歳とともにバッハの音楽に傾倒していく自分を感じていますが、中心は鍵盤楽器音楽、宗教音楽(声楽曲)でこれに無伴奏の器楽曲や室内楽、管弦楽曲が加わります。鍵盤楽器音楽はピアノが中心でチェンバロも若干聴きます。しかし、バッハと言えば、パイプオルガンも重要です。これが今まで欠けていました。今日聴いてみると、ピアノやチェンバロと違って、パイプオルガンは音色が多彩です。同じ鍵盤楽器でも実に複雑な味わいが感じられます。
前半のプログラムはバロックの色んな作曲家のオルガン曲が続き、最後はJ.S.バッハの有名な小フーガに収斂します。J.カバニリェスのイタリア風コレンテは聴き映えします。ブクステフーデの《わが愛する神に》は美しいコラール変奏曲です。クープランの「修道院のためのミサ曲」もとりわけ、聖体奉挙の美しさが心に沁みます。J.S.バッハの小フーガは速過ぎるようなテンポですが、そのテンポで美しく弾き切ります。見事な演奏です。
後半はJ.S.バッハのクラヴィーア練習曲集第3巻の圧縮版のような構成になっています。クラヴィーア練習曲集は第1巻がパルティータ集、第2巻がイタリア協奏曲とフランス風序曲、第4巻がゴルトベルク変奏曲というチェンバロのための鍵盤楽器音楽ですが、第3巻はオルガンのための鍵盤楽器音楽です。変ホ長調の前奏曲に始まり、21曲のコラール、4曲の短いデュエット、最後は変ホ長調のフーガで終わります。今日はこのうち、変ホ長調の前奏曲とフーガを最初と最後に配し、間に4曲のコラールを演奏します。ただし、コラールのうちの3曲はクラヴィーア練習曲集第3巻からですが、1曲は別のコラールです。このコラールはマタイ受難曲の第1部の終曲のコラールにも用いられたものです。
前奏曲は壮麗に演奏されます。続くコラール(マタイ受難曲にも用いられたBWV 622)はしみじみとした演奏で心に響きます。そして、最後のコラール(BWV 671)は華麗なバロック建築を思わせるスケールの大きな演奏です。ここでいったん、ステージを離れたコープマンが満を持して、オルガン席に戻ります。終曲のフーガは賛美歌の内容からしばしば「聖アン」と呼ばれます。この名曲をコープマンは壮麗な伽藍のごとく、神々しく演奏します。圧巻のフィナーレでした。
今日のプログラムは以下です。
オルガン:トン・コープマン
J.C.ケルル:バッターリア
J.カバニリェス:イタリア風コレンテ
D.ブクステフーデ:プレリューディウム 二長調 BuxWV 139
わが愛する神に BuxWV 179
フーガ ハ長調 BuxWV 174
F.クープラン:「修道院のためのミサ曲」より 奉納唱、聖体奉挙
C.Ph.E.バッハ:ソナタ 二長調Wq 70-5
J.S.バッハ:フーガ ト短調 BWV 578(小フーガ)
《休憩》
J.S.バッハ:前奏曲 変ホ長調 BWV 552
おお人よ、汝の罪の大いなるを嘆け BWV 622
永遠の父なる神よ(キリエ) BWV 669
世の人すべての慰めなるキリスト” BWV 670
聖霊なる神よ(キリエ) BWV 671
フーガ 変ホ長調 BWV552
《アンコール》
J.S.バッハ:「われ汝に呼ばれる、主イエス・キリストよ」BWV 639
D.スカルラッティ:ソナタ ト長調
J.スタンリー:ヴォランタリー より
最後に予習ですが、ほとんどの曲はコープマンの演奏で聴きました。どれも安定した見事な演奏です。
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