですが、フォルテピアノで聴くとそのシンプルさがさらにピュアーに響きます。この曲はモダン・ピアノではクララ・ハスキルの絶対的な名演があります。1957年8月のザルツブルク音楽祭とエディンバラ音楽祭でのライヴ録音です。モーツァルトのピアノ協奏曲で数々の名演を残したクララ・ハスキルですが、それらも含めても彼女のモーツァルト演奏の最高峰に挙げられるのがこのピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330の演奏です。しかし、ベザイデンホウトのフォルテピアノの演奏はそれとはまた別世界の軽やかさでこの曲のもう一つの音楽的真実を表現します。両端楽章は軽やかさの極致ですし、中間楽章は内省的な面が切々と語られます。フォルテピアノならではの演奏に納得です。

続くピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332では、フォルテピアノの限界まで踏み込んだような響きでダイナミズムを表現します。モーツァルトが和声の表現を追求して、この強弱のつけにくいフォルテピアノで厚い響きを作り出したことが分かります。ベザイデンホウトのフォルテピアノの演奏は彼の“鋭敏な知性”でモーツァルトの真髄に迫っています。見事なものです。

後半のプログラムでもベザイデンホウトは手を緩めません。ピアノ・ソナタ第3番 変ロ長調 K.281の瑞々しい表現は見事です。モーツァルトの初期ソナタの素晴らしさを十全に示してくれます。

最後に演奏したピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K.457はデモーニッシュさではなく、軽やかな哀愁で魅了してくれます。これがフォルテピアノでのこの名曲の表現なんですね。これまた納得です。

シンプルなモーツァルトのピアノ・ソナタ4曲だけのコンサートでしたが、滅多にないような集中力で演奏に耳を傾けました。演奏時間も短かったのですが、凝縮した内容のコンサートで大変、満足しました。

アンコール曲はすぐに分かりました。普通はこれがモーツァルトのピアノ曲とは判じがたい曲ですが、実は昨年夏のザルツブルク音楽祭でベザイデンホウトがアンコールに弾いた曲だったんです。モーツァルトの組曲 ハ長調 K.399です。彼の愛奏曲なんでしょう。ザルツブルク音楽祭ではスタインウェイだったので、フォルテピアノでは初めて聴きます。ザルツブルク音楽祭で聴いたときはてっきりフレンチ・バロックだろうと思いましたが、後でベザイデンホウトにサインをもらったときにアンコール曲は何だったのって訊いたら、最初はモーツァルトのSuiteって答えたので、saraiがエッと訊きなおしたら、K.399と答えてくれたんです。今日はさすがにすぐにモーツァルトだと分かりましたが、やはり、ヘンデルの組曲のような音楽ですね。フォルテピアノの特性が活かされた素晴らしい演奏でした。
2曲目のアンコール曲、モーツァルトのピアノソナタ第9番 ニ長調 K. 311の第2楽章はとりわけ、美しい演奏でうっとりと聴き入りました。今日の最高の演奏だったかもしれません。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  フォルテピアノ:クリスティアン・ベザイデンホウト

  モーツァルト:
   ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330
   ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332

   《休憩》

  モーツァルト:
   ピアノ・ソナタ第3番 変ロ長調 K.281
   ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K.457

   《アンコール》

  モーツァルト:組曲 ハ長調 K.399(385i)より、第2曲《アルマンド》
  モーツァルト:ピアノソナタ第9番 ニ長調 K. 311 (284c)より、第2楽章 アンダンテ・ウン・エスレッシオーネ


予習についてまとめておきます。

と言っても、すべてベザイデンホウトのフォルテピアノの演奏のCDです。K.332とK.281は特別にハイレゾ(FLAC 24-88.2)にアップコンバートしたものを聴きました。
ベザイデンホウトのフォルテピアノはハイレゾ(疑似ですが)で聴くとその演奏の繊細な美しさが醸し出されて最高です。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR