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素晴らしき隠れ合唱隊?・・・フランコ・ファジョーリ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2018.11.22

カウンター・テナーの若手の代表格、フランコ・ファジョーリが遂に初来日。素晴らしい声、アジリタを聴かせてくれました。4年前に一度、ザルツブルグ精霊降臨音楽祭でのリサイタルを聴いていますが、そのときは最後のカストラート、Vellutiをテーマにしていました。で、そのVellutiのために書かれたマイヤベーアとロッシーニのオペラからのレシタティーボとアリアが歌われました。今日はオール・ヘンデルです。ザルツブルクのモーツァルテウム大ホールでは2階席の一番後ろで聴いたこともあり、あまり、響きがよくなかったのですが、今日は最高でした。ヘンデルの名アリアを8曲、アンコールを入れると10曲も歌ってくれたのが嬉しいところです。ヘンデルの作った旋律はとても美しいですからね。ともかく、ザルツブルクを大きく上回る歌唱に大満足でした。観衆も東京の観衆は最高です。ファジョーリもとても喜んでいました。

早速、1曲目は歌劇『ロデリンダ、ロンバルドの王妃』より「あなたはどこにいるのか、愛しい人よ?」で美しくて、抒情的な表現で魅了してくれます。
2曲目の歌劇『オレステ』より「激しい嵐に揺り動かされても」ではアジリタが爆発! 素晴らしいテクニックです。男バルトリと異名をとるのもわかりますね。
3曲目の歌劇『リナルド』より「愛しい妻、愛しい人よ」では、また、しっとりとした歌声を聴かせてくれます。曲も最高にいいです。
4曲目の歌劇『リナルド』より「風よ、暴風よ、貸したまえ」では、この日一番のアジリタが炸裂し、会場も大盛り上がりです。

後半は、5曲目の歌劇『イメネーオ』より「もしも私の溜息が」のしみじみとした歌いまわしに惹きこまれます。
6曲目の歌劇『忠実な羊飼い』より「この心にきらめくのを感じる」では終盤の見事な高音の歌唱に圧倒されます。
7曲目の歌劇『アリオダンテ』より「嘲るがいい、不実な女よ、情人に身を委ねて」はこの日、最高の歌唱でした。騎士アリオダンテの一途な思いがひたひたと伝わってきます。こんなに素晴らしいのだから、ファジョーリのアリオダンテでこの歌劇『アリオダンテ』全体を聴きたいものです。声の質、響きがこのアリオダンテ役にぴったりです。ちなみにこの歌劇『アリオダンテ』はsaraiが初めて実演で聴いたヘンデルのオペラです。もちろん、バロックオペラも初めてでした。そういうわけで思い入れも一入なんです。
最後の歌劇『セルセ』より「恐ろしい地獄の残酷な復讐の女神が」はファジョーリの気魄のこめられた歌唱が圧巻でした。

アンコールは嬉しいことに、素晴らしかった歌劇『アリオダンテ』よりのアリアです。うーん、やっぱり、いいね。
アンコール2曲目は2階席から手製の団扇で声援を送る女性によほど感銘を受けたのでしょう。どうやら、団扇にはヴィンチの歌劇『アルタセルセ 』が描かれていたようです。即席で伴奏もなしにアリアの一部を披露して、やんやの喝采を受けます。そういえば、以前、ヨーロッパでジャルスキー、ツェンチッチ、サバドゥス、ファジョーリ、ミネンコの5人の人気CTがこの歌劇に出演して、話題になりましたね。
で、アンコールのシメはお馴染みの「私を泣かせてください」。ファジョーリが客席にドゥー・ユー・ノウ?と訊くと、間髪を入れずにイエスの声がこだまします。1コーラスはファジョーリが歌い、何と2コーラス目は客席の観衆が歌います。まるでプロの女性合唱団のような美声です。この曲はソプラノの曲ですから、やはり、女性が歌うと素晴らしいですね。saraiは聴き惚れてしまいました。最後の3コーラス目はファジョーリと隠れ女性合唱隊の歌声。まるでリハーサルでもやったかのように決まっていました。日本の音楽水準も上がりましたね。それに若い女性にこんなにCTファン、バロックファンがいることが分かり、熟年男性としては嬉しい限りです。そのうちに日本でも、スーパーキャストのヴィンチの歌劇『アルタセルセ 』が聴けるんじゃないでしょうか。熟年のsaraiも駆け付けますよ。

今日のキャストとプログラムは以下です。

  カウンター・テナー:フランコ・ファジョーリ
  古楽器オーケストラ:ヴェニス・バロック・オーケストラ
  

  ヴィヴァルディ:シンフォニア ト長調 RV146
  ヘンデル:歌劇『ロデリンダ、ロンバルドの王妃』より「あなたはどこにいるのか、愛しい人よ?」
  ヘンデル:歌劇『オレステ』より「激しい嵐に揺り動かされても」
  ヴィヴァルディ:コンチェルト ト短調 RV156
  ヘンデル:歌劇『リナルド』より「愛しい妻、愛しい人よ」
  ヘンデル:歌劇『リナルド』より「風よ、暴風よ、貸したまえ」

   《休憩》

  ヘンデル:歌劇『イメネーオ』より「もしも私の溜息が」
  ヘンデル:歌劇『忠実な羊飼い』より「この心にきらめくのを感じる」
  ヴィヴァルディ:歌劇『ジュスティーノ』よりシンフォニア ハ長調 RV717
  ヘンデル:歌劇『アリオダンテ』より「嘲るがいい、不実な女よ、情人に身を委ねて」
  ジェミニアーニ:コンチェルト・グロッソ ニ短調(コレッリのヴァイオリン・ソナタ「ラ・フォリア」op.5-12による)
  ヘンデル:歌劇『セルセ』より「恐ろしい地獄の残酷な復讐の女神が」

   《アンコール》
  ヘンデル:歌劇『アリオダンテ』より「暗く不吉な夜の後で」
  ヴィンチ:歌劇『アルタセルセ 』よりアリアの一部
  ヘンデル:歌劇『リナルド』より「私を泣かせてください」

予習はフランコ・ファジョーリのヘンデル・アリア集のCDで聴きました。素晴らしいCDです。
オーケストラの予習はイ・ムジチ合奏団の色んなCDから聴きました。やはり、イ・ムジチの演奏は明るくて、颯爽としています。イタリアの青空を吹き抜ける風のようです。



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名人たちの饗宴、クリスマス・オラトリオ バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2018.11.23

いやはや、これほどの演奏が聴けるとはね。クリスマス・オラトリオはマタイ受難曲のようなドラマチックさはありませんが、その代わり、多彩な音楽が満載でとても楽しめます。それを分からせてくれる素晴らしい演奏でした。
まずはいつもながら、バッハ・コレギウム・ジャパン(以下、BCJと略します)の合唱が素晴らしいです。マタイ受難曲と同様にコラールの美しさが格別です。マタイ受難曲のように劇的要素がないにもかかわらず、胸にジーンと迫るものがあり、癒される思いになります。それにマタイ受難曲と違って、様々な形式のコラールが楽しめます。
独唱は4人とも絶好調でしたが、ソプラノのハナ・ブラシコヴァの透明で可憐な歌唱に魅了されました。いっぺんにファンになってしまいました。昔、レコードで聴いたレリ・グリストのことを思い出しました。テノールのザッカリー・ワイルダーの力の抜けた柔らかい歌唱にも好感が持てました。
BCJの弦と管の奏者たちの名人芸は恐れ入りました。オブリガートの美しさはたとえようのない素晴らしさ。いつものBCJのメンバーに加えて、エキストラのメンバーも豪華でした。ヴァイオリンの若松夏美、フラウト・トラヴェルソの菅きよみとオーボエの三宮正満は名人です。三宮正満のオブリガートはオーボエ・ダモーレだったのかな。魅惑的な音色でした。
BCJの弦楽合奏も美しさの極みでした。
全体を束ねる鈴木雅明はまさに人間国宝並みの貫禄で、文句なし。

楽曲の演奏内容は聴きどころ満載で何を書いたらいいのか分かりません。冒頭の第1曲 合唱「歓呼の声を放て、喜び踊れ」でトランペットを含めた祝祭的な高揚感で盛り上がります。第5曲 コラール「如何にしてわれは汝を迎えまつり」で感銘を受け、第9曲 コラール「ああ、わが心より尊びまつる嬰児イエスよ」で感動的に第1部が終了。
第2部は第10曲 シンフォニアの素晴らしい演奏で始まり、コラールやアリアで感銘を受け続けます。この調子で最後の第6部の第64曲 コラール「今や汝らの神の報復はいみじくも遂げられたり」の輝かしい管弦楽としみじみしたコラール合唱まで名演が繰り広げられました。バッハを思いっ切り、満喫し、これ以上の満足感はないほどです。
昨日も同じ東京オペラシティ コンサートホールでファジョーリの歌唱でヘンデルを満喫しましたが、今日のバッハはさらに素晴らしいものでした。日本でこれほどのコンサートが続くとは、音楽ファンにとって、幸せ以上のものです。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ: ハナ・ブラシコヴァ
  アルト: クリント・ファン・デア・リンデ
  テノール: ザッカリー・ワイルダー
  バス: クリスティアン・イムラー
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
   コンサート・マスター:若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ:菅きよみ
   オーボエ:三宮正満
   ホルン:福川伸陽
   トランペット:ギイ・フェルベ?

  J.S.バッハ:クリスマス・オラトリオ BWV248 全6部(計64曲)

   第3部と第4部の間に《休憩》

最後に予習について、まとめておきます。

 カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団 1965年
  グンドゥラ・ヤノヴィッツ,クリスタ・ルートヴィヒ、フリッツ・ヴンダーリヒ,フランツ・クラス
  トランペット:モーリス・アンドレ

本命盤です。とりあえずはこれを聴いておかないとね。何と言っても、フリッツ・ヴンダーリヒが素晴らしい。ピリオド演奏が全盛の現代でも、この名演の価値は不変です。


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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

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