後半は大好きな《詩人の恋》です。一部、声が割れたこともありますが、美しくて、多彩な表現は素晴らしくて、本当に満足しました。第1曲の《うるわしき5月に》は期待通りの歌唱でしたし、ほかの曲も挙げていけば切りがないほどです。特にリリックな表現が素晴らしくて、テノールならでは歌唱が聴けました。満足以外の何ものでもありません。
アンコールはさらに美しい歌唱が聴けました。ハイネの詩にシューマンが曲をつけたものが続きます。そして、曲の紹介なしに歌い始めたのは、大好きなミルテの花の第1曲 献呈です。これはハイネではなく、リュッケルトの詩ですね。今回、シューマンの歌曲を予習していたときに不意にどうしようもなく、ミルテの花を聴きたくなりました。取り出したのは、バーバラ・ボニーが4曲だけ歌った録音です。献呈、くるみの木、睡蓮の花(ハスの花)、ズライカの歌。どれも澄み切った声で素晴らしい歌唱です。saraiの愛聴盤です。ミルテの花を全曲歌ってくれなかったのが残念ですが、それをもってもあまりある美しい歌唱です。特にくるみの木の素晴らしさはどうでしょう。アンコールではハイネの詩による睡蓮の花を歌うと、予想していましたが、外れました。やはり、歌うなら、シューマンが結婚のプレゼントにしたミルテの花、それも献呈が一番でしょう。ボンにあるロベルト・シューマンとクララの美しいお墓の前でも聴いて、感動しました。そのときもバーバラ・ボニーの歌でした。今日は本来の男声で聴けて、満足です。アンコールの最後にもうシューマンの曲はないと言いながら(献呈の後では歌う曲はありませんね)、彼のお気に入りのシューベルトの《夜と夢》を歌ってくれました。シューマンは特別に好きですが、シューベルトも負けず劣らず好きです。でも、この曲はsaraiの範疇にはいっていませんでした。のっけらレガートと言うよりも持続音の美しさにガーンとやられます。シューベルトにこんな美しい曲があったのですね。素晴らしいボーナスがいただけました。
今日から、クリストフ・プレガルディエンはsaraiの好きな歌手に仲間入りです。機会があれば、これからも積極的に聴きましょう。
今日のプログラムは以下です。
テノール:クリストフ・プレガルディエン
ピアノ:ミヒャエル・ゲース
シューマン:5つの歌曲 Op.40(詩:アンデルセン、シャミッソー)
シューマン:リーダークライス Op.39(詩:アイヒェンドルフ)
《休憩》
シューマン:詩人の恋 Op.48(詩:ハイネ)
《アンコール》
シューマン:リーダークライス Op.24より 第9曲 ミルテとばらの花を持って
シューマン:5つのリートと歌 Op.127より 第2曲 あなたの顔は
シューマン:ベルシャザル Op.57
シューマン:ミルテの花 Op.25より 第1曲 献呈
シューベルト:夜と夢 D827
最後に予習について、まとめておきます。
シューマンの《5つの歌曲 Op.40》を予習したCDは以下です。
ペーター・シュライヤー、ノーマン・シェトラー 1972年録音
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、クリストフ・エッシェンバッハ シューマン歌曲大全集 1974~76年録音
若き日のシュライヤーの気持ちの乗った歌唱が素晴らしく、ピアノのシェトラーも美しい演奏を聴かせてくれます。フィッシャー=ディースカウはコメントが必要でない美しい声を聴かせてくれますが、シュライヤーほどの気持ちは感じられません。エッシェンバッハのピアノは素晴らしいです。
シューマンの《リーダークライス Op.39》を予習したCDは以下です。
ペーター・シュライヤー、ノーマン・シェトラー 1972年録音
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、クリストフ・エッシェンバッハ シューマン歌曲大全集 1974~76年録音
上記と同じ感想です。フィッシャー=ディースカウはこちらの表現は素晴らしいです。
シューマンの《詩人の恋》を予習したCDは以下です。
フリッツ・ヴンダーリッヒ、フーベルト・ギーゼン 1965年 ミュンヘン セッション録音
フリッツ・ヴンダーリッヒ、フーベルト・ギーゼン 1966年9月4日、エディンバラ、アッシャー・ホール ライヴ録音
ジェラール・スゼー、アルフレッド・コルトー 1956年 モノラル録音
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、イェルク・デームス 1957年 モノラル録音
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、ウラディミール・ホロヴィッツ 1976年 カーネギーホール85周年記念演奏会 ライブ録音
ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、アルフレード・ブレンデル 1985年 セッション録音
ペーター・シュライヤー、ノーマン・シェトラー 1972年録音
伝説のヴンダーリッヒを聴きました。青春の揺れ動く情熱、そして、情感のあふれた歌唱に感動しました。1965年のDGの録音、1966年の死の13日前のラストリサイタル、いずれも素晴らしい歌唱です。ほかにも録音が残っているようですから、もっと聴きたいものです。スゼーは古いモノラル録音ですが、音質自体はよく、これも素晴らしい歌唱に感動しました。それにコルトーのピアノが何とも素晴らしいです。フィッシャー=ディースカウも外すわけにはいきません。初めて、《詩人の恋》を聴いたのは彼のレコードでした。学生時代に第1曲の《うるわしき5月に》に憑りつかれていたのはフィッシャー=ディースカウの美しい歌唱を聴いたからです。今回は3つの録音を聴きましたが、それぞれ表現が異なりますが、美しい歌唱であることは変わりません。それにピアノがそれぞれ凄いです。イェルク・デームスの瑞々しい演奏、ホロヴィッツの硬質のタッチの誰にも真似のできない演奏、ブレンデルの美し過ぎる響きの演奏。やはり、この曲はピアノも伴奏ではなく、主役です。シュライヤーは若気の至りか、ちょっと前のめりの表現もありますが、端正な美しさは聴き惚れます。ここでもシェトラーのピアノの美しさが見事です。《詩人の恋》は素晴らしい演奏があまたあります。これでも聴き足りません。
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