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究極のドビュッシー《花火》 イリーナ・メジューエワ・ピアノ・リサイタル@東京文化会館 小ホール 2018.12.1

一昨日の河村尚子の「ワルトシュタイン」も凄い演奏でしたが、今日のイリーナ・メジューエワのドビュッシーも凄い演奏でした。とりわけ、最後の前奏曲集 第2巻の終曲、《花火》の驚異的な演奏にはびっくりしてしまいました。こんな凄いドビュッシーを聴いたのは初めてです。

実はイリーナ・メジューエワのピアノは初聴きです。前から聴きたいとは思っていましたが、なかなか機会がありませんでした。初聴きがオール・ドビュッシー・プログラムというのもよくないなとは思っていましたが、予想に反して、とっても素晴らしい演奏でした。彼女はロシア人ですが、20年前から日本で暮らして、音楽活動も日本中心ですから、日本人ピアニストと言っても構いませんね。ですから、今後も聴く機会は多いと思います。また、楽しみが増えました。

今日のプログラムは3部に分かれていましたが、第1部と第2部以降はまるで別人。第1部の前奏曲集 第1巻を聴いた段階では、ユニークなドビュッシーを弾くので、退屈しないな・・・でも、彼女のドビュッシーはまるでムソルグスキーの《展覧会の絵》みたいで、繊細さやエスプリよりも、大地に根差した構築力のある演奏だと感じます。なかなかいい演奏ではあるものの、きっとこれから彼女のコンサートに積極的に足を運ぶことはないだろうなと思っていました。ところが第2部が始まり、映像 第1集はさらに演奏レベルが上がり、とても素晴らしいです。でも、演奏スタイルは先ほどからのものを踏襲しています。しかし、次の映像 第2集になると、音の響きが急に純度を増します。それまで力強く、低音を奏でていた左手がすっと力が抜けて、右手の美しい響きが前面に出てきます。いやはや、素晴らしい響きに変身します。そして、第2部の最後の《喜びの島》は美しさを極めるような圧巻の演奏です。正直、びっくりしました。休憩中のピアノの調整のせいか、メジューエワの弾き方が変わったのか。メジェーエワの集中力が高まったような気がします。そして、いよいよ、第3部の前奏曲集 第2巻です。さらに純度を増したピアノの響きに魅了されるのみです。《月の光がふりそそぐテラス》あたりから、さらにぐーんと純度が増したピアノの響きは奇跡的な音色になります。最後の《花火》はもう超人的な演奏です。ラストスパートで、あらん限りの力を込めて、美しい響きで奏で上げた音楽の高揚感のいかに凄かったかはもはや言葉では表し尽くせません。驚異的な演奏でした。また、凄いピアニストと出会えました。

アンコールでもその絶好調さは持続して、最後の《月の光》の魅惑的な美しさはこれまで聴いたことのないものです。彼女のドビュッシー以外の音楽も聴いてみたくなりました。不意に頭に浮かんだのはストラヴィンスキーのペトルーシュカです。レパートリーにあるのでしょうか。

今日のプログラムは以下です。

  ピアノ:イリーナ・メジューエワ
   使用楽器:1922年製 NY STEINWAY‘Art-Vintage'(日本ピアノサービス 所有)

  <オール・ドビュッシー・プログラム> 没後100周年記念

  第1部: 前奏曲集 第1巻 Préludes, Premièr Livre
       第1曲 デルフィの舞姫たち Danseuses de Delphes
       第2曲 帆 Voiles
       第3曲 野を渡る風 Le vent dans la plaine
       第4曲 音と香りは夕暮れの大気に漂う Les sons et les parfums tournent dans l'air du soir
       第5曲 アナカプリの丘 Les collines d'Anacapri
       第6曲 雪の上の足跡 Des pas sur la neige
       第7曲 西風の見たもの Ce qu'a vu le vent d'ouest
       第8曲 亜麻色の髪の乙女 La fille aux cheveux de lin
       第9曲 とだえたセレナード La sérénade interrompue
       第10曲 沈める寺 La cathédrale engloutie
       第11曲 パックの踊り La danse de Puck
       第12曲 ミンストレル Minstrels

   《休憩》

  第2部: 映像 第1集 Images I
       水に反映 Reflets dans l'eau
       ラモーを賛えて Hommage à Rameau
       運動 Mouvement

      映像 第2集 Images II
       葉ずえを渡る鐘の音 Cloches à travers les feuilles
       そして月は廃寺に落ちる Et la lune descend sur le temple qui fut
       金色の魚 Poissons d'or

      喜びの島 L'Isle joyeuse イ長調

   《休憩》

  第3部: 前奏曲集 第2巻 Préludes, Deuxième Livre
       第1曲 霧 Brouillards
       第2曲 枯葉 Feuilles mortes
       第3曲 ヴィーノの門 La Puerta del Vino
       第4曲 妖精は良い踊り子 Les Fées sont d'exquises danseuses
       第5曲 ヒースの茂る荒れ地 Bruyères
       第6曲 風変わりなラヴィーヌ将軍 Général Lavine - excentrique
       第7曲 月の光がふりそそぐテラス La terrasse des audiences du clair de lune
       第8曲 オンディーヌ(水の精) Ondine
       第9曲 ピックウィック卿を讃えて Hommage à S. Pickwick Esq. P.P.M.P.C.
       第10曲 カノープ Canope
       第11曲 交代する3度 Les tierces alternées
       第12曲 花火 Feux d'artifice

   《アンコール》

    ピアノのための12の練習曲 Douze Études pour piano から 第11番 《組み合わされたアルペッジョのための練習曲 Pour les arpèges composés》変イ長調
    ベルガマスク組曲 Suite bergamasque から 第3曲 月の光 Clair de Lune 変ニ長調

最後に予習について、まとめておきます。以下のCDを聴きました。

 アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ
  前奏曲集 第1巻 1978録音 ハイレゾ
  前奏曲集 第2巻 1988録音
  映像 第1集 1971録音
  映像 第2集 1971録音
 アンジェラ・ヒューイット
  喜びの島 2011年12月録音 ベルリン、イエス・キリスト教会 (ピアノ/ファツィオリ)

ドビュッシーというとどうしてもミケランジェリのCDに手が伸びてしまいます。《喜びの島》は録音が残っていないので、アンジェラ・ヒューイットがファツィオリのピアノを弾いた演奏を聴きました。いつ聴いてもミケランジェリの演奏は切れ味鋭く、エスプリの香気の高い絶妙な演奏です。アンジェラ・ヒューイットも素晴らしい響きの演奏でミケランジェリのドビュッシー演奏に肉薄するものです。



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       メジューエワ,  

はじけるようなユジャ・ワンのプロコフィエフ ゲルギエフ&ミュンヘン・フィル@サントリーホール 2018.12.2

2年前のコンサートで恋に落ちてしまったユジャ・ワンのコンサートに駆け付けました。そして、ユジャは期待通りのはじけるような演奏でsaraiを満足させてくれました。前回はショスタコーヴィチでしたが、今回のプロコフィエフのような近代ものでは無敵の演奏を聴かせてくれます。特に高速演奏で激しいバルバリズムのパートでは無類の魅力を発揮します。その小さな体がゴムまりのように弾んで、鍵盤を叩きつける様は痛快そのものです。そのヴィジュアルも30歳を超えた今も健在です。ゴールドに輝く露出度の大きなミニドレスはユジャならではファッションです。こういう服装が似合うピアニストはいませんね。まあ、目に毒ですが・・・。第3楽章はユジャの目くるめくような演奏に耳を奪われます。そして、終盤はさらに演奏が高潮して、圧倒的なフィナーレに至ります。とっても聴き映えしました。しかし、これで終わらないのがユジャ。アンコールはさらに刺激的な演奏です。低音の鍵盤を叩きつけ始めます。これって、まさにトッカータだなと思っていたら、本当に曲目もプロコフィエフのトッカータでした。この曲も凄い曲ですね。(ホロヴィッツとアルゲリッチの演奏をCDで昔聴いたことを思い出しました。) そして、最後は18番のs。例の超絶技巧版です。ヴォロドスやサイが弾く曲ですね(ヴォロドスとサイはそれぞれ別の編曲)。今日の演奏はヴォロドスとサイの編曲をもとにさらにユジャ自身の編曲も入れたもののようです。モーツァルトがこれを聴いたら、きっと喜んで、さらに凄い即興演奏を繰り出しそうな気がします。実はこの超絶技巧のトルコ行進曲を生で聴くのは初めてです。遂に生で聴けて嬉しい限りです。

前半のユジャ・ワンのプロコフィエフが大変よかったので、後半のゲルギエフ&ミュンヘン・フィルのブルックナーの交響曲第9番も大変、期待します。ミュンヘン・フィルと言えば、ブルックナーの名演の数々を残してきた名門オーケストラだし、指揮は天下のゲルギエフですからね。しかし、結果はがっくり。第1楽章はまるでパステル画のような淡い色彩の演奏で、特に弦の音が響かずに薄い響きです。第2楽章はようやく響きが轟き始まますが、悪く言えば、賑やかなだけで退屈です。しかし、第3楽章に至り、ようやく、美しい弦の響きが聴けるようになります。終始、金管は響いていましたから、バランスのとれた美しいフレージングの演奏です。ぐっと前のめりになって聴き入ります。しかし、響きは美しいのに心に感動の気持ちが沸いてきません。ゲルギエフの指揮にはブルックナーへのシンパシーが欠けているような気がします。ブルックナーが神に捧げる愛を音楽に込めたのに、指揮しているゲルギエフが無機的な美しさしか表現していないとしか思えません。ゲルギエフはブルックナーに向いていないのでしょうか。とても残念な演奏でした。会場のみなさんは大きな拍手を送っていましたが、オーケストラが退場しようとするとさっさと拍手は終了。みなさんもそんな感じだったのですね。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  ピアノ:ユジャ・ワン
  管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26
   《アンコール》 プロコフィエフ:トッカータ ニ短調 Op.11
           モーツァルト(ヴォロドス、サイ、ユジャ・ワン編):トルコ行進曲

   《休憩》

   ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調


最後に予習について、まとめておきます。以下のヴィデオを見て、そして、聴きました。

 プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
  ユジャ・ワン、クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団 2009年8月11-15日、ルツェルン音楽祭 Blu-ray

今から9年前、ユジャ・ワンが若干22歳だった頃、ルツェルン音楽祭の大舞台で巨匠クラウディオ・アバドに憶することなく、会心の演奏を聴かせてくれています。当時、このヴィデオを見たsaraiは末恐ろしいピアニストが出現したと思ったことを覚えています。今、見直すと、既に現在のユジャ・ワンと変わらぬ演奏がそこにありました。変わったのは今よりもとても若かったことくらいです。彼女の演奏は耳で聴くだけでなく、目で見るとさらに価値が増します。

 ブルックナー:交響曲第9番
  ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団 2001年7月8日 ムジーク&コングレス・ハレ(リューベック) ライヴ収録 DVD

ギュンター・ヴァント89歳、亡くなる半年前の貴重な演奏の映像記録です。ドイツのリューベックで開催されたシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭のコンサートを収録したものです。このコンサートに先立つ半年前の2000年11月には同じコンビの伝説的な来日公演がありました。それもヴィデオ化されていますが、saraiは未聴です。このリューベック公演は素晴らしい演奏です。あの最盛期のミュンヘン・フィルと優劣つけ難い美しい響きの演奏を聴かせてくれます。冒頭ではさすがに老人の表情を見せているヴァントが第3楽章では鋭い目の表情で若々しくもあるのがとても印象的です。素晴らしい指揮です。ヴァントの数々のブルックナー演奏の中でも出色の出来です。今日のゲルギエフ&ミュンヘン・フィルの演奏はもうひとつでしたが、予習でこのDVDに出会えたのが大きな収穫でした。



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       ユジャ・ワン,  

夢の一夜・・・ヒラリー・ハーン バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ@東京オペラシティ コンサートホール 2018.12.3

saraiの10年来の夢が実現しました。本当に夢が叶うとは思っていませんでしたから、この日を迎えたのは感無量です。ヒラリー・ハーンの弾くバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの全曲を聴くのが夢だったんです。そして、今日、かぶりつきの席でヒラリーの最高の演奏を聴かせてもらいました。今日の最後に弾いたシャコンヌの終盤ではまさに万感の思いになって、その素晴らしい響きに涙が滲みました。

ここ10年以上もヒラリーのヴァイオリンを聴いてきて、3年ほど前からの不調ぶりに暗澹たる思いでいました。多分、プライベートなことも影響したんだろうと想像します。彼女も芸術家である前に一人の人間ですから、苦しいこともあったんでしょう。そして、最新盤のバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータのCDを聴いて、ヒラリーが復活したことを確信しました。大きな期待を抱いて、今日のリサイタルに臨みましたが、やはり、ヒラリーは大きく飛躍していました。最初のソナタ第1番の冒頭を聴いただけで、その美しく、冴え渡る響き、さらには、ディテールの美しさに加えて、よく考え抜かれた構成に基づいた演奏であることを実感できました。

今日は全6曲のうちの3曲が演奏されましたが、そのどれもが素晴らしくて、何も言うべき言葉を持ちません。ただ、大好きなヒラリーが完全復活したことが嬉しくて、それがすべてです。ヴァイオリニストでは、庄司紗矢香とリサ・バティアシュヴィリがsaraiのお気に入りでしたが、めでたく、ヒラリーがトップの座に戻りました。明後日の2回目のリサイタルを聴いて、詳細な演奏の中身に触れることにします。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

  バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲コンサート 第1夜

  無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト短調 BWV 1001
   I. アダージョ Adagio
   II. フーガ アレグロ Fuga Allegro
   III. シチリアーナ Siciliana
   IV. プレスト Presto

  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番 ロ短調 BWV 1002
   I. アレマンダ - ドゥーブル Allemanda - Double
   II. コッレンテ - ドゥーブル プレスト Corrente - Double Presto
   III. サラバンダ - ドゥーブル Sarabanda - Double
   IV. テンポ・ディ・ボレア - ドゥーブル Tempo di Borea - Double

   《休憩》

  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV 1004
   I. アレマンダ Allemanda
   II. コッレンテ Corrente
   III. サラバンダ Sarabanda
   IV. ジガ Giga
   V. シャコンヌ Ciaccona

   《アンコール》

     無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV 1003 から 第3楽章 アンダンテ Andante


最後に今回の予習について、まとめておきます。と言っても、もちろん、すべて、ヒラリー・ハーンを聴きました。

  ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ~無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番&第2番、パルティータ第1番 2017年6月 ニューヨーク州 バード大学、Richard B. Fisher Center
  ヒラリー・ハーン バッハ:シャコンヌ(パルティータ第3番&第2番、ソナタ第3番) 1996年6月、12月、1997年3月

ヒラリーが16歳から17歳にかけて録音したデビューアルバムは不朽の価値があります。今回、久しぶりにシャコンヌを聴き、大変、感動しました。昨年録音した無伴奏の完結編はずっと待ち望んだアルバムでしたが、その素晴らしさには感銘を受けました。もちろん、ハイリック・シェリングの厳しい演奏も好きですが、ヒラリーの演奏には華があります。ヴァイオリンの超名曲ですから、名演はそのほかにも目白押しですが、やはり、saraiはヒラリーの演奏に惹かれます。



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       ヒラリー・ハーン,  

ザルツブルク音楽祭:シュテファン・ツヴァイク・センター 1881年~1940年

2017年8月2日水曜日@ザルツブルク/6回目

シュテファン・ツヴァイク・センターStefan Zweig Centreを訪れたところです。チケットを購入後、意外に狭い展示室を見て回ります。残念ながら、すべて、ドイツ語のみの展示になっています。受付の女性が英語の説明書を渡してくれます。以下のページに始まる10ページに渡る展示の概要のインデックスです。

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展示は時代別に整理されています。最初はウィーン時代。 1881年11月28日にウィーンの裕福なユダヤ人の両親のもとで生まれて、ウィーン大学で哲学と文学史を学び、第1次世界大戦のさなか、スイスのチューリッヒに移るまでがウィーンで過ごした時間です。チューリッヒでは『ウィーン新自由新聞』の特派員として活動します。

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文壇にデビューした詩集『銀の弦 Silberne Saiten』です。1901年、ツヴァイク19歳の作です。

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これは当時の自筆稿です。達筆ですね。

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これは第2詩集のDie Frühen Kränze(初期の花輪?)。1906年、ツヴァイク24歳の作です。

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チェス盤と壁には彼の似顔絵があります。チェス盤は彼の有名な作品、《チェスの話》に因んだものでしょうか。

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携帯用タイプライターです。ツヴァイクの愛用品でしょうか。

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ザルツブルク時代。第一次大戦後はチューリッヒからオーストリアに戻り、1919年から1934年までザルツブルクに居を構えます。住居はカプツィーナーの丘Kapuzinerbergのパッシンガー城Paschinger Schlösslでした。展示はザルツブルク時代の前期、1919年から1928年までです。

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1921年著作の《ロマン・ローラン》とツヴァイクと家族のザルツブルク時代の写真です。

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ザルツブルク時代の後期、1929年から、1934年です。

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ツヴァイクの立像があります。なにか、気のいいおじさんという体ですね。

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それではと、わが友シュテファンとsaraiの2ショットです。彼と人生について語り合いたかったのがsaraiの見果てぬ夢です。

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指揮者のブルーノ・ワルターとアルトゥーロ・トスカニーニがカプツィーナーの丘の自宅を訪れたときの貴重な写真です。1930年代初頭のザルツブルク時代のひとこまでした。(左から、トスカニーニ、ワルター、ツヴァイク)

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そして、1934年にナチスの圧力で警察から家宅捜索を受けた翌日、ツヴァイクは長年住んだザルツブルクを永遠に去ります。亡命先のイギリスから、アメリカ合衆国、そして、終の住処となるブラジルに渡ることになります。

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1934年から1940年まではロンドン、バース、ニューヨークと不自由な亡命生活を強いられて、だんだん、精神的な重圧を受けることになります。

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この頃書いた重要な著作、『エラスムスの勝利と悲劇』Triumph und Tragik des Erasmus von Rotterdamです。己の境遇とエラスムスの境遇を重ね合わせています。1934年、ツヴァイク53歳の作です。

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『メアリー・スチュアート』Maria Stuartです。評価の高い歴史小説です。1935年、ツヴァイク54歳の作です。

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リヒャルト・シュトラウスの歌劇『無口な女』Die schweigsame Frauにおいて台本作家として秀逸な才能をツヴァイクは示しますが、時、既にナチス政権下。たった3回の公演で上演は打ち切られます。このコンビで次々に名作を残してくれなかったことは大変残念です。これもナチスの戦争犯罪の一例です。
これはドイツの新聞が告げるオペラの1回目の公演のレビュー記事です。

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そのリヒャルト・シュトラウスの歌劇『無口な女』のリブレットの初版です。上はツヴァイクの短編小説をもとにした映画『燃える秘密』のプログラムです。折も折り、ナチスの国会焼き討ち事件が起こり、この映画をネタに庶民はナチスを揶揄ることになり、ただちに映画は上演禁止。小説も書店から消える羽目になります。

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次はいよいよ、ブラジル時代の展示に移ります。ツヴァイクの余命もいくばくかになります。ツヴァイクの最後の悲劇の日々です。



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宇宙の深淵・・・ヒラリー・ハーン バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ@東京オペラシティ コンサートホール 2018.12.5

saraiの10年来の夢が完結しました。今日もかぶりつきの席でヒラリーの素晴らしい音のヴァイオリン演奏を聴かせてもらいました。今日は前回と違って、落ち着いて、じっくりとヒラリーの演奏に耳を傾けました。柔らかいビロードのような肌触りの美しい響きはバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータを弾くためには最適な響きです。時として高潮する演奏にはsaraiの胸が高鳴りました。この無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータはバッハがこの世に残した最高の器楽器のための音楽、そして、ヒラリーはその音楽を演奏するためにこの世に生まれてきたミューズに思えます。この場でその奇跡とも思える音楽を聴くことができたことは何と言う僥倖でしょう。

ヒラリーの演奏するバッハはその一音、一音の響きがまるで宇宙の深淵をのぞき込むような雰囲気を醸し出します。音楽芸術の究極を垣間見た思いです。ディテールは丁寧に表現され、さらにフレーズはわずかにテンポを揺らしながら、ふくよかな振幅を持って、鼓動していきます。考え抜かれたアーティキュレーションで色付けされた音楽はその構成感も柔らかに枠取りされています。自然な音楽表現にこちらはゆったりと身を預けているだけで、最高の音楽が心と体にしみわたってきます。ヴァイオリンを奏でるヒラリーは曲想に合わせて、体をゆすっています。原初的なダンスのような動きは目にもこころよく感じます。

無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全6曲はすべて素晴らしい演奏でしたが、とりわけ、3曲のソナタの素晴らしさが印象的でした。saraiはむしろパルティータの舞曲の音楽が好みだったのですが、今回のヒラリーの演奏を聴いて、ソナタの胸に迫るような美しさを教えられました。なかでも今日、冒頭に演奏されたソナタ第2番 イ短調 BWV 1003の美しさは際立っていました。第1楽章のグラーヴェの静謐な美しさ、第2楽章のフーガの魂に迫るような熱さ、第3楽章のアンダンテの連続した持続音が粛々と響いてくる心地よさ、そして、第4楽章のアレグロのきびきびとした迫力。すべてがパーフェクトに表現され尽くして、深い音楽の海に心を浸している思いに駆られました。演奏が終わっても、拍手するのがためらわれるような極上の音楽でした。他の2曲のソナタも同様の素晴らしい演奏でした。もちろん、パルティータの演奏も見事でした。既に書いた通り、前回のシャコンヌには感動しました。今日のパルティータ第3番の第2楽章のルールも美しさが際立っていました。しかし、そういう素晴らしいパルティータ以上にソナタの演奏は水際立った美しさでした。

もう一生、味わうことのできないような究極の音楽体験でした。音楽を聴くということではゴールにたどりついた思いです。しかし、全曲を演奏し終わったときのヒラリーの表情は達成感ではなく、ひとつの通過点を過ぎたとでもいうような微妙な表情を浮かべていました。saraiにはゴールでしたが、ヒラリーは洋々たる未来への通過点でしょうか。saraiがヒラリーのゴールを見極めることはないでしょう。それはそれでよいのかも・・・。

今日のプログラムは以下です。

  ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

  バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲コンサート 第2夜

  無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番 イ短調 BWV 1003
   I. グラーヴェ Grave
   II. フーガ Fuga
   III. アンダンテ Andante
   IV. アレグロ Allegro

  無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV 1006
   I. 前奏曲 Preludio
   II. ルール Loure
   III. ロンドー形式のガヴォット Gavotte en rondeau
   IV. メヌエットI-II Menuett I-II
   V. ブレ Bourree
   VI. ジグ Gigue

   《休憩》

  無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV 1005
   I. アダージョ Adagio
   II. フーガ Fuga
   III. ラルゴ Largo
   IV. アレグロ・アッサイ Allegro assai

   《アンコール》

     無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番 ロ短調 BWV 1002 から 第3楽章 サラバンダ Sarabanda


最後に今回の予習について、まとめておきます。と言っても、前回と同じです。

  ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ~無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番&第2番、パルティータ第1番 2017年6月 ニューヨーク州 バード大学、Richard B. Fisher Center
  ヒラリー・ハーン バッハ:シャコンヌ(パルティータ第3番&第2番、ソナタ第3番) 1996年6月、12月、1997年3月

ヒラリーが16歳から17歳にかけて録音したデビューアルバムはその若さ故の天衣無縫の演奏が実に魅力的ですが、驚くべきことにバッハの深淵を感じさせる演奏でもあります。昨年録音した無伴奏の完結編は素晴らしい響きの演奏で最近の円熟ぶりを実感しました。と言っても、彼女はまだ、40歳にもならない若さです。厳しいバッハ演奏を聴かせてくれたヘンリック・シェリングとはまた違った魅力があります。



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       ヒラリー・ハーン,  

ヒラリー・ハーンの思い出・・・初めて聴いたのはいつ?

12月3日・5日のバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲演奏コンサートでsaraiの10年来の夢が完結しました。10年来の夢というのは、ヒラリー・ハーンのコンサートを聴き始めて、10年以上が経過したということです。それでは、ヒラリーの実演を初めて聴いたのはいつのことだったんでしょう。どうも思い出せません。ブログを書き始めてからの記事を見ると、今回の2回のリサイタルを含めて、13回聴いています。初めて、ちゃんとした記事を書いたのは2010年5月30日、東京芸術劇場でペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団と共演したチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のコンサートです。因みにその時のアンコール曲が昨日と同じアンコール曲、パルティータ第1番のサラバンダでした。(ヒラリー・ハーンのすべての記事はブログの左側のインデックスのヴァイオリンのカテゴリから、ヒラリー・ハーンをクリックしてください。) でも、それ以前から、確かにヒラリー・ハーンは聴いています。ブログの記事を探索すると以下の記事の断片を発見しました。

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まずは、ヒラリー・ハーンの来日「ヴァイオリン・リサイタル」。

 1月9日 横浜みなとみらいホール
     イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタから
     アイブス:ヴァイオリン・ソナタから
     バルトーク:ルーマニア民俗舞曲から
     ほか

 saraiは熱狂的なヒラリ-ファンです。でも、最近のヒラリ-は聴く度に演奏の精度を上げ、さらに期待を上回る演奏で感動させてくれます。特に研ぎ澄まされたヴァイオリンの音色はヒラリーにしか出せないもので、その音色で完璧な技巧のもとに彼女独自の解釈した音楽を繰り広げてくれるのですから、まったく脱帽です。
 イザイの曲は技巧的にも難しい曲ですが、なんなく弾きこなし、感銘を受けました。アイブスは今回初めて聴く曲で事前にCDで予習しましたが、これまた、素晴らしい演奏。バルトークはお馴染みの曲で、彼女がどんな風に弾くのか興味がありましたが、意外にバルトークそのものって感じという演奏。
 全体として、非常に充実したリサイタルでヴァイオリンの魅力に満ちており、割に耳慣れない曲が多かったのですが、聴覚が喜ばされる感覚で満足!満足!
 既に来年来日予定のサローネン+フィルハーモニア管とのチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のコンサートのチケットを入手し、待ち遠しく思っています。
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上記は2009年1月9日、横浜みなとみらいホールでのリサイタルですね。

その前はいつだったのか・・・記憶の奥底を探し回ります。ふっと記憶が蘇ります。誰かとヒラリー・ハーンのことを会話しました。だんだん、記憶が明確になってきます。ヨーロッパへの旅に向かう飛行機で隣にたまたま座っていたsaraiよりも随分若い男性との会話です。その男性がとんでもないクラシック音楽好きでヨーロッパにオペラを聴きに行くということで話がお互いのオペラのことで盛り上がったんです。ただ、saraiは普通のメジャーなオペラハウス、彼は地方のマニアックなオペラハウスということで、彼はsaraiに優る音楽愛好家だったんです。彼はスーツを着ていて、荷物は小さなアタッシェケースのみ。アタッシェケースには下着の着替えとPCだけが入っていて、大きな荷物は預けていないそうです。ヨーロッパのローカル空港への飛行機に乗り継ぐときに荷物があると短い乗り換え時間では問題が起こるからとのことです。飛行機の中でもスーツを着ているのは、そのまま、オペラハウスに駆け付けるためだそうです。ヨーロッパでは各地のローカルなオペラハウスを連日、飛行機で駆け巡るのだそうです。印象的だったのは、ベルクのルルを聴くと言っていたことです。その頃はまだ、saraiはベルクのオペラを聴いたことがありませんでした。で、その時、話題に上ったのがヒラリー・ハーンのことでした。ヨーロッパからの帰国後すぐにヒラリーのリサイタルを聴く予定でしたが、彼も聴くと言っていました。また、その会場、オペラシティでお会いしましょうというのがお別れの言葉でした。結局、オペラシティでは彼の姿を見ることはありませんでした。以来、我が家では彼のことを《達人》と呼称して、敬っています。
その旅はどの旅だったのか。2005年のゴールデンウィーク、北イタリアとウィーンを訪れた旅でした。旅の概要は以下です。

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2005年のゴールデンウィークをフル活用して、北イタリア(ベネチア~ボローニャ~フィレンツェ)からウィーンを巡る旅です。
前半の北イタリアは美術、風物を楽しみながらの鉄道の旅、後半はフィレンツェとウィーンでオペラを楽しんできました。

今回の旅の目的は、前回のイタリア訪問でカバーできなかった北イタリアの美を堪能することです。特に
・パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のジョットのフレスコ画
・ベネチアの教会のティツィアーノの絵画「聖母被昇天」
・ラヴェンナのビザンチン文化のモザイク画群
にこだわっていました。
それにもちろん、ヨーロッパに行って、オペラを見ないで帰ることはできません。ヨーロッパに旅する目的はもともとオペラを見ることにあります。フィレンツェの5月音楽祭と無理して帰りに寄り道するウィーンでオペラを見ます。ほかでも見たかったのですが、どうしてもスケジュールが合いませんでした。

・5月5日 フィレンツェ歌劇場 歌劇「トスカ」 メータ ライモンディ,ウルマーナ,ハドック
・5月6日 ウィーン国立歌劇場 楽劇「さまよえるオランダ人」 小澤 グルントヘーバー,シュナイダー・ホフシュテッター,フィンク,ボータ
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そして、帰国後、2005年5月10日、東京オペラシティ コンサートホールで初めて、ヒラリー・ハーンのリサイタルを聴きました。ヒラリーが26歳、今から13年前でした。因みにヒラリーの初来日は2000年11月のヤンソンス指揮ベルリン・フィルに帯同してのものでした。ヒラリーは若干21歳。そのときの11月26日のサントリーホールでの公演はNHKがHI-VISION放送しましたから、D-VHSでばっちり録画しています。見事なショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の演奏でした。アンコール曲は無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のプレストでした。(ヒラリー・ハーンのツイッターによると、今回の12月3日のリサイタル後のサイン会で、この初来日時にヒラリーの最初のバッハの無伴奏のCDにサインをもらったかたがそのサインされたCDを持ってこられたそうです。)

ですから、saraiは初来日後、5年目の2005年からヒラリー・ハーンの演奏を聴き続けていることになります。10年間は素晴らしい演奏が続き、3年前の2015年は不調でした。そのときは分かりませんでしたが、妊娠・出産という出来事があったんですね。今年は二人目のお子さんも出産し、見事に復活しました。また、saraiにとって、世界最高のヴァイオリニストに復活です。

因みにその2005年のリサイタルに行くきっかけは渋谷のタワーレコードでヒラリー・ハーンのコーナーができていて、絶賛されていたので、試しにメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を購入し、その演奏を聴き、いっぺんにファンになってしまったんです。

なお、2005年5月から2009年1月の間に聴いたコンサートはまったく不明です。当時の手帳で暇なときに調べてみましょう。

今回の日本ツアーはパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルと共演するモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番のコンサートが続きますが、saraiはラストコンサートになる12月16日の宮崎芸術劇場のコンサートを追っかけします。



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       ヒラリー・ハーン,  

ジョナサン・ノット&東響のダ・ポンテ3部作も大団円、感動!感動!《フィガロの結婚》@ミューザ川崎シンフォニーホール 2018.12.7

オペラの醍醐味を満喫しました。一昨年から始まったジョナサン・ノット&東響のダ・ポンテ3部作も大団円になり、最後は《フィガロの結婚》です。《コジ・ファン・トゥッテ》、《ドン・ジョヴァンニ》と素晴らしい公演が続き、いやがうえにも期待が高まる《フィガロの結婚》です。期待しながら、開演を待ちます。意外に空席もあるのが不思議です。評判になっている公演だと思いますけどね。いよいよ、ジョナサン・ノットが満面の笑みを浮かべながら、入ってきて、タクトを振り始めます。序曲です。あれっ、妙にくぐもった響きです。特に第1ヴァイオリンが響きません。さてはガット弦での演奏なのかなと推測します。管楽器はホルンはナチュラルホルンのようですが、ほかは普通の楽器のように思えます。ヴァイオリンは対向配置で絞った構成です。まあ、悪くはない演奏ですが、こんなに響かない演奏は好みではありません。序曲が終わり、フィガロとスザンナが登場します。フィガロ役のマルクス・ヴェルバは張りのある素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。スザンナ役のリディア・トイシャーは高域はともかく、中低域の声が響きません。万全のスタートではありませんね。今回は2幕目の後に1回の休憩が入ります。第1幕から第2幕までは通しで演奏されますが、もう一つ、乗り切れない演奏が続きます。saraiも途中、集中を欠いてしまいます。第2幕の終盤の7重唱になって、俄然、音楽が高潮し、素晴らしい重唱に耳を奪われます。演奏もさることながら、モーツァルトの天才ぶりに今更ながら感嘆します。盛り上がったところで休憩です。

休憩後、第3幕が始まります。このあたりになるとスザンナ役のリディア・トイシャーの声の響きがとても美しくなります。その透明な高域の声は魅惑的です。アルマヴィーヴァ伯爵役のアシュリー・リッチズも「わしがため息をついて嘆いている間に家来が幸せになるのか」のアリアを見事に歌い上げます。柔らかな声質のバリトンです。裁判の後、すったもんだの挙句、フィガロの身の上が分かって、六重唱「この抱擁は母のしるし」が歌われますが、第2幕終盤と同様にモーツァルトの天才ぶりが再び、発揮されます。ため息の出るような素晴らしい重唱です。次いで、待ち望んでいたアルマヴィーヴァ伯爵夫人のアリア「あの楽しい思い出はどこに」です。今回、一番、楽しみにしていた名花、ミア・パーションの歌唱です。遂に実力を発揮してくれました。本当は彼女のスザンナを聴きたかったのですが、声質が少し重くなり、スザンナ役は卒業して、伯爵夫人になりました。結局、彼女のスザンナを生で聴く機会は失ってしまいました。でも、彼女のピュアーな高音は健在で素晴らしいアリアを歌ってくれました。一昨年、《コジ・ファン・トゥッテ》ではフィオルディリージを歌う筈でしたが、体調不良で残念なキャンセルになり、その美声を聴き逃がしましたが、ようやく、彼女の美声を聴くことができました。2012年にウィーン国立歌劇場で彼女の素晴らしいゾフィーを聴いて以来ですから、6年ぶりです。その感激も束の間。スザンナ役のトイシャーが登場して、パーションと二人で手紙の二重唱「そよ風によせて…」を歌います。二人の透き通るようなソプラノが織りなす歌唱に大変な感銘を受けます。で、第2幕終盤の結婚式の場に突入します。主役はノット指揮東響のアンサンブルです。序曲では不満足だったアンサンブルが最高の響き、音楽を奏でます。素晴らし過ぎる演奏に絶句します。第3幕は最高の音楽が続き、saraiはすっかり、満足。これ以上のフィガロは望むべくもありません。第4幕もそのままの高いレベルのアンサンブルと歌唱が続きます。マルチェリーナ役のジェニファー・ラーモアがとんでもなく素晴らしいアリア「牡山羊と牝山羊は」を歌ってくれます。このアリアって、こんなに素晴らしいアリアだとは今まで気が付きませんでした。ジェニファー・ラーモアは以前、《ルル》のゲシュヴィッツ伯爵令嬢でも主役のルルを食ってしまいそうな歌唱を聴かせてくれましたし、新国のオペラ《イェヌーファ》のコステルニチカでも鬼気迫る歌唱を聴かせてくれました。驚くべき歌唱力の持ち主ですね。素晴らしいアリアが続き、やがて、フィナーレに差し掛かります。音楽が色合いを変えて、伯爵が許しを乞い、伯爵夫人が許しを与える最高の場面です。これには参りました。これで感動しなければ、今日の演奏を聴く意味がありません。モーツァルトの最高の音楽です。伯爵役のアシュリー・リッチズ、伯爵夫人役のミア・パーションの渾身の歌唱に感動のあまり、涙が流れます。そして、一同の祝祭的な重唱に勢いよく突入し、最後はノットが勢い余ったような凄い演奏で締めます。幸福感に満たされて、最高の充足感に浸ります。

これでジョナサン・ノット&東響のダ・ポンテ3部作が終わってしまうのはあまりにもったいない。そうです。今日は配偶者と一緒にこのミューザ川崎で聴きましたが、明後日のサントリーホールの公演にも今度はsarai一人で出かけます。絶対に素晴らしい公演になるという確信がありましたから、両方の公演のチケットを入手しておきました。こんな美味しい公演を聴き逃がすわけにはいきません。空席があったのが不思議です。
ジョナサン・ノット&東響のダ・ポンテ3部作の公演、全体を通しての感想はサントリーホールの公演を聴いた後にアップします。


プログラムは以下です。

 モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」全4幕

  指揮&ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット
  演出監修:アラステア・ミルズ

フィガロ:マルクス・ヴェルバ
スザンナ:リディア・トイシャー
アルマヴィーヴァ伯爵:アシュリー・リッチズ
アルマヴィーヴァ伯爵夫人:ミア・パーション
ケルビーノ:ジュルジータ・アダモナイト
マルチェリーナ:ジェニファー・ラーモア
バルバリーナ:ローラ・インコ
バジリオ/ドン・クルツィオ:アンジェロ・ポラック
  バルトロ/アントニオ:アラステア・ミルズ

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団


予習したのは以下の映像作品です。

 2015年ザルツブルク音楽祭
  2015年8月9日 モーツァルト劇場(ザルツブルク)

 <歌手>
 ルカ・ピサローニ(アルマヴィーヴァ伯爵 / バス・バリトン)
 アネット・フリッチュ(伯爵夫人 / ソプラノ)
 アダム・プラチェツカ(フィガロ / バリトン)
 マルティナ・ヤンコヴァ(スザンナ / ソプラノ)
 マルガリータ・グリシュコヴァ(ケルビーノ / メゾ・ソプラノ)
 アン・マレー(マルチェリーナ / メゾ・ソプラノ)
 カルロス・ショーソン(ドン・バルトロ / バス)
 パウル・シュヴァイネスター(ドン・バジリオ / テノール)
 フランツ・ズッパー(ドン・クルツィオ / テノール)
 クリスティーナ・ガンシュ(バルバリーナ / ソプラノ)
 エリック・アンスティーネ(アントニオ / バス)

 <合 唱> ウィーン国立歌劇場合唱団
 <管弦楽> ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 <指 揮> ダン・エッティンガー
 <演 出> スヴェン・エリック・ベヒトルフ

2013年からスヴェン=エリック・ベヒトルフの演出で始まったモーツァルトのダ・ポンテ・オペラ三部作の締めくくりとなる「フィガロの結婚」です。同じシリーズの「コジ・ファン・トゥッテ」は実際にザルツブルグ音楽祭で一昨年に聴いて(見て)、大変、感動しました。この「フィガロの結婚」はその「コジ・ファン・トゥッテ」ほどの出来ではありません。ただし、saraiが見たのはモーツァルト劇場ではなく、フェルゼンライトシューレでしたから、劇場の違いも影響しているのかもしれません。エッティンガー指揮のウィーン・フィルの演奏は素晴らしいです。



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       ジョナサン・ノット,  

明日のフィガロに向けて、一休み

今日はFセンターのレクチャーコンサート。懇親会もあり、色んな勉強をしました。夜遅く帰宅。明日の「フィガロの結婚」は13時からの始まり。早く寝ましょう。
そうそう、朗報です。我が愛するクララ・ハスキルの新しい録音が発見されました。イギリスBBC放送で中継放送されたコンサートを当時の最高の機材で録音していたリチャード・イッター(Richard Itter)という奇特な人がいて、1952年から1996年まで、およそ1500点にのぼる放送録音をコレクションしていたそうです。今回、ICA CLASSICSがBBCと12年間の交渉との末、ようやく契約がまとまり、イッターの膨大な録音の中から40タイトルをリリースするそうです。その中に前から聴きたかったクララ・ハスキルとカラヤンが共演したロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのモーツァルトのピアノ協奏曲第23番があります。これはカラヤンと組んで、ウィーン、ザルツブルク、ミュンヘン、パリ、ロンドンなどで11回もコンサートを行い、ハスキル自身も満足の出来だったコンサート・ツアーの最後を飾るものです。もっともクララ自身はツアーが続いたため、疲れていて満足な演奏の出来ではなかったと述懐しています。カラヤンとはこれが最後の共演になったそうです。既にザルツブルクでのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番はオーストリア放送協会の録音がCD化されており、まさに一期一会とも思える会心の演奏です。生命力に満ちて、純度の高い響きで、ハスキルはこの名曲を弾き切っています。ロンドンでの1956年2月6日の演奏会については植村攻氏の著書《巨匠たちの音、巨匠たちの姿》に書かれています。第2楽章のアダージオが絶品だったそうです。タイムズ紙もこの第2楽章を絶賛するレビュー記事を掲載したそうです。楽しみなCDが現れました。saraiはもちろん、すぐに注文しました。第23番はこれまで3枚のCDが出ています。このうち、1959年9月15日、モントルーでのシャルル・ミュンシュ指揮パリ国立管弦楽団との共演は嬉しくなってしまうような感動の名演です。さて、4枚目となるカラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団との演奏は期待に応えてくれるでしょうか。クララが特別の忘れがたい演奏だったと語ったウィーンやミュンヘン、パリの公演も発見されるといいのですが・・・。



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       ハスキル,  

涙、涙の大団円!ノット&東響《フィガロの結婚》@サントリーホール 2018.12.9

いやはや、凄い内容のオペラでした。まさか、ここまでの内容とは予期していませんでした。一昨日のミューザ川崎での公演を上回るパフォーマンスに感激しました。

内容に入る前にまず、これだけは特筆しておきたいと思います。ジェニファー・ラーモアがあり得ないほど素晴らしいアリア「牡山羊と牝山羊は」を歌ってくれました。史上最高のマルチェリーナです。愛嬌をふりまきつつ、その気概に満ちた歌唱には驚かされました。さらには、信じられないアジリタ! 凄い! チェチーリア・バルトリは別格として、最強のアジリタを聴いた思いになりました。

しかし、これはあくまでも今回のオペラ公演の一部です。全体の感想に移りましょう。とても書ききれないほどですが、特に印象に残った点だけを挙げておきます。

川崎公演と違って、まず、序曲が美しく響きます。あくまでも推定ですが、川崎はガット弦が一部使用されていたので響かなかったので、サントリーホールではガット弦を使用しなかったのではないかと思います。続く第1幕もすべてが素晴らしい内容でした。第2幕も見事です。川崎とは内容が大きく上回りました。すっかり、魅了されたまま、休憩に入ります。休憩後は川崎公演でも最高だった第3幕、第4幕です。これもさらなる素晴らしさです。第4幕の終幕のシーンは圧倒的です。体調不良で強行出演とアナウンスされたアルマヴィーヴァ伯爵役のアシュリー・リッチズが伯爵夫人に許しを乞う歌唱の素晴らしさにウルウルします。さらにミア・パーションの美し過ぎる歌唱で許しを与えられると、まるで自分が許されたような気持ちになって、感動の涙は止められません。終幕で一気に伯爵と伯爵夫人が主役に躍り出て、感動の歌唱が続きます。ミア・パーションの透明な高音に魅了されます。そして、心躍るフィナーレに突入。幸福感に包まれながらの感動の絶頂に至ります。

全体を通して、このオペラを盛り上げたのは、フィガロとスザンナを歌った美男美女コンビのマルクス・ヴェルバとリディア・トイシャーの二人。前回同様に絶好調のマルクス・ヴェルバの美声には同じ男性のsaraiもふらっとくるくらいのセクシーさを感じます。すべてのアリア、重唱、レチタティーヴォが完璧です。とりわけ、アリア「もう飛ぶまいぞこの蝶々」の声の響き、勢い、表現力はこれ以上ないほどです。この人はこんなに素晴らしいバリトンなのですね。第4幕のスザンナとの2重唱にも心を持っていかれました。書けばきりがないほどの見事な歌唱でした。そして、リディア・トイシャーは今日は第1幕の初めから好調で、幕を追うごとに調子を上げて、saraiは彼女の透き通った美しい声にすっかり参ってしまいました。美しいレチタティーヴォの歌唱を軸にレチタティーヴォ・アコンパニャートが素晴らしいです。ミア・パーションとの手紙の二重唱「そよ風によせて…」は美しさの極み・・・卒倒しそうな思いで聴き入りました。第4幕のレチタティーヴォとアリア「とうとう嬉しい時が来た~恋人よここに」で彼女の歌唱が絶頂を極めます。トイシャーのあまりの魅力に一挙にファンになってしまいました。

アルマヴィーヴァ伯爵夫人役のミア・パーションのフィナーレでの素晴らしさには既に言及しましたが、有名な2つのアリア、「愛の神様」、「あの楽しい思い出はどこに」では、実力を十分に発揮した出来栄えに感銘を受けました。彼女の存在感の重さを感じさせる歌唱はR.シュトラウスの《薔薇の騎士》の元帥夫人(マルシャリン)を連想してしまいました。彼女のゾフィーはバーバラ・ボニーと並んで、saraiのベストなのですが、元帥夫人も十分に歌えるんじゃないかとひそかに思いました。いずれにせよ、久しぶりに彼女の声を満喫できて幸せです。

ケルビーノ役のジュルジータ・アダモナイトは代役での出演でしたが、綺麗な声の持ち主。川崎ではちょっと落ち着かない歌唱もありましたが、今日は十分な歌唱。有名なアリアの2つを無難に歌いこなしました。
バルトロ/アントニオ役のアラステア・ミルズは演出監修も手掛けて、今回のオペラを成功させた功労者。歌唱も早口言葉を見事にこなしていましたし、ソフトな歌声にも感服しました。
バルバリーナ役のローラ・インコも美しい声の持ち主。この役ではもったいないくらいです。
バジリオ/ドン・クルツィオ役のアンジェロ・ポラックも美しい声の歌唱を聴かせてくれて、この役では十分過ぎる出来でした。

今回はコンサート形式のオペラですが、それなりの衣装も身に着けて、かなりの演技をこなしたので、下手な現代風の演出で音楽をぶち壊すよりもよほどよいと感じました。このコンサート形式が日本で定着しつつあるのは、料金の安さやステージが間近にあるメリットもあるので大歓迎です。

オペラの評価で言えば、やはり、ジョナサン・ノットの音楽面での貢献がすべてだったと思います。八面六臂の活躍はまるでモーツァルトが指揮しているみたいと言えば、ほめ過ぎでしょうか。ノット指揮の東響の演奏にますます、のめり込んでいきそうです。

これでジョナサン・ノット&東響のダ・ポンテ3部作がおしまいです。《コジ・ファン・トゥッテ》、《ドン・ジョヴァンニ》、《フィガロの結婚》を通して聴いてみて、《コジ・ファン・トゥッテ》、《フィガロの結婚》の2作の出来栄えが素晴らしかったです。まあ、僅差で《コジ・ファン・トゥッテ》が素晴らしかったかな。あれは本当に素晴らしかった! 今回もフィガロを歌ったマルクス・ヴェルバを起用したのが大成功でした。

そうそう、川崎もサントリーホールもカーテンコールが大いに盛り上がりました。今日は特に気に入ったジェニファー・ラーモアに“ジェニファー”と叫びかけたら、saraiに笑みを返してくれました。ありがとう、ジェニファー!


プログラムは以下です。

 モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」全4幕

  指揮&ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット
  演出監修:アラステア・ミルズ

フィガロ:マルクス・ヴェルバ
スザンナ:リディア・トイシャー
アルマヴィーヴァ伯爵:アシュリー・リッチズ
アルマヴィーヴァ伯爵夫人:ミア・パーション
ケルビーノ:ジュルジータ・アダモナイト
マルチェリーナ:ジェニファー・ラーモア
  バルトロ/アントニオ:アラステア・ミルズ
バルバリーナ:ローラ・インコ
バジリオ/ドン・クルツィオ:アンジェロ・ポラック

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団


予習は前回書いた通りの2015年ザルツブルク音楽祭のヴィデオです。今日の公演はコンサート形式ながら、そのザルツブルグ音楽祭の公演を上回る内容でした。



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       ジョナサン・ノット,  

ザルツブルク音楽祭:シュテファン・ツヴァイク・センター 1840年~1942年

2017年8月2日水曜日@ザルツブルク/7回目

シュテファン・ツヴァイク・センターStefan Zweig Centreで展示の数々を見ているところです。
次はいよいよ、ブラジル時代の展示です。ツヴァイクの余命も少なくなります。ツヴァイクの最後の悲劇の日々です。

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ブラジルに旅立つ前、1939年の小説『心の焦燥』Ungeduld des Herzensです。イギリス滞在時代ですから、英語の表題Beware Of Pityもあります。この小説は最近ヒットした映画《グランド・ブダペスト・ホテル》が作られる契機になったそうです。アンダーソン監督がパリの古本屋でこの小説を偶然手に取って、興味を抱き、さらに『昨日の世界』を読み、映画化に踏み切ったとのことです。

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ブラジルに旅立つ直前、1940年のシュテファン・ツヴァイクと2番目の妻ロッテがバースの家で寛ぐ写真です。ロッテとは前年の1939年に再婚しました。写真の右にはシュテファンが妻ロッテに宛てた手紙があります。何故か、英語で書かれています。

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1940年にアメリカに移り、翌1941年に最期の地ブラジルに移住します。そこで『未来の国ブラジル』Brasilienを書き上げます。今でもブラジルではよく読まれているようです。

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そして、自伝的回想録『昨日の世界』Die Welt von Gesternが1942年に彼の記憶だけで書かれます。saraiの愛読書です。saraiがこの本に夢中になったのと同様にアンダーソン監督もこの本の虜になって、映画《グランド・ブダペスト・ホテル》が生まれました。

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そして、1942年2月22日にヨーロッパ文化の未来を絶望して、希代の文化人シュテファン・ツヴァイクは妻ロッテとブラジルのペトロポリスで服毒自殺を遂げます。まるで古き良きヨーロッパ文化の終焉みたいに思えます。合掌・・・。


センター内のツヴァイクの展示を見終わって、受付で販売している小冊子と絵葉書を記念にいただきます。
これが1枚目の絵葉書。ザルツブルク音楽祭のリハーサル風景です。指揮しているのはアルトゥーロ・トルカニーニ。客席に座っているのは音楽祭を取り仕切るマックス・ラインハルト。客席に入ろうとしているのはシュテファン・ツヴァイクです。

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これが2枚目の絵葉書。最初の妻フリデリケ・フォン・ヴィンターニッツとシュテファン・ツヴァイクです。1920年に最初の結婚をしました。彼女はなかなかの美人ですね。それに才媛だったようです。

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これが3枚目の絵葉書。2番目の妻ロッテとシュテファン・ツヴァイクです。

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これは無料の栞みたいなものです。『昨日の世界』Die Welt von Gesternと書かれているので、愛読書『昨日の世界』の栞に使用しましょう。

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これは小冊子「シュテファン・ツヴァイクのザルツブルク」Das Salzburg des Stefan Tweigです。

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貴重な写真がたくさん掲載されています。これはカプチーナベルク5番地Kapuzinerbergのパッシンガー城Paschinger Schlösslを門から見たところです。ザルツブルクでの住居です。

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これがパッシンガー城。大きな屋敷ですね。

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これは屋敷の一室です。陽光が燦燦と降り注ぎ、明るい室内です。

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これは書斎。重厚です。いかにも作家の書斎です。

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センターのスタッフの女性にカプツィーナー山にあるツヴァイクのヴィラの場所も教えてもらったので、時間があれば、見に行きましょう。中には入れないので、外から様子を伺うだけですけどね。

ということで、シュテファン・ツヴァイク・センターを辞去します。そうそう、もう一度、トンネルの入り口をチェックしに行きましょう。



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シューマンのヴァイオリン・ソナタを好演 毛利文香&アブデル・ラーマン・エル=バシャ デュオ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2018.12.11

とっても若いヴァイオリニストの毛利文香のリサイタルを聴きました。モーツァルト、シューマン、フランクの傑作ソナタをその様式に合わせて見事に弾き分けました。しっかりと勉強しているようですね。これからが楽しみな若手です。そもそも、何故、このリサイタルに行くことにしたのかというと、①会場が近い、②共演するピアニストが大物のエル=バシャ、③シューマンのソナタが聴ける、ということでしょうか。特にプログラムにシューマンの2番を入れたという心意気に感じたのが大きいです。
そういうわけで、特にシューマンを楽しみにしていました。結果的にその演奏が一番良かったので、満足なコンサートでした。第1楽章の熱いロマン、第3楽章のしみじみとした抒情、第4楽章の勢いのある演奏。それに何と言っても、しっかりとシューマンらしさが醸し出されていたのが素晴らしいです。この若さでシューマンの音楽をしっかり把握していますね。モーツァルトも第2楽章がとても美しい演奏でした。

この日のプログラムは以下の内容です。

 ヴァイオリン:毛利文香
 ピアノ:アブデル・ラーマン・エル=バシャ

  モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第28番 ホ短調 K.304
  シューマン:ヴァイオリンソナタ 第2番 ニ短調 Op.121

  《休憩》

  フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調

  《アンコール》

    アブデル・ラーマン・エル=バシャ:ヴァイオリンとピアノのためのノクターン


最後に予習について触れておきます。


1曲目のモーツァルトのヴァイオリンソナタ第28番は以下のCDで予習をしました。

 アルテュール・グリュミオー、クララ・ハスキル 1958年11月19日-20日録音 バーゼル、スイス

これはsaraiの愛聴盤にして、世間でも決定盤と言われています。ハスキルのピアノが素晴らしいのはもちろん、グリュミオーのヴァイオリンの瑞々しさも特筆ものです。


2曲目のシューマンのヴァイオリンソナタ 第2番は以下のCDで予習をしました。

   アドルフ・ブッシュ、ルドルフ・ゼルキン 1943年録音 ワシントン ライブ モノラル

これもsaraiの愛聴盤です。それに決定盤でもあります。感動の演奏です。


3曲目のフランクのヴァイオリンソナタは以下のCDで予習をしました。

 ダヴィド・オイストラフ、スヴャトスラフ・リヒテル 1968年12月28日録音 モスクワ音楽院大ホール ライヴ

これもsaraiの愛聴盤中の愛聴盤。二人の巨人のぶつかり合いには息を呑むばかりです。室内楽演奏の最高峰とも思えます。

結局、予習というよりも復習になりました。愛聴盤をまたまた聴き、その素晴らしさに耳を楽しませました。



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クララ・ハスキルの日特別編 クララ・ハスキルの全録音を聴く:モーツァルト編(2)

先週、12月7日はsaraiの最愛のピアニスト、クララ・ハスキルが58年前に亡くなった日でした。今年もその日が巡ってきましたが、生憎、ノット&東響の《フィガロの結婚》があり、クララを偲ぶ記事が書けませんでした。5日遅れでクララ・ハスキルの日の記事をアップします。

現在、クララ・ハスキルの全録音を聴くという大企画を決行中です。もっとも全録音のCDまたはLPが入手できればの話です。
モーツァルトの作品の録音はほぼ収集できました。ハスキルのディスコグラフィーは以下のCDに付属しています。J.スピケの労作です。

 Clara Haskil - The Unpublished Archives TAHRA TAH389/390
  モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番ヘ長調 K.459
   53/01/20、ベルリン フェレンツ・フリッチャイ、RIAS交響楽団
  モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
   52/12/19、チューリッヒ ハンス・シュミット・イッセルシュテット、ベロミュンスタースタジオ管弦楽団
  等


前回はモーツァルトのピアノ協奏曲第9番から第19番までの全録音について聴いた感想をまとめました。
https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-2533.html
今回はモーツァルトのピアノ協奏曲第20番から第27番までの全録音について聴いた感想をまとめます。


ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466

(1)...48/07/25、エキサン・プロヴァンス エルネスト・ブール、パリ音楽院管弦楽団(INA) 
 ハスキルの現存するモーツァルトの録音で一番古いものです。したがって、音質は期待できませんが、オーケストラの音はともかく、ハスキルのピアノは意外に明快にとらえられています。第1楽章はハスキルも落ち着かなかったようで、拙速だったり、集中していないようですが、後半からはハスキルらしい音楽が展開されます。第2楽章はとても品格の高い演奏です。圧巻なのは第3楽章。ハスキルならではの見事な演奏です。終盤では、素晴らしく勢いのあるカデンツァも含めて、彼女の素晴らしいピアノの表現に圧倒されます。INAはよくもこういう記録を復活してくれました。感謝するのみです。
    
(2)...50/09/23-24、ヴィンタートゥール ヘンリー・スウォボダ、ヴィンタートゥール交響楽団(Westminster)カデンツァ:ニキタ・マガロフ
 ピアノ、オーケストラ、ともに素晴らしい演奏。デモーニッシュではなく、詩情にあふれた音楽に仕上がっています。ハスキルのピアノは第2楽章で詩情豊かに歌いますが、それよりも第3楽章の真珠の球を転がすようなきらめきに満ちた演奏が素晴らしく感じられます。LPレコードの音質が光ります。

(3)...52/12/19、チューリッヒ ハンス・シュミット・イッセルシュテット、ベロミュンスタースタジオ管弦楽団(THARA)
 スタジオ録音のため、ハスキルの落ち着いた演奏が光ります。第1楽章、第3楽章は勢いのある演奏。第2楽章はさりげない力の抜けた演奏ながら、後半の美しい演奏が印象的です。シュミット・イッセルシュテットの堂々たるオーケストラのサポートも見事です。録音もよく、聴き応えのある演奏です。ハスキルの魅力全開とは言えないまでも、とても素晴らしい演奏・録音と言えます。

(4)...54/01/10、ベルリン(オイローパ宮) フェレンツ・フリッチャイ、RIAS交響楽団(Audite)
 ライヴとは思えない落ち着いた演奏ながら、ハスキルもフリッチャイも気迫に満ちています。とりわけ、ハスキルの輝かしいピアノの音色は素晴らしいです。フリッチャイとの協奏も見事。これは名演です。録音はピアノとオーケストラのバランスが絶妙。

(5)...54/01/11-12、ベルリン(イエス・キリスト教会) フェレンツ・フリッチャイ、RIAS交響楽団(DGG)
 もうハスキルのピアノの響きを聴いているだけで、ハスキルのファンは幸福になれる。そういう演奏です。基本的には前日のライヴとほぼ同じ演奏ですが、ハスキルの気品に満ちたピアノの透徹した響きは第1楽章から第3楽章まで変わらず、速いパッセージになっても安定した響きです。第3楽章のカデンツァに至り、演奏は勢いを増して、胸を打たれるようなハスキルの演奏にただただ感服するのみです。フリッチャイはライヴよりもサポート役に徹して、見事な演奏を聴かせてくれます。

(6)...54/10/11、ウィーン ベルンハルト・パウムガルトナー、ウィーン交響楽団(Philips)
 ハスキルの純度の高い響きで端正に、そして、音楽に敬意を持って、実に丁寧に弾かれた演奏は最後まで維持されます。適度に軽い残響のあるホールトーンで美しい音楽はこの上もなく、心に沁み渡ってきます。パウムガルトナー指揮のウィーン交響楽団も見事なサポートです。こういう素晴らしいセッション録音を残してくれたPhilipsに感謝です。因みにハスキルの演奏スタイルは同じ年に録音されたフリッチャイとの演奏とほとんど変わりません。すっかり、この曲を自分のものとして確立したようです。

(7)...56/01/28、ザルツブルグ ヘルベルト・フォン・カラヤン、フィルハーモニア管弦楽団(ORF)カデンツァ:クララ・ハスキル
 これは本当に驚きました。まさに一期一会とも思える会心の演奏です。生命力に満ちて、純度の高い響きで、ハスキルはこの名曲を弾き切ります。第3楽章の素晴らしさには感銘を受けてしまいます。カラヤンの絶妙のサポートも見事の一語です。ピアノに寄り添いつつ、ピアノの響きを高めていくような素晴らしい指揮です。永遠に語り継いでいくような名演です。この演奏では以前とはカデンツァが変わりましたね。これがハスキル自身の作ったカデンツァでしょうか。なお、カラヤンとは、このとき、ウィーン、ザルツブルク、ミュンヘン、パリ、ロンドンで10回以上もツアーでコンサートを行い、ハスキル自身も満足の出来だったそうです。カラヤンとはこれが最後の共演になったそうです。

(8)...56/11/06、ボストン シャルル・ミュンシュ、ボストン交響楽団(MUSIC&ARTS)カデンツァ:ニキタ・マガロフ
 音質はまあまあというところですが、ハスキルの純度の高いピアノの響きは十分にさえわたっています。ハスキルの演奏は相変わらずの素晴らしさ。とりわけ、第2楽章の情感あふれる演奏はこれまでで最高のレベルです。ミュンシュの気合のはいった指揮も聴きものです。なお、この演奏は初のアメリカでのコンサートツアーで最初のボストンでの4回のコンサートのうちの最後のコンサートです。最初の3回はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番でしたが、この最後のコンサートはミュンシュのたっての希望でこのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番が取り上げられたそうです。道理でハスキルもミュンシュも気合がはいっていたわけです。ハスキルもこの演奏について、満足していたようです。ところでカデンツァはまた、元のマガロフのカデンツァを弾いています。予定外の曲目だったので、古くから弾いていたカデンツァを弾いたのかもしれません。

(9)...57/09/27、モントルー音楽祭 パウル・ヒンデミット、フランス国立管弦楽団(INA)カデンツァ:ニキタ・マガロフ
 何故か、可憐に咲く一輪の白い花をイメージしました。オーケストラは妙に重い演奏でリズムも悪いのですが、ハスキルのピアノが入ってくると、空気が一変します。実に気品の高い清冽な演奏です。オーケストラとのギャップが逆にハスキルのピアノを引き立てている印象すらあります。音質もハスキルのピアノの響きを聴き取るのに十分なレベルです。ハスキルはこの曲の演奏形式を完全に確立していて、常に高いレベルの演奏を聴かせてくれます。 

(10)...59/09/08、ルツェルン オットー・クレンペラー、フィルハーモニア管弦楽団(URANIA、AUDITEハイレゾ)カデンツァ:ハスキル
 URANIAのCDは音質は悪いですが、素晴らしい演奏でした。今回、新たにAuditeのダウンロード販売で入手したハイレゾ音源はまるで奇跡のように素晴らしい音質で、オーケストラもハスキルのピアノの響きも素晴らしく磨きあがっています。とりわけ、ハスキルのピアノの高域のピュアーな響きと低域の深みのある響きは感涙ものの素晴らしさ。ルツェルン音楽祭のハイレゾ音源シリーズでは、フルトヴェングラーのシューマンの交響曲第4番も見事に蘇りましたが、これはそれを上回る出来です。この演奏で聴くハスキルの音楽は一段と芸術上の高みに上った感があります。潤いのある、磨き上げられたようなピアノの響きで哀感のある音楽を奏でていきます。まさに輝くような演奏に引き込まれてしまいます。第2楽章の深い詩情にあふれた演奏には絶句するのみです。第3楽章もパーフェクトな響きで音楽が始まります。なぜか、カデンツァが短く省略されたのはどういうことなんでしょう。そういう問題があるにしても、これこそ、ハスキルのモーツァルトを代表する名演奏であることは変わりません。クレンペラーもさすがに立派にオーケストラを鳴らしています。名指揮者と組んだときのハスキルは一段と輝きを増します。

(11)...60/11/14-18、パリ イーゴル・マルケヴィッチ、コンセール・ラムルー管弦楽団(Philips)カデンツァ:クララ・ハスキル
 これはLPレコードを入手しました。素晴らしい音質ですが、若干、音が硬い印象があります。演奏は巷で言われているほど、ハスキルの最高の演奏には思えません。直前に聴いた前年のクレンペラーとのライヴのほうが明らかに優っています。この曲だけはセッション録音だと、ハスキルの心情が強く表れないのかもしれません。ライヴでステレオ録音が残っていればと悔やまれます。とは言え、これだけ素晴らしい音でハスキルのピアノの音が聴けるのですから、貴重な録音であることは間違いありません。第3楽章だけは素晴らしい演奏です。勢いはありませんが、その代わり、くまどりのはっきりしたメリハリのきいた素晴らしい演奏です。(追記)ハイレゾ音源で聞き直した結果、ずい分、印象が変わりました。もう一つに思えたマルケヴィッチ指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の演奏もなかなか素晴らしいです。そして、やはり、ハスキルの演奏は最高の輝きに満ちていました。オーディオも進化によって、こんなに演奏の印象が変わるものかと驚愕しました。

(結論) これらの11種類の録音はいずれもハスキルのファンならば、聴き逃せない演奏ばかりですが、とりわけ、56年のカラヤン、56年のミュンシュ、59年のクレンペラーは素晴らしいの一語に尽きます。54年のフリッチャイとのセッション録音、54年のパウムガルトナー、60年のマルケヴィッチも捨て去りがたい魅力に満ちています。やはり、ハスキルのピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466は大袈裟に言うと、人類の文化遺産の最高峰です。


ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488

(1)...53/06/25、ルガーノ オトマール・ヌシオ、スイス・イタリア語放送管弦楽団(Ermitage)
 うーん、これが本当にハスキルの演奏でしょうか? 響きといい、音楽性と言い、まるでハスキルらしくない演奏です。妙に綺麗過ぎるんです。音質がえらく良いのですが、音響的な処理のせいでしょうか。それでも第3楽章はハスキルならでは勢いのあるテクニックのある演奏なので、これはハスキルしか弾けないでしょう。オーケストラがメロー過ぎるほどのロマンティックな演奏をしているので、ハスキルも同調してしまったのかな。この曲をハスキルが以後、どんな演奏をしているのか、興味が尽きません。ほぼ1年後と3年後と6年後(亡くなる前年)の録音が残っているので、比較してみましょう。

(2)...54/10/08-10、ウィーン パウル・ザッハー、ウィーン交響楽団(Philips)
 これはハスキルらしい高貴さと詩情に満ちた演奏。ほぼ、4か月前の演奏は何だったんでしょう。第1楽章こそ、ピアノの響きがきちんと聴こえてきませんが、第2楽章の抑制のきいた美しさ、第3楽章の純度の高い響きには満足できます。オーケストラも美しい響きですが、決して、やり過ぎていません。最高の演奏ではありませんが、一定の水準の演奏です。

(3)...56/02/06、ロンドン、ロイヤル・フェスティヴァル・ホール ヘルベルト・フォン・カラヤン、フィルハーモニー管弦楽団(ICA CLASSICS)
 クララ・ハスキルの新しい録音が発見されました。イギリスBBC放送で中継放送されたコンサートを当時の最高の機材で録音していたリチャード・イッター(Richard Itter)という奇特な人がいて、1952年から1996年まで、およそ1500点にのぼる放送録音をコレクションしていたそうです。今回、ICA CLASSICSがBBCと12年間の交渉との末、ようやく契約がまとまり、イッターの膨大な録音の中から40タイトルをリリースするそうです。その中に前から聴きたかったクララ・ハスキルとカラヤンが共演したロイヤル・フェスティヴァル・ホールでのモーツァルトのピアノ協奏曲第23番があります。これはカラヤンと組んで、ウィーン、ザルツブルク、ミュンヘン、パリ、ロンドンなどで11回もコンサートを行い、ハスキル自身も満足の出来だったコンサート・ツアーの最後を飾るものです。もっともクララ自身はツアーが続いたため、このロンドンの演奏会は疲れていて満足な演奏の出来ではなかったと述懐しています。カラヤンとはこれが最後の共演になったそうです。既にザルツブルクでのモーツァルトのピアノ協奏曲第20番はオーストリア放送協会の録音がCD化されており、まさに一期一会とも思える会心の演奏です。生命力に満ちて、純度の高い響きで、ハスキルはこの名曲を弾き切っています。ロンドンでの1956年2月6日の演奏会については実際にその場で聴いた植村攻氏の感想が著書《巨匠たちの音、巨匠たちの姿》に書かれています。第2楽章のアダージオが絶品だったそうです。タイムズ紙もこの第2楽章を絶賛するレビュー記事を掲載したそうです。で、実際に聴いてみた感想は音質はもう一つながら、まあまあ、聴けるレベルにあるという感じです。演奏はやはり、第2楽章が白眉です。第3楽章も勢いのある演奏です。残念ながら、このコンビの第20番ほどの冴えはありませんでした。ただ、ハスキルの品格の高いピアノ、共演したカラヤンの気品に満ちた演奏は特筆すべきものです。

(4)...59/06/29、ディボンヌ・レ・バン音楽祭 ピエール・コロンボ、ジュネーブ室内管弦楽団(INA)
 未入手のため、この演奏だけは聴けていません。遂にこの演奏だけが未入手になりました。

(5)...59/09/15、モントルー シャルル・ミュンシュ、パリ国立管弦楽団(MUSIC&ARTS)
 嬉しくなってしまうような感動の名演です。生々しい録音でハスキルの素晴らしさがすべて分かってしまう感じ。ライヴなのに落ち着いた堂々たる演奏を聴かせてくれます。第1楽章から美しい響きでモーツァルトのメロディアスな音楽が奏でられますが、抑制のきいた格調の高い表現です。そして、第2楽章の素晴らしさ。深い思い、精神性と言ってもいいかもしれませんが、音楽に込められたハスキルの極上の世界が繰り広げられます。それに寄り添うミュンシュの抒情的な表現も見事です。第3楽章はもう、自由な飛翔が存分に展開されて、ただただ聴き入るのみ。晩年のハスキルの高い音楽性はもう、天上の世界を思わせられます。感動的なのは大指揮者ミュンシュがハスキルのピアノにぴったりと寄り添い、支えていることです。よほど、ハスキルのピアノに感銘を受けていたのでしょう。この録音を聴くだけでそれが分かります。ハスキルはその時代の大音楽家によほど愛されたのですね。胸が熱くなりました。

(結論) 59年のミュンシュとの演奏が最高です。56年のカラヤンも彼とのラストコンサートなので、価値がありますし、その品格の高い演奏は忘れられません。


ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491

(1)...55/12/08、パリ(シャンゼリゼ劇場) アンドレ・クリュイタンス、フランス国立管弦楽団(INA)
 ハスキルの魅力が凝縮されているような演奏です。これを聴いて、ハスキルのファンにならない人は音楽を聴く資格がないとそしられても仕方がないでしょう。大指揮者クリュイタンスの指揮するオーケストラの素晴らしい演奏が野暮に聴こえてしまうほど、ハスキルのピアノの響きは美しく、格調が高いと感じます。可憐な白い一輪の花というと、誤解があるかもしれませんが、そう表現したくなるような孤高のピアノです。第1楽章から冴え渡るピアノは、第2楽章でひと際美しく、第3楽章でも冴え渡る技巧の素晴らしさに聴いている自分が茫然自失になってしまいます。ハスキルの最高の演奏が聴けました。録音もINAの素晴らしい技術で最高です。

(2)...56/06/25、ローザンヌ ヴィクトル・デザルツェンス、ローザンヌ室内管弦楽団(Claves)
 全編、哀しみ色に塗り込まれた深い詩情にただただ聴き入るのみです。ハスキルのモーツァルトの中でも最高の演奏です。デザルツェンスの指揮もそういうハスキルの演奏にぴったりと寄り添って、雰囲気を盛り上げてくれます。ピアノ、オーケストラ、共に素晴らしい協奏曲を作り上げてくれました。どの楽章をとっても素晴らし過ぎる演奏ですが、第1楽章のカデンツァは最高の演奏です。忘れられない究極の演奏のCDになりました。

(3)...60/11/14-18、パリ イーゴル・マルケヴィッチ、コンセール・ラムルー管弦楽団(Philips)カデンツァ:クララ・ハスキル/ニキタ・マガロフ
 貴重なステレオ録音で期待してしまいますが、同時に録音された第20番 ニ短調の協奏曲と同様にがっかりしてしまいます。特に第1楽章ではハスキルの詩が聴こえてきませんし、響きも平凡です。救われるのは第2楽章の終盤から響きがよくなり、第3楽章の演奏が素晴らしいことです。これなら、第3楽章の後、もう一度、第1楽章を録音し直してくれれば、よかったのにね。まあ、この曲では既に素晴らしい録音が2つもあるのでいいでしょう。一般にはこのCDがハスキルの代表盤のようになっているので、これを聴いた人はハスキルの真髄を聞き逃して、誤解してしまうかもしれません。(追記)まだ、ハイレゾ音源を聴いていませんが、第20番では印象ががらっと変わったので、この演奏も大化けする可能性があります。上記の感想は一時、保留です。

(結論) 55年のクリュイタンス、56年のデザルツェンスとの演奏は、ハスキルのモーツァルト演奏の中でも究極を思わせる素晴らしいものです。


ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595

(1)...56/09/09、モントルー オットー・クレンペラー、ケルン放送(WDR)交響楽団(MUSIC&ARTS)
 ハスキルの素晴らしい演奏に至福を感じます。音質は聴き取り易く処理されていますが、音楽を損ねるようなものではありません。クレンペラーのがっちりとしたオーケストラに支えられて、ハスキルはすべての音楽をクレンペラーに一旦、委ねたかのしながらも、しっかりと自分の個性に満ちた音楽を奏でていきます。第1楽章、第2楽章は愛らしいとも言える、ゆったりとしたピアノの響きで、とても格調高いものです。ハスキルらしい純度の高いピアノの音も十分感じられます。第3楽章はハスキルのテクニックが素晴らしく、見事な音楽を展開していきます。何故か、このクレンペラーとかクリュイタンスとかミュンシュとかシューリヒトのような大指揮者と組んだときのハスキルは彼らにインスパイアされるのか、必ず、最高の演奏を聴かせてくれます。ああ、イッセルシュテット、ヨッフム、カラヤンも抜けていますね。彼らの誰かとモーツァルトのピアノ協奏曲全集を録音してくれていればとの思いが残ります。

(2)...57/05/07-09、ミュンヘン(ヘラクレスザール) フェレンツ・フリッチャイ、バイエルン国立管弦楽団(DGG)LP
 モーツァルトはかく演奏されねばならないというような最高の演奏です。ハスキルの最高の芸術をここに聴くことができます。彼女の純度の高いピアノの響きは極限まで高められて、聴くものの耳をも純化します。フリッチャイはよいサポートとか、寄り添うとかというレベルではなく、ハスキルの最高の演奏と一体化したような素晴らしい指揮です。彼こそ、ハスキルの芸術の何たるかを理解していた音楽家だったのですね。第1楽章の素晴らしい演奏に続き、第2楽章はさらに純化された最高の演奏です。第3楽章はさぞや、勢いに乗った演奏になると思っていたら、そうではありません。インテンポのゆったりした演奏で、すっかりと力の抜けた、軽み(かろみ)に至る演奏です。あまりの見事さに思わず、こちらは笑みがこぼれてしまいます。でも最後のフィナーレの凄まじさには感動します。まるで泣き笑いのようになってしまうような極上の演奏。ハスキルは本当に天才だったんですね。それが実感できる究極の1枚です。

(結論) 56年のクレンペラーとの演奏も素晴らしいのですが、57年のフリッチャイとの演奏ときたら、ハスキルの芸術のすべてが詰まっています。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       ハスキル,  

ザルツブルク音楽祭:シュテファン・ツヴァイク・センターのトンネルからの入り口の謎の解明

2017年8月2日水曜日@ザルツブルク/8回目

シュテファン・ツヴァイク・センターStefan Zweig Centreで展示を見終わりました。
シュテファン・ツヴァイクの苦難の日々を見て、胸が熱くなりました。最期まで戦争に反対し続けたリベラルな文化人でした。時間を超えた友情を感じざるを得ません。

ところで、このシュテファン・ツヴァイク・センターへ上ってくる際にトンネル内の入り口から、何故、入れなかったのかを解明しておかないといけません。そのために、今度はシュテファン・ツヴァイク・センターから逆にエレベーターでトンネルの入り口に下りてみます。トンネル内の入り口に行くと、入り口の横に扉を開錠するボタンがしっかりあります。

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そして、この開錠ボタンはちゃんと機能しています。無念! 開閉ボタンの存在を知らない、文化の違いですね。ヨーロッパの文化の理解はまだまだですっ。

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トンネルの入り口にあるシュテファン・ツヴァイクの写真に別れを告げて、トンネル内を歩いて、ホテルに帰ります。

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この後、ホテルで休んで、夜はアンドラーシュ・シフの3回目のリサイタルです。また、ザルツァッハ川を渡って、モーツァルティウム大ホールに出かけます。これがチケット。

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3回にわたるミニチクルスの3回目です。バッハ、バルトーク、ヤナーチェク、シューマンの素晴らしい演奏にうならされました。特にバルトークのピアノ・ソナタ、シューマンの幻想曲は絶品でした。
3回ともご一緒したウィーンのおばさまともこれでお別れです。シフの奥様の塩川悠子さんは今日も皆さんにご挨拶してました。

ホテルに戻って、お昼にゲットしたザルツブルク音楽祭記念のワインで祝杯をあげます。

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これがワインのラベルです。ちゃんとザルツブルク音楽祭2017Salzburger Festspiele 2017と書かれています。2016年もののワインのようです。

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さて、明日は山の温泉、バード・ガシュタインBad Gasteinの温泉に出かけて、旅の疲れを癒してきましょう。もちろん、夜は戻ってきて、ザルツブルク音楽祭の公演を聴きます。ちなみにバード・ガシュタインは、1825年にシューベルトが滞在して、《グムンデン・ガシュタイン交響曲》を作曲したことで知られています。最近の研究結果では、この《グムンデン・ガシュタイン交響曲》はシューベルトの最後の交響曲、第9(8)番の大ハ長調交響曲のことだと推論されています。あのシューベルトの大傑作が生まれた地を訪れるのは楽しみです。どんなところなんでしょう。


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バード・ガシュタイン:ザルツブルクからレールジェットでGO

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/1回目

旅の15日目、ザルツブルクSalzburgの通算8日目です。

今日も猛暑が続きます。山の温泉で旅の疲れを癒してきましょう。今日はバード・ガシュタインBad Gasteinの温泉に出かけます。もちろん、日帰り旅です。バード・ガシュタインは作曲家シューベルトのゆかりの地です。1825年にシューベルトが滞在して、《グムンデン・ガシュタイン交響曲》を作曲したことで知られています。最近ではこの《グムンデン・ガシュタイン交響曲》は有名な第9(8)番の大ハ長調交響曲《ザ・グレイト》のことだと推定されています。
朝はゆったり起きだし、朝食を買い込んで、電車に乗ります。ザルツブルクからレールジェットで1時間半ほど南のほうに行きます。鉄道チケットはネットで購入済です。一人分はたったの9ユーロという超格安です。

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ザルツブルクを出て、ゴリング・アプテナウGolling-Abtenauに停車し、40分近く走り、ビショフスホーフェンBischofshofenを過ぎると、前方に高く岩山が聳え立っています。チロルの峰々です。

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線路の傍らには川が流れています。ザルツァッハ川Salzachの上流ですね。

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レールジェットはチロルの美しい緑の中を走っていきます。

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ザンクト・ヨーハン・イム・ポンガウSankt Johann im Pongauを過ぎると、ますます、チロルの山里の色合いが濃くなってきます。

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シュヴァルツァッハ-ザンクトファイト駅Schwarzach-St.Veit Bahnhofを過ぎ、チロルの山間部に入っていきます。

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目的地の2つ手前のドルフガシュタインDorfgasteinに着くと、車内もかなり、空いてきます。

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次の駅、バード・ホーフガシュタインBad Hofgasteinも温泉地の一つです。多くの乗客が降りていきます。

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この駅を出ると、次はいよいよ目的地のバード・ガシュタインです。あと10分ほどで到着です。山間部をレールジェットがゆっくりと走っていきます。

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高い山の麓には盆地が続いています。その先にバード・ガシュタインの町があるのでしょう。

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チロルの山の上には絶好の晴天の空が広がっています。

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やがて、左側の車窓にバード・ガシュタインと思しき町が見えてきます。

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駅に近づくと、山の斜面に張り付くように温泉の保養施設が広がる景色に驚きます。日本で言えば、熱海の感じですが、ここは山間部です。あたりに広がる緑が美しいです。

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バード・ガシュタインの駅に到着し、ホームに降り立ちます。

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バード・ガシュタインの駅舎に向かって歩きます。

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ザルツブルクから、ほんの1時間半ほどで山間の温泉地に行けるとはこれまで思っていませんでした。いよいよ、チロルの温泉の初体験です。



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バード・ガシュタイン:駅に着いて、ツーリストインフォメーション探し

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/2回目

チロルの温泉地、バード・ガシュタインBad Gasteinの駅に到着したところです。ここまで我々を運んでくれたレールジェットは短い停車時間で乗客を迎え入れています。

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わずかな乗客が乗り込むと、レールジェットは最終目的地のクラーゲンフルトKlagenfurtに向かって出発していきます。明日はヴェルター湖Wörther Seeにあるマーラーの作曲小屋を訪問するためにそのクラーゲンフルトに行く予定です。と言うことは、連日、同じ路線のレールジェットに乗車するということです。大変、非効率ですが、日程上、やむを得ません。

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レールジェットの走り過ぎる姿を見ながら、駅舎に向かいます。ハプスブルク家の皇帝、フランツ・ヨーゼフの記念碑があります。

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落ち着いた佇まいの駅舎の内部です。

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駅舎から外に出ると、大きな通りが走っています。カイザー・フランツ・ヨーゼフ通りKaiser Franz Josef-Straßeです。

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駅は谷間の町の中腹にあります。バード・ガシュタインの町については全く資料がないので、まずはツーリストインフォメーションを探しましょう。ツーリストインフォメーションは駅の左の方へ800メートルとの案内板を発見。ずいぶん遠いので間違えずに行ければよいのですが。ともかく、そちらに歩き始めます。振り返ると、バード・ガシュタインの駅舎が眺められます。

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その方向に向かうと、すぐに町の中心地の方向に下っていく道とずっと先まで伸びている自動車道路(カイザー・フランツ・ヨーゼフ通り)との分かれ道にたどり着きます。

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ここは、町の中心地に向かいましょう。このグリルパルツァー通りGrillparzerstraßeはかなりの急坂です。帰りのことを考えると、怖くなります。この道でよいのかも不安になります。まあ、この先には大きな観光ホテルが見えているので、大きく道に迷うこともないでしょう。

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道案内の看板には町の中心地に向かう方向が書いてあるので、そちらに向かいます。

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とりあえず、この町の観光名所の滝への道を訊きながら、坂を下ります。滝はこの方向で良いようです。坂道を下って、下の町に到着です。

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道を進んでいくと滝の音が囂々と聞こえています。

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ここで町のおじさんにツーリストインフォメーションの場所を尋ねます。すると、町の中を貫くメインストリート、カイザー・フランツ・ヨーゼフ通りKaiser Franz Josef-Straßeを登っていくように言われます。今下りてきた急坂は、駅と街を結ぶ住民のための道のようです。ツーリストインフォメーションへは10分ほどかかるそうです。モーツァルトホテルの裏の方だよと細かく丁寧に教えてくれます。信じて歩きましょう。街散策にもなります。
カイザー・フランツ・ヨーゼフ通りを少し登っていくと、町を見下ろす眺めのよいところに出てきます。滝を眺めるテラスレストランと書いてあります。今は滝のことは忘れて、ともかく、ツーリストインフォメーションを目指します。

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眺めを楽しみながら、坂道を登っていきます。

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5~6分登ってきたところで、坂道を振り返ります。町の中心地から、だいぶ離れました。まあ、それほどの坂道でなかったことが救いです。

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やがて、モーツァルトホテルHotel Mozartの前に出ます。目印のところに着いて、正直、ほっとします。

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確かに、モーツァルトホテルを回り込んだところにツーリストインフォメーションがあります。「モーツァルトホテルの裏の方」という言葉がなかったら、見つけられなかったでしょう。丁寧なご説明をありがとうございました。かなり、街はずれです。

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ここまでの散策ルートを地図で確認しておきましょう。

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さあ、ツーリストインフォメーションに入って、町の情報をゲットしましょう。



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ヒラリー最高! ヒラリー・ハーン、ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィル@宮崎芸術劇場・アイザックスターンホール 2018.12.16

長年のヒラリー・ハーンのファンとしては一時不調だったヒラリーが復活して、また、高みを目指し始めた姿を目の当たりにして嬉しくなりました。今回の日本ツアーでは初回と2回目のオペラシティでのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの全曲を聴き、そして、ラストコンサートとなる今日の宮崎芸術劇場でのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲を聴く場に駆け付けられて、とても満足です。今日の演奏はヒラリーの個性的なヴァイオリンの響きで聴ける最上のモーツァルトでした。もっとモーツァルトを得意にするヴァイオリニストはいますが、やはり、ヒラリーのファンとしては、彼女ならではのモーツァルト演奏が聴けるのは無上の喜びです。これまでの彼女のモーツァルト演奏では最高のものを聴かせてもらいました。優雅で格調高い演奏は無類のものでした。とりわけ、第3楽章のノリと熱い演奏は素晴らしかったです。とは言え、まだまだ、彼女のモーツァルト演奏は上を目指す余地も残されているでしょう。誰にも真似できないヒラリーのモーツァルト演奏の完成に向けて、一層の精進を期待したいと思います。
アンコールではつい10日ほど前に聴いたばかりのバッハの無伴奏ソナタを聴かせてもらいましたが、やはり、これは素晴らしいです。モーツァルトを弾いたときには天使に思えたヒラリーがバッハではミューズの如き、全能の存在に思えます。次回の来日時には、さらなる進化を遂げていることを疑いません。
これで前半のプログラムが終わり、今回のコンサートに足を運んだ目的を果たすことができました。

後半のシューベルトの交響曲第8(9)番 ハ長調 「ザ・グレート」は失礼ながら、ある意味、おまけのようなものです。パーヴォ・ヤルヴィと相性の悪いsaraiとしては、ほとんど期待していない演奏です。
ところがです。これまでに結構、パーヴォ・ヤルヴィの指揮は聴いてきましたが、今回は最高の演奏でした。ロマン派の交響曲の幕開けとも言える、この傑作を見事に表現してくれました。ベートーヴェンが完成した古典派の交響曲を引き継ぎ、詩的な要素をふんだんに盛り込んで、新しい道を示した記念碑的な作品の歴史的な意義を十分に表現して、さらにはベートーヴェンの交響曲第7番との関連性や交響曲第9番からの発展を示してくれました。さらに交響曲史で連なっていく、シューマン、ブラームス、ブルックナーへの展望も内包したような演奏は見事なものでした。演奏内容では、とりわけ、第4楽章の喜びやロマンの躍動の魅力に満ちた演奏は最高でした。

ちなみに、このシューベルトの最後の交響曲はチロルの温泉地のバード・ガシュタインBad Gasteinに滞在中にスケッチされたというのが最近は有力視されています(つまり、幻のグムンデン=ガシュタイン交響曲の正体はこの交響曲第8(9)番 ハ長調 「ザ・グレート」であろうということです)。プライベートなことですが、昨年、ザルツブルク音楽祭に行った際、その合間を縫って、このバード・ガシュタインに温泉を楽しむために訪れました。現在、当ブログでは、その際の訪問記をちょうど書いているところです。なんだか、不思議な暗合になったようで、嬉しくなります。

また、今年は特にシューマンに興味を持った年でsaraiにとって、《シューマンの年》のような感じです。つい先日まで、シューマン研究の学徒である前田 昭雄氏の書いた著書≪シューマニアーナ≫を読んでいました。その中でシューマンとこのシューベルトの交響曲第8(9)番 ハ長調 「ザ・グレート」の関わり合いについて詳述されていました。シューマンがウィーンでフランツ・シューベルトの兄フェルディナンドを訪れ、手つかずになっていたフランツの書斎を見せてもらい、そこで埋もれていた交響曲第8(9)番 ハ長調 「ザ・グレート」の楽譜を発見して、ただちに盟友のメンデルスゾーンのもとにそれを送って、ライプツィヒ・ゲヴァントハウスで初演したのは有名な話です。シューマンがほどなく、その演奏を聴き、感激して、その夜、クララ・ヴィーク(まだ、クララとは結婚前)に手紙を書き、自分の理想とすることは、クララとの結婚と自分の交響曲を書き上げることだと告げます。そして、翌年の1840年にシューマンはクララとの結婚を果たし、さらに翌年の1841年には最初の交響曲第1番≪春≫を書き上げて、自分の理想を現実にします。ある意味、シューマンの人生が一番、輝いた時期でした。その中心にあったのは、このシューベルトの作品です。それなしにシューマンの交響曲は成立しなかったかもしれません。

色んな意味で今日、この作品の素晴らしい演奏を聴いたことはsaraiにとっての必然であったのかもしれないと密かに夢想しています。


今日のプログラムは以下です。

 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
 ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
 管弦楽:ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団

 モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 「トルコ風」K.219
  《アンコール》 バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番 ハ長調 BWV 1005 から 第4楽章 アレグロ・アッサイ Allegro assai

  ≪休憩≫

 シューベルト:交響曲第8(9)番 ハ長調 「ザ・グレート」D944

  ≪アンコール≫
   シベリウス:悲しきワルツ Op.44-1


最後に予習について、まとめておきます。

モーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲を予習したCDは以下です。今更、予習は必要ありませんけどね。

  オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 1964年録音

重々しい部分と軽やかな部分がくっきりと表現された落ち着いた演奏です。

モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番を予習したCDは以下です。

 ヒラリー・ハーン、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィル 2012年12月4&5日 ドイツ、ブレーメン
 アンネ・ゾフィー・ムター(Vn,指揮) ロンドン・フィル 2005年7月 ロンドン、アビーロード第1スタジオ

ヒラリー・ハーンはいかにも彼女らしい一途な美音を通したモーツァルトです。ヒラリーの信念の先にあるベストのモーツァルトです。まだ、完成形には至っていないかもしれませんが、現在のヒラリーの精華のような演奏です。一方、アンネ・ゾフィー・ムターのモーツァルトは相変わらず、ユニークな演奏で耳をとことん楽しませてくれます。ある意味、異形のモーツァルト演奏ですが、魅力がたっぷり詰まっています。二人の演奏を聴いて、色んな形のモーツァルトがあるのだと改めて実感させられました。

シューベルトの交響曲第8(9)番 ハ長調 「ザ・グレート」を予習したCDは以下です。

  レナード・バーンスタイン指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 1987年10月録音

久しぶりに聴き直しましたが、安定していながら、熱情・ロマンに満ちた魅力的な演奏です。フルトヴェングラーのとんでもない名演はありますが、音質などを考慮した総合力では十分にわたりあえる録音です。



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       ヒラリー・ハーン,  

バード・ガシュタイン:町一番の名物、滝の凄い迫力

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/3回目

チロルの温泉地、バード・ガシュタインBad Gasteinに到着し、迷いながらもツーリストインフォメーションに辿り着いたところです。早速、中に入ります。先客はいないので、すぐにスタッフのかたに町の観光について、相談します。で、地図をもらい、町の名物の滝の場所と温泉の場所を教えてもらいます。温泉施設はいっぱいあるようですが、我々が行こうとしている駅前のフェルゼンテルメFelsenthermeが、見晴らしが一番良いと教えてくれます。では、温泉はそこに決めましょう。知りたい情報は得られたので、お礼を言って、ツーリストインフォメーションをあとにします。これがお世話になったツーリストインフォメーションの建物です。

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通りに出ると、ここは町はずれ。緑に包まれた風景が広がっています。

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通りの向かいに何か記念碑のようなものがあります。

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近くに寄って見てみます。壺の紋章が描かれています。これはバード・ガシュタインの紋章です。1327年にこの地の所有者のディーポルド・フォン・ガシュタインDiepold von Gasteinが領主のフリードリヒ・フォン・ゴルデックFriedrich von Goldeckにバード・ガシュタインの土地を譲渡しましたが、青い背景に銀色の壺の形の彼の紋章がそれ以来、町の紋章として使われるようになりました。この記念碑はその歴史的事実を刻んだもののようです。そう言えば、ツーリストインフォメーションの建物の正面にもこの壺の紋章が飾られていましたね。

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まずは町一番の名物の滝を目指して、町の中心地に戻ります。町のメインストリート、カイザー・フランツ・ヨーゼフ通りKaiser Franz Josef-Straßeの坂道を下っていきます。来た時と逆のルートです。

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町が見下ろせるところまで戻ってきます。今度は坂道を下るので楽ちんです。

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下の渓谷をのぞき込みますが、滝の姿を見ることはできません。

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道の傍らの案内板には、ツーリストインフォメーションの場所を示すiの文字が見えます。いまさらですけどね。

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町の中心に出ます。

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賑やかな露店も並んでいます。

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これが町の真ん中の広場、シュトラウビンガープラッツStraubingerplatzです。バスターミナルにもなっています。

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そのすぐ先にバード・ガシュタイン滝があります。滝はなかなかの迫力。これは見逃せません。

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ガシュタイン渓谷を流れ落ちる滝は凄い勢いです。

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ズームアップして、滝の迫力を撮影します。流れ落ちる水は白い泡になって、水しぶきを上げながら、轟轟という音をたてています。

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地図で滝へのルートを確認しておきましょう。

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たっぷりと時間をかけて滝を楽しみます。



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バード・ガシュタイン:滝とチロルの山々の美しい風景

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/4回目

チロルの温泉地、バード・ガシュタインBad Gasteinで町一番の名物の滝の眺めを楽しんでいるところです。橋の上から、流れ落ちてくる滝の流れを眺めています。

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橋の反対側を眺めると、滝が下流に勢いよく流れ落ちています。

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滝の下流の先にはホテルの町並みと山の稜線が見えています。

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滝の周囲にはガシュタイン渓谷の岩壁がそそり立っています。

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これが滝を眺める橋の様子です。左側が滝の上流なので、観光客が集まっています。

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滝の近くには、観光地らしく、立派なホテルが建ち並んでいます。

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橋の横手からは迫力のある滝の流れを眺めることができます。

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配偶者も近づいてきて、一緒に滝の眺めを楽しみます。

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滝とガシュタイン渓谷の景色を目に収めて、いったん、滝から離れます。

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さて、次は駅前にある温泉、フェルゼンテルメFelsenthermeに行きましょう。駅の方に戻るには、あの急坂を登らないといけないのかと危惧します。すると滝のすぐ横にある広場にバス停を発見。このバス停から、30分に1本、駅まで行くバスが出るようです。

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あと15分ほどでバスが来るようです。待ちましょう。バスが来るまで、辺りをぶらりと散策します。大きな建物の裏に出ることができます。そこからの眺めはとても美しいです。

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眺めの中心には美しい教会の姿があります。巡礼教会Heilige Primus and Felizianです。

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その教会の向こうには、チロルの緑の峰々が続いています。

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こちらはバード・ガシュタインの町の中心にあるホテル群です。

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このガシュタイン渓谷はチロルの山々に抱かれるような景勝地です。シューベルトもこの風景を見ながら、大ハ長調交響曲を作曲したんでしょう。雄大なロマンに満ちた作品に相応しい風景です。

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バスの時間まで、あと10分ほどです。景色を楽しみながら待ちましょう。



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シューベルティアーデ賛 田部京子@浜離宮朝日ホール 2018.12.19

田部京子の弾くシューベルトの遺作のピアノソナタ第21番 変ロ長調 D960を聴くことが念願でしたが、ようやく夢が叶いました。期待した通りの素晴らしい演奏でした。シューベルトの音楽の中で一番愛してやまぬ、この曲はこれまで内田光子、ピリス、ツィメルマン、シフという素晴らしいピアニストで聴いてきましたが、田部京子の演奏を聴いて、これで打ち止めでも構わないという心境に至りました。正直なところ、これまで聴いたピアニストよりも田部京子が断然優れた演奏をしたわけではありません。今日の田部京子は若干、精彩を欠いていたような印象です。しかし、田部京子はテクニックで聴かせるタイプのピアニストではなく、彼女の内なる詩情を心に訴えかける演奏を身上としています。その面では今日の彼女の演奏は誰にも真似のできない最高のものでした。長大な第1楽章はすべてのパッセージが強い意味を持って、心に迫ってきます。この音楽のずっしりとした中身の隅々までを彼女の演奏は描き尽してくれました。あの郷愁に満ちたメロディーが何度も表現を変えながら、心に響いてきます。トリルの異様な響きも今日はさりげなく、自然に心の闇をそっと開いてくれます。シューベルトの自由な心の飛翔によって、明も暗も、喜びも哀しみもすべてがこの第1楽章の中に表現されているかのようです。田部京子はシューベルトへの強いシンパシーを持って、深い音楽表現をピアノで聴かせてくれました。こんなに集中して、この第1楽章を聴いたことはありません。第1楽章を聴いただけでシューベルトの音楽をすべて味わい尽くしたという気持ちになりました。しかし、続く第2楽章の素晴らしい演奏・・・何も言葉になりません。ただただ、感動。美しい中間部を経て、また、憧れに満ちた主部に戻ってきた後の心の高揚は何ほどのものでしょう。シューベルトが書いた最高に美しい音楽をこれ以上はないだろうと思えるような感動的な演奏で聴かせてくれた田部京子。彼女の天才は彼女の心の内にあるようです。第3楽章はさっと切り替えて、とても美しいタッチの演奏。その見事な演奏に魅了されます。第4楽章もフォルティシモに高揚するところの素晴らしい音楽表現に心が共鳴します。コーダの手前でのためらうような表現に続いて、意を決したような勢いのコーダで感動的なフィナーレです。昨年聴いたアンドラーシュ・シフの演奏にも感動しましたが、これは田部京子だけが弾けるシューベルトです。音楽を聴いたのか、田部京子の心と触れ合ったのか、さだかではありませんが、今年をしめくくるにふさわしい素晴らしい演奏でした。

前半の演奏は冒頭がショパンの前奏曲 嬰ハ短調 Op.45でしたが、その美しい響きに唖然となりながら、聴き惚れました。緩やかな上昇音型が繰り返されますが、その美しさに心が翻弄されます。ショパンって、こんなに素晴らしい曲を書いたんですね。それにしても、田部京子はショパンさえもこんなに見事に弾けるとは驚きです。そう言えば、彼女のショパンを聴くのは初めてかもしれません。

次はシューマンの交響的練習曲です。これは期待したほどの演奏ではありませんでした。最後に弾くシューベルトに心がいってしまったのかも。それでも、遺作の変奏の4番、5番は夢見るような魅惑的な演奏。フィナーレの一つ前の第9変奏の美しさにも魅了されました。そう書いてみると、なかなか素晴らしい演奏だったのかもしれません。期待値が多き過ぎたためにもうひとつ満足できなかったにかもしれません。ほかのピアニストがこれだけの演奏をしたら、褒めまくるかもしれません。田部京子だから、これくらいの演奏では満足できなかったんです。

アンコールは3曲も弾いてくれましたが、どれも最高に美しい演奏です。吉松隆のプレイアデス舞曲集もグリーグも見事過ぎる演奏です。これなら、それらもいつかは聴いてみたいですね。田部京子の手にかかると、音楽が光り輝きます。天才のなせる業です。シューベルト(吉松隆編)のアヴェ・マリアは・・・何も言う必要のない演奏です。これを聴いて、今日はシューベルティアーデだったと悟りました。本来は11月19日のシューベルトの命日に開かれるべきリサイタルでしたが、ちょうど、1か月遅れでその命日に追悼を捧げたんですね。190年目の命日でした。心の中で合掌しました。

今日のプログラムは以下です。

  田部京子CDデビュー25周年記念 ピアノ・リサイタル

  ピアノ:田部京子
 
  ショパン: 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
  シューマン: 交響的練習曲 Op.13(遺作付き)

  《休憩》

  シューベルト: ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960

  《アンコール》

   吉松 隆:プレイアデス舞曲集 V Op.51から 第6曲 真夜中のノエル 
   グリーグ:君を愛すop.41-3 (オリジナルは歌曲Op.5-3)
   シューベルト(吉松隆編): アヴェ・マリア


最後に予習について、まとめておきます。

ショパンの前奏曲 Op.45を予習したCDは以下です。

 マルタ・アルゲリッチ 1975年10月 ロンドン

アルゲリッチの演奏した26の前奏曲集の中の1曲です。このアルバムはずっとsaraiの愛聴盤です。あの頃のアルゲリッチは凄かった!


シューマンの交響的練習曲 を予習したCDは以下です。

 田部京子 1999年8月 群馬県、笠懸野文化ホール
 アンドラーシュ・シフ 1995年

田部京子の演奏を聴き、驚愕しました。20年も前にこんな素晴らしい録音をしていたとは・・・。彼女のシューマンは聴き逃がせませんね。残念ながら、今日の田部京子の演奏はこの録音には及びませんでした。遺作の変奏曲の曲順はCDも今日の演奏も同じで、練習曲IXと変奏曲VIIIの間にまとめて5曲を挿入しています。アンドラーシュ・シフはいつもの彼の演奏と異なり、熱いロマンに満ちた演奏です。遺作の変奏曲の曲順はフィナーレの後に追加して演奏していますが、あえて、田部京子と同じ曲順に再編集して聴きました。まったく、違和感がありませんでした。田部京子の曲順は結構、いけそうです。ざっと調べた限りでは、彼女と同じ曲順で録音しているピアニストはいないようです。


シューベルトのピアノ・ソナタ第21番を予習したCDは以下です。

 田部京子 1993年10月 東京都あきる野市、秋川キララホール
 アンドラーシュ・シフ 1993年4月 ウィーン、楽友協会ブラームスザール ピアノ:ベーゼンドルファー

田部京子の録音は何と25年も前のものです。彼女のサードアルバムでした。saraiの所有するCDはその初出時のものではなく、シューベルトの録音、5枚をまとめたシューベルト:ピアノ作品集です。録音も1993年~2002年と10年にわたったものです。田部京子が若い頃に録音した第21番のソナタの演奏はとても素晴らしいものです。世界の巨匠たちの録音と比べてもトップクラスと言えます。ただ、いつの日にか、深化を遂げた田部京子の録音が出て、新旧録音を聴き比べるのがsaraiの夢です。アンドラーシュ・シフは新録音がありますが、フォルテピアノによるもので残念ながら、音が痩せていて、シューベルトの音楽を楽しめません。あえて、旧録音を聴きました。奇しくも田部京子が録音したのと同じ1993年です。シフの弾くベーゼンドルファーの響きは美しいレガートが印象的です。素晴らしい演奏ですが、昨年聴いた来日演奏での素晴らしさ(https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-2276.html)には及びません。シフにもベーゼンドルファーでの再録音をお願いしたいところです。今回は聴きませんでしたが、saraiの目下のベストはクララ・ハスキルの1951年録音です。20枚のCDを聴いた結果でした。そのときの感想を書いた記事はここです。https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-2270.html



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バード・ガシュタイン:駅前の温泉にバスで直行

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/5回目

チロルの温泉地、バード・ガシュタインBad Gasteinで滝の眺めを楽しんだ後、駅前の温泉、フェルゼンテルメFelsenthermeに行くバスの出発時間まで、滝近くを散策しています。町の中心地の広場、シュトラウビンガープラッツStraubingerplatzに面した大きな建物の裏手に景色を眺められる見晴らし台のようなところがあります。そこからの美しい眺めを楽しんでいます。先ほど訪れたツーリストインフォメーションの方向にはホテルや小さな教会が見えています。ツーリストインフォメーションはそれらの建物の先にあり、ここからは見えません。

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見晴らし台を離れて、また、町の中心地の広場、シュトラウビンガープラッツに戻ります。町は傾斜地に形成されて、中心の広場は傾斜地の底の部分にあります。

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妙な噴水があります。

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通りには人が少なくて閑散としています。

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いくつかの大きな店はつぶれたようで、寂しい雰囲気です。ここは町の中心のはずですが、何故でしょうね。見るものもなくて、また、滝の横のバスターミナルに戻ってきました。滝も見えています。

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バスの来る時間まではもう少しありますが、バス停の前で待機します。

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遠くに見える滝でも眺めていましょう。

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これが滝を見る橋です。その向こうに滝の水煙が見えています。

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やがて、バスは定刻にやってきます。

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早速、バスに乗り込みます。乗客はほとんどいません。

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駅前に向かうバスは先ほど歩いたツーリストインフォメーションへの道、カイザー・フランツ・ヨーゼフ通りKaiser Franz Josef-Straßeの坂道を登っていきます。車窓には美しい町の景色が広がります。既に見慣れた風景です。

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やがて、ツーリストインフォメーションの前の広場、モーツァルトプラッツMozartplatzでバスは左に大きく周り込みます。

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駅前の大きな通りに入って、駅に向かいます。

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ちなみにこの通りもカイザー・フランツ・ヨーゼフ通りです。つまり、この大通りは駅からツーリストインフォメーションの前の広場、モーツァルトプラッツで大きく周り込んで町の中心に続いているんです。この大通りしか大型バスが通行できる道はありません。まさにメインストリートです。
バスは無事、駅前に到着。急坂を歩かずに楽して駅まで戻ってくることができました。

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さあ、駅前にある温泉、フェルゼンテルメに向かいます。



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バード・ガシュタイン:フェルゼンテルメで温泉三昧

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/6回目

チロルの温泉地、バード・ガシュタインBad Gasteinで滝の見物の後、駅前の温泉、フェルゼンテルメFelsenthermeを楽しむためにバスに乗って、駅に移動してきたところです。駅前の大通りにはガラス張りの歩道橋があります。それを渡ってみましょう。その上り口を探して、駅舎の横の建物に入ります。ここは下りの階段しかありません。何か変ですね。

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歩道橋の上に上るエスカレーターを発見しました。この歩道橋は単なる道路横断のためのものではなく、バード・ガシュタインの山の上に上るシュトゥブナーコーゲルバーンStubnerkogelbahnというロープウェイの乗り場への通路のようです。1000mほどの高度を一気に上るロープウェイですが、一昨日にもドイツで一番高いツークシュピッツェに登ってきたばかりですから、今日は温泉にします。

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ともかく、エスカレーターで上に上がります。エスカレーターは明るい陽光が降り注ぐ歩道橋のガラスホールに上っていきます。

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エスカレーターで上に上がると、駅の裏に大きな山が見えます。この山、シュトゥブナーコーゲルStubnerkogelをロープウェイで上れるようです。

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これがロープウェイ乗り場への通路です。

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反対方向のフェルゼンテルメ温泉への通路に向かいます。

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通路の端にフェルゼンテルメの看板があります。ここにも例の壺の紋章(バード・ガシュタインの町の紋章)が描かれています。

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左にぐるっと周り込むと、フェルゼンテルメの入り口があります。

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フェルゼンテルメの建物に入ると、大きな窓から、屋外の大きな温泉プールが見下ろせます。陽光を浴びて、気持ちよさそうです。

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温泉プールに浸かっている人はほとんどいません。みなさん、プールサイドのデッキチェアで寛いでいますね。

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おっと、飛び込み台から、大きな水しぶきを立てて、派手にプールに飛び込んだ人がいます。楽しんでいるようです。こっちも急いで入場しましょう。

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窓からは駅の向こうのシュトゥブナーコーゲルバーンの乗り場も見えています。

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さて、レセプションで入場の手続きをします。3時間からの時間制で入ります。バスローブを借りることにします。バスタオルより使い勝手が良いように思えますからね。

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ここから温泉三昧。プールやサウナ、日光浴を楽しみましょう。その前に水着に着替えます。着替えルームは男女の区別なし。このあたりは文化の違いを感じますが、もう慣れました。水着に着替え、バスローブを羽織って、温泉に向かいます。
1階は、家族向け。いくつかのお楽しみプールがあり、子供たちがにぎやかに遊んでいます。引率の大人は、日光浴ですね。緑の山々に囲まれて、気持ちが良いです。すべての施設を一通り試した後、いよいよサウナに向かいます。サウナはお約束通り、2階です。ここへは大人しか入れず、別料金です。2階の入り口で、中はスッポンポンだよと言われます。了解です。サウナの中は男女の別なしでスッポンポンだけど、サウナ間の移動にはバスローブを羽織ってもよいとのこと。また、サウナ内ではバスタオルは必須(バスローブではダメ)ということで、結局、バスタオルも借ります。2階の着替え室で水着を脱ぎます。2階の着替え室は男女別というのが不思議と言えば不思議。ここでは色んな温度のサウナを楽しみます。空いているので、ほかの人と一緒になることが少なく、夫婦水入らずはやはり気楽ですね。
さて、3階は、屋上になっていて、見晴らしがよいとのことですが・・・行ってみると、やはり、そこはアダムとイブの世界です。空いている寝椅子を探すほど、サウナエリアよりここの方が混んでいます。ビックリです。こじんまりとしているので、何とか過ごせそうです。チャレンジ! 思い切って、スッポンポンで寝椅子に転がり、全身で太陽を浴び、晴れ渡った青空と美しい山々を眺めていると、こんな裸の日光浴が癖になりそうです。全身を美しく焼くには、こうするしかありませんね。こちらの女性の夏のファッションは、肩も背中も丸出しですからね。
ここまで体験したら、もう完璧でしょう。すっかり我々もヨーロピアン(気分?)。
でも、やはり心底からは落ち着きません。この楽園から、そこそこに退散します。2階のサウナゾーンに降りると、アウグストゥス(当ブログで説明済ですが、熱い石に水をかけて水蒸気を上げて、バスタオルをぶんぶん回して熱い風を送る儀式でとても気持ちよいものです)が始まっていました。これはしくじった。どこかに開始時間が書いてあったのでしょうね。あきらめて、最後にミストサウナを楽しみます。ここは、バスタオルなしで(たしかに濡れる)、シャワーで座るところを洗い、出るときにも洗っておきます。先にはいっていた素敵な女性が指導してくれました。いろんなお作法があるものです。なかなかミストサウナは気持ちが良いです。
これにて温泉体験を完了。ちなみに今回も東洋人は我々だけでした。
冷たいもので水分を補給して帰ります。が、レセプションで清算して出ようとすると、わけのわからない集団が入場しようとしていて、1人しかいないスタッフが、その人たちの対応で手がいっぱい。かなり待たされます。予定の電車に遅れそうであせります。どうにか清算を終えて、駅に急ぎます。と言っても駅はすぐ通りを隔てたところです。
ホームに出ると、電車の時間の5分前でセーフ!

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ホームの上を見上げると、シュトゥブナーコーゲルバーンのロープウェイ乗り場への通路(歩道橋)が見えています。

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すぐに赤い車体のレールジェットがホームに滑り込んできます。何とか電車に間に合いました。

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温泉に入り、すっかりリラックスしました。また、ザルツブルクに戻る1時間半の鉄道の旅を楽しみましょう。今夜もザルツブルク音楽祭のコンサートが待っています。



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バード・ガシュタイン:ザルツブルクに戻って、また、音楽三昧

2017年8月3日木曜日@ザルツブルク~バード・ガシュタイン/7回目

チロルの温泉地、バード・ガシュタインBad GasteinでフェルゼンテルメFelsenthermeの温泉を楽しみました。連日のザルツブルク音楽祭のコンサート通いの疲れがすっかり取れたという感じです。さあ、予定通りの電車に乗って、ザルツブルクSalzburgに戻ります。往きと同様に帰りも格安チケットをネットで事前に購入済です。列車指定のシュパーシーネSparschieneというチケットで一人14ユーロです。もちろん、セカンドクラスで指定なしではあります。たった1時間半ほどの乗車ですから、ファーストクラスに乗るのはもったいないでしょう。もっとも往きはさらに安い9ユーロでしたが、この格安チケットは列車ごとに料金設定が変わります。

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バード・ガシュタインを出たレールジェットはガシュタイン渓谷の美しい緑の中を走っていきます。

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10分ほどで次の停車駅、バード・ホーフガシュタインBad Hofgasteinに到着。ここも温泉地です。

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車内販売が回ってきます。お馴染みのHenryという愛称の車内販売です。

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レールジェットはまた美しいチロルの野を走っていきます。

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次の停車駅、ドルフガシュタインDorfgasteinを過ぎて、広い平原の中をレールジェットは駆け抜けていきます。

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左手に小さな町が見えてきます。シュヴァルツァッハ・イム・ポンガウSchwarzach im Pongauのようです。

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この町の中に入っていきます。

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やがて、駅に近づきます。

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次の停車駅、シュヴァルツァッハ-ザンクトファイト駅Schwarzach-St.Veit Bahnhofに到着。

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すぐに出発して、町を離れていきます。

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次の停車駅、ザンクト・ヨーハン・イム・ポンガウSankt Johann im Pongauを過ぎると、また、次の町がすぐ近づいてきます。

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このあたりで、saraiの気は遠くなり、温泉の後の心地よい眠りに入っていきます。配偶者は相変わらず、熱心に車窓を眺めています。
次の停車駅、ビショフスホーフェンBischofshofenに到着。saraiはそんなことは知らずに夢の中です。

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走り出したレールジェットはザルツァッハ川Salzachの上流の傍らを抜けていきます。

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左手の山の上に古いお城が見えています。ホーヘンヴェルフェン城Erlebnisburg Hohenwerfenのようです。この城塞の起源は南から来る敵に対してザルツブルクを守るため、1077年に大司教ゲープハルトがこの堅城を築くところまで遡ります。また、お城の近くには、氷穴、アイスリーゼンヴェルト・ヘーレ Eisriesenwelt-Hoeleもあります。「氷の大世界の洞窟」という名で知られています。実は昨日、ここを訪れる予定でしたが、ちょっと疲れていたので、休養日にしました。もう、2度と訪れる機会はないでしょうね。

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ずっと、ザルツァッハ川に沿って走っていますが、なんだか、川の上に小さな虹が出ていますね。

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最後の停車駅、ゴリング・アプテナウGolling-Abtenauに到着。ザルツブルクが次の停車駅です。あと20分ほどです。

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ザルツブルク中央駅まで、あと10分というところで、宵闇に包まれてきた空に黒々と浮かび上がってきたのはウンタースベルクUntersbergですね。

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線路が大きく左に周り込んでザルツブルク中央駅に近づいていきます。その先にはまたもウンタースベルクが見えています。ザルツブルクのランドマークのような山です。

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無事、定刻の6時前にザルツブルク中央駅に到着。ザルツブルクに戻ると、もう夕暮れなのにまだ暑い! 今日はウィーンの方は記録的な暑さだったようです。やはり山間のバード・ガシュタインは涼しかったようですね。ホテルに戻って、急いで支度して、メゾソプラノのエリーナ・ガランチャの歌曲リサイタルを聴きに行きます。相変わらずの凄い美声に酔わされます。この歌曲リサイタルの詳細な記事はここに既にアップ済みです。

明日はマーラーを訪ねる小旅行です。マーラーが最も充実した日々に毎年の夏を過ごしたヴェルター湖Wörtherseeの湖畔の地マイアーニックMaierniggが目的地です。マーラーはここにある作曲小屋で数多の傑作を作曲しました。アッター湖の1番目の作曲小屋に続いて、これで2番目の作曲小屋を訪れることになります。首尾よく訪問できるでしょうか。



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ヴェルター湖:車窓から見るウンタースベルクとヴァッツマン

2017年8月4日金曜日@ザルツブルク~ヴェルター湖/1回目

旅の16日目、ザルツブルクSalzburgの通算9日目です。

今日はマーラーの跡を訪ねる小旅行に出かけます。最も充実した日々にマーラーが毎年、夏を過ごしたヴェルター湖Wörtherseeの湖畔の地、マイアーニックMaierniggが目的地です。この頃、マーラーは相当に裕福だったらしく、ここに広大な敷地(といっても湖畔から山中に広がる寂しい林ですが)を購入し、湖畔にはヴィラを、山中には作曲小屋を設けました。一番の目的はこの作曲小屋を訪ねることです。公開時間がお昼の1時までなので、急いで行く必要があります。最寄りのクラーゲンフルトKlagenfurt中央駅に11時過ぎに着くためにザルツブルクを8時過ぎのレールジェットに乗ります。で、今朝は早起きして、7時半前には、ホテルの前のバス停でバスを待ちます。

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予定通り、8時少し前にはザルツブルク中央駅に着き、朝食のパンと飲み物を調達して、ホームに行きます。既にクラーゲンフルト行きのレールジェットは入線しています。

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3時間という長旅になるので贅沢にファーストクラスに乗ります。

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チケットは超格安チケットをネットで購入済みです。3時間もファーストクラスに乗って、一人がたったの19ユーロです。その代わり、列車指定のチケットです。

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ファーストクラスに乗ったお陰で車内はがらがら。ゆったりと鉄道の旅を楽しめます。

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まだ、出発まで10分ほどあります。ザルツブルク中央駅の構内はがらんとしていますね。

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それでは、まずは調達した朝食をいただきましょう。

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食後のデザートは日本から持参したスナックです。

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いよいよ、レールジェットは発進します。10分近く経つと昨日も見えたウンタースベルクUntersbergが見えてきます。

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すぐに緑の野原の中に出て、青空を背景にくっきりとウンタースベルクが眺められます。

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だんだん、ウンタースベルクの眺めが変わり、山の全容が姿を現します。

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ウンタースベルクの次はヴァッツマンWatzmannを見たいものです。前方のほうに視線を変えます。岩山が見えますが、これは低い山ですから、ヴァッツマン山ではありません。

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おっと、前方の雲の中にそれらしい山が見えてきます。形は似ていますね。

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近づくと、山の先端が少し丸みを帯びていて、ちょっと形が違うようです。

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ヴァッツマン山系と思しき峰々が見えてきます。結局、どれがヴァッツマンかは分かりませんが、あの中のどれかがヴァッツマンなのかな。

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今日はとても天気がよく、周りの山々の景色に見とれてしまいます。まだ、ザルツブルクを出て、20分も経っていません。クラーゲンフルトはまだまだ遥か彼方です。ゆっくりと鉄道の旅を楽しみましょう。



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ヴェルター湖:昨日の訪問地バード・ガシュタインを通過

2017年8月4日金曜日@ザルツブルク~ヴェルター湖/2回目

マーラーの跡を訪ねる小旅行で、レールジェットに乗って、ヴェルター湖Wörtherseeの最寄りのクラーゲンフルトKlagenfurtに向かっているところです。
ヴァッツマンWatzmann山系と思われる眺めの前を走っていきます。

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最初の停車駅、ゴリング・アプテナウGolling-Abtenauに到着。

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ゴリング・アプテナウを出るとザルツァッハ川Salzachの美しい流れに沿ったり、離れたりしながら走ります。

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線路の両脇は山が迫っています。

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ザルツァッハ川の緑色の水面が印象的です。

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チロルの山間の地を走り続けます。

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遠くに大きな岩山が見えてきます。ホーホケーニヒ山Hochkönigでしょうか。ホーホケーニヒ山は標高2,941mの標高の山です。

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ホーホケーニヒ山と思しき山が緑の草原の向こうに見えています。

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やがて、前方にホーヘンヴェルフェン城Erlebnisburg Hohenwerfenが見えてきます。昨日も見た1077年に建てられた古い城塞です。

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樹々の上に古い城塞を仰ぎながら、レールジェットは走り過ぎます。

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小さな町、ヴェルフェンWerfenを通り過ぎます。氷窟が有名です。

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ビショフスホーフェンBischofshofen、ザンクト・ヨーハン・イム・ポンガウSankt Johann im Pongau、シュヴァルツァッハ-ザンクトファイト駅Schwarzach-St.Veit Bahnhofに次々と停車して、いよいよ、山を上って、バード・ガシュタインBad Gasteinに向かっていきます。

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このあたりは昨日訪れたバード・ガシュタインBad Gasteinを通っていくルートなので、既に見慣れた風景が続きます。ということで、昨夜は夜中までブログを書いていたsaraiは眠くなって、遂に爆睡モードに入ります。爆睡中に途中の停車駅、ドルフガシュタインDorfgastein、バード・ホーフガシュタインBad Hofgasteinを通り過ぎ、さらにはバード・ガシュタインBad Gasteinも過ぎて、マルニッツ・オーバーフェラッハ駅Mallnitz-Obervellach Bahnhofに向かっています。ここからはばっちり起きて車窓を楽しんでいた配偶者の観察状況です。

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山際の狭い草地で牛が草を食んでいます。

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次の停車駅、マルニッツ・オーバーフェラッハ駅に到着。

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目的地のクラーゲンフルトまで、あと1時間20分ほど。ようやく半ばを走ったところです。saraiは深い眠りの中です。



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ヴェルター湖:ヴェルター湖が見え、クラーゲンフルトまで、あとわずか

2017年8月4日金曜日@ザルツブルク~ヴェルター湖/3回目

マーラーの跡を訪ねる小旅行で、レールジェットに乗って、ヴェルター湖Wörtherseeの最寄りのクラーゲンフルトKlagenfurtに向かっているところです。
今、マルニッツ・オーバーフェラッハ駅Mallnitz-Obervellach Bahnhofに停車中。saraiは爆睡中で何にも分かっていませんけどね。

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マルニッツ・オーバーフェラッハ駅を出て、5分ほどすると、レールジェットは山腹の高みを走り、下方に広がる盆地のような平原を見下ろせます。配偶者はしっかり車窓の景色を楽しんでいます。

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特徴的な形の城塞が下に見えます。ブルク・ファルケンシュタインBurg Falkensteinのようです。オーバーフェラッハ近くにあるお城です。バイエルン王ルートヴィヒ2世が4番目の城として作ろうとした有名なファルケンシュタイン城Schloss Falkensteinとはまったく別の城です。

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雄大な眺めが下方に広がっています。

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やがて、美しい流れが見えてきます。メル川Möllです。

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しばらくすると、線路は山の中腹から下り、緑の草原の中を走ります。

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次の停車駅、シュピッタル・ミルシュテッターゼー駅Spittal-Millstätter See Bahnhofに到着。

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クラーゲンフルトまで1時間を切りましたが、まだ、saraiは夢の中です。

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レールジェットはシュピッタル・ミルシュテッターゼー駅を出発します。

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また、美しい草原の中を走っていきます。

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やがて、川の流れに沿って走ります。ドラバ川Dravaです。

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次の停車駅、フィラッハ中央駅Villach Hbfに到着。フィラッハはドラバ川ほとりのこの地方の中心都市です。

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クラーゲンフルトまで、あと30分を切ります。しかし、saraiは深い眠りの中。

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フィラッハ中央駅を出て、大きなフィラッハの市街地を抜けて、また、草原の中に出ます。

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草原の中に家が点在し、美しい眺めです。

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次の停車駅、フェルデン/ヴェルターゼー駅Velden/Wörther See Bahnhofを過ぎると、遂に車窓にヴェルター湖が姿を現します。

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このあたりは東西に細長く伸びるヴェルター湖の西端です。saraiが目が覚めるともうヴェルター湖でびっくりします。もう、クラーゲンフルトまで10分ほどです。そろそろ、電車を降りる支度を始めます。



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saraiの音楽総決算2018:ピアノ・室内楽編

今年もブログの締めくくりはsarai恒例の音楽総決算です。まだ、明日は東響のベートーヴェンの交響曲第9番、大晦日はみなとみらいホールでジルヴェスターコンサートを聴きますが、今日はピアノ・室内楽編ですから、今日から音楽総決算をスタートします。なお、現在進行している2017年の旅の詳細編はヴェルター湖が見えてきたところでいったん休止し、続きは年明け早々に再開します。

今年は国内・海外合わせて、厳選したコンサート・オペラに計94回足を運びました(昨年の計70回、一昨年の計80回に比べるとかなり増えて、最高記録です。ちょっと行き過ぎですね。)。それらについてはすべて当ブログで報告済みですが、今回から4回のシリーズでそれらからベストの音楽会を選んで、今年の音楽の総決算としたいと思います。

今回はピアノ・リサイタルと室内楽編です。今年もこのジャンルをたくさん聴きました。計43回です(昨年は計31回、一昨年は計36回)。内、ピアノ・リサイタルが17回、弦楽四重奏曲コンサートが12回、その他の室内楽コンサートが14回です。とりわけ素晴らしいピアノ・リサイタルに恵まれました。で、今年も、ピアノ・リサイタルと室内楽コンサートに分けて、ランキングしてみます。

ちなみに昨年の結果はここです。

まず、ピアノ・リサイタル部門です。ベスト10は次の通りです。ともかく、田部京子、アンジェラ・ヒューイット、アンドラーシュ・シフの3人は昨年に続き、今年も圧倒的に素晴らしく、感動の演奏でした。この3人は今や、saraiの最高にお気に入りの音楽家です。

1位 人生で一度きりのコンサート:ゴルトベルク変奏曲 The Bach Odyssey Ⅵ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2018.5.24

2位 
シューベルトとシューマン、極上!の素晴らしさ 田部京子@浜離宮朝日ホール 2018.6.22

3位 
ザルツブルク音楽祭:偉大なバッハ、偉大なシフ、平均律クラヴィーア曲集第2巻@ザルツブルク・モーツァルテウム大ホール 2018.8.16

4位 さよならはベートーヴェンで:マリア・ジョアン・ピリス・ピアノ・リサイタル@サントリーホール 2018.4.12

5位 ただただ感動!アンナ・ヴィニツカヤ ピアノ・リサイタル@サントリーホール 2018.2.2

6位 シューベルティアーデ賛 田部京子@浜離宮朝日ホール 2018.12.19

7位 圧巻のロ短調フーガ:平均律クラヴィーア曲集第1巻 The Bach Odyssey Ⅴ アンジェラ・ヒューイット@紀尾井ホール 2018.5.22

8位 河村尚子の美しき疾走 ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト Vol.1@紀尾井ホール 2018.6.1

9位 究極のドビュッシー《花火》 イリーナ・メジューエワ・ピアノ・ソナタ・リサイタル@東京文化会館 小ホール 2018.12.1

10位 伊藤恵 ピアノ・リサイタル@横浜上大岡ひまわりの郷ホール 2018.5.20

アンジェラ・ヒューイットの弾くバッハの素晴らしさには毎回驚かされますが、とりわけ、ゴルトベルク変奏曲は途轍もない高みの演奏でした。人生で何度も出会えるような演奏ではありません。平均律クラヴィーア曲集第1巻も素晴らしいとしか言えない演奏でした。来年はどんなバッハを聴かせてくれるでしょう。(1位と7位)

田部京子のシューベルトは遂に遺作ソナタのすべてを聴けました。こんな素晴らしい演奏が日本人ピアニストによって聴けるとは彼女に出会う前は想像もしていませんでした。今はせっせと彼女の過去のアルバムを収集して聴いているところです。全35枚のCDを聴く楽しみは並行して聴いているハスキルの全録音と共にsaraiの無上の宝物です。彼女が来年も続けるシューベルト・プラスのシリーズはアンジェラ・ヒューイットのThe Bach Odysseyと共に一番の楽しみです。(2位と6位)

アンドラーシュ・シフの弾くバッハの平均律クラヴィーア曲集第2巻を遂に聴くことができました。ただ、それだけで幸せでした。再来年は来日コンサートでブラームスの後期作品のすべてを弾いてくれるようです。今から楽しみです。

マリア・ジョアン・ピリスは聴き納めのリサイタルでした。とてもよいベートーヴェンのソナタを聴いて、やはり、彼女は名人だったと強い感銘を受けました。

アンナ・ヴィニツカヤは予想もしていなかったショパンの素晴らしいプレリュードを聴かせてもらい、とっても感動しました。田部京子やアンジェラ・ヒューイットのリサイタルに割って入るほどの特別な演奏でした。

河村尚子のベートーヴェンのソナタのシリーズも好調です。来年はいよいよ後期のソナタに突入します。とても期待しています。

初めて聴いたイリーナ・メジューエワのピアノは予想を大きく上回る演奏でした。お気に入りの仲間入りになりそうです。

伊藤恵のリサイタルは最高の出来。ベートーヴェンもシューマンもショパンも最高水準の演奏でとても魅惑されました。シューマンをさらに聴きたいし、シューベルトの遺作ソナタも聴きたいです。

次は室内楽部門です。ヒラリー・ハーンの念願のバッハの無伴奏の全曲が聴けkたこと。今年はそれに尽きます。感動の演奏でした。ベスト10は次のとおりです。

1位 夢の一夜・・・ヒラリー・ハーン バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ@東京オペラシティ コンサートホール 2018.12.3

宇宙の深淵・・・ヒラリー・ハーン バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ@東京オペラシティ コンサートホール 2018.12.5

2位 
最高のシューマン:フォーレ四重奏団@トッパンホール 2018.10.1

3位 
秋の夜のブラームスに酔う:フォーレ四重奏団@トッパンホール 2018.10.5

4位 ロータス・カルテット:ベートーヴェン後期弦楽四重奏曲の2大名作を聴く@鵠沼サロンコンサート 2018.3.13

5位 ロータス・カルテット:驚きのアンコール@鶴見サルビアホール 2018.2.13

6位 室内楽の楽しみ極まれり:クァルテット・ベルリン=トウキョウ@鶴見サルビアホール 2018.2.13

7位 ドヴォルザーク・プロジェクト第1夜:ウィハン・カルテット@鶴見サルビアホール 2018.9.21

ドヴォルザーク・プロジェクト第2夜:ウィハン・カルテット@鶴見サルビアホール 2018.9.25

もう一つの《アメリカ》~ドヴォルザーク・プロジェクト第3夜:ウィハン・カルテット@鶴見サルビアホール 2018.9.26

8位 圧巻のブラームスの弦楽六重奏曲 第1番 カルテット・アマービレ、磯村和英、ズロトニコフ@鶴見サルビアホール 2018.2.7

9位 繊細かつ充実した響き:ヴォーチェ弦楽四重奏団@鶴見サルビアホール 2018.11.5

10位 藤木大地の絶唱! 高木綾子の超絶技巧!@宮崎芸術劇場演劇ホール 2018.5.11

ヒラリー・ハーンのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの全曲演奏は長年、夢に見てきたリサイタルでした。予期した以上の素晴らしさに報われた思いです。

フォーレ四重奏団の2年前の演奏は期待を裏切るものだっただけに、今回のシューマンとブラームスの素晴らしさには言葉もない嬉しさでした。(2位と3位)

ロータス・カルテットのベートーヴェンの後期の3曲(13番、14番、15番)はいつ聴いても素晴らしいです。凄い日本人クァルテットが出現したものです。(4位と5位)

クァルテット・ベルリン=トウキョウの清新な演奏には驚かされました。次の来日が楽しみです。

ウィハン・カルテットのドヴォルザーク・プロジェクトは予想以上の出来でした。とりわけ、珍しい糸杉(Cypresses)が聴けたのが収穫でした。

カルテット・アマービレ、ヴォーチェ弦楽四重奏団という女性中心の団体が活躍したのも今年の特徴でした。音楽も素晴らしいですが、容姿も素晴らしい・・・。

武満徹と彼の仲間たちの作品が11人の日本を代表する演奏者たちによって熱演されました。カウンターテナーの藤木大地による《Songs》の熱唱は心を打たれました。

一応、この部門全体を通した最上位を決めておきましょう。それは以下です。

ヒラリー・ハーンのバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの全曲演奏

今年もピアノは高いレベルの演奏ばかりでしたが、やはり、長年待ち続けたヒラリーのバッハの魅力に優るものはありません。全曲演奏を聴くのは最後の機会だったかもしれません。

次回はオペラ編です。



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驚異的に精妙な《四季》、感動の《第9》 秋山和慶&東響@サントリーホール 2018.12.28

モダンオーケストラの東京交響楽団ですが、弦の精鋭たちを選りすぐったアンサンブルでヴィヴァルディの《四季》を演奏すると、まるでバロック専門の合奏団に変身したみたいに恐ろしいまでの精妙な響きを聴かせてくれます。第1番の《春》の第1楽章でヴァイオリンのソロの辻 彩奈、コンサートマスターの水谷 晃、第2ヴァイオリンの首席(服部亜矢子?)の3人が絶妙なアンサンブルを奏でると、あまりの美しさに変な感情が沸き起こり、泣きそうになってしまいます。完璧なアンサンブルの《四季》でした。初めて聴いた辻 彩奈もまだ21歳とは思えない堂々たる演奏で、ヴァイオリンの美音に魅了されました。ヴァイオリンはG.B.ガダニーニだとのこと。ストラディバリウスかガルネリ・デル・ジェスを早く持たせてあげたいですね。こんなに素晴らしい《四季》なら、是非、全曲を聴きたかったところです。

ベートーヴェンの交響曲 第9番は第3楽章も美しい演奏でしたが、やはり、第4楽章の後半のオーケストラの美しい響きと大編成の東響コーラスの合唱が交錯しながら、高潮していく様は感動するしかありません。残念だったのは、期待していたソプラノの中村恵理とメゾ・ソプラノの藤村実穂子の声があまり響いてこなかったことです。とりわけ、中村恵理は彼女が登場するので、このコンサートに駆け付けたのに残念至極・・・。

来年の東響の第9はジョナサン・ノットの指揮さそうですから、聴き逃がせません。

そうそう、今日がサントリーホールの聴き納めです。今年も随分、サントリーホールに通いました。今日で17回です。

今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮&チェンバロ:秋山和慶
  ヴァイオリン:辻 彩奈
  ソプラノ:中村恵理
  メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
  テノール:西村 悟
  バス:妻屋秀和
  合唱:東響コーラス(合唱指揮:安藤常光)
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷 晃

  ヴィヴァルディ: ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」Op.8 から第1~4番「四季」~春・冬

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付」

   《アンコール》
    蛍の光 AULD LANG SYNE


最後に予習について、まとめておきます。

ヴィヴァルディの「四季」を予習したCDは以下です。

  ファビオ・ビオンディ(Vn)、エウロパ・ガランテ 2000年、新録音

オリジナル演奏の代表格のようなCDです。新鮮な印象を受けます。でも、イ・ムジチ合奏団が懐かしくも感じられます。


ベートーヴェンの交響曲 第9番を予習したCDは以下です。

  フェレンツ・フリッチャイ指揮ベルリン・フィル,聖ヘトヴィヒ大聖堂聖歌隊
   イルムガルト・ゼーフリート、モーリン・フォレスター、エルンスト・ヘフリガー、ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
    1957~58年録音

フリッチャイの素晴らしい指揮が聴けます。ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウが唯一、この曲を歌った録音でもあります。若々しい歌唱です。



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       中村恵理,        辻彩奈,  

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saraiの音楽総決算2018:オペラ・オペレッタ・バレエ編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回はオペラ・オペレッタ・バレエ編です。
今年もオペレッタとバレエは見ていません。ウィーンに行っていないからでしょう。そのせいでオペラもたったの9回しか見ていません。しかし、海外で見たオペラはザルツブルク音楽祭とバイロイト音楽祭。その極め付きの5回は圧巻でした。国内での4回のオペラはすべてコンサート形式ですが、これらも素晴らしい内容でした。オペラの数は少なくてもオペラの素晴らしさに酔った1年でした。
それにしても、オペラは大好きですから、また、ウィーンで思いっ切り、オペラ三昧したいですね。saraiのヨーロッパ旅行の原点はウィーン国立歌劇場でオペラを見たいということでしたから、原点回帰を果たしたいものです。

ちなみに昨年の結果はここです。

で、今年は以下をベスト5に選びました。同列5位があるので、6公演選びました。

1位 極上の音楽に衝撃!!歌劇《ポッペアの戴冠》クリスティ指揮レザール・フロリサン@モーツァルト劇場 2018.8.15

2位 バイロイト音楽祭:ティーレマンの極上の音楽に感動!楽劇《トリスタンとイゾルデ》@バイロイト祝祭劇場 2018.8.24

3位 ザルツブルク音楽祭:抱腹絶倒の末の感動 バルトリの《アルジェのイタリア女》@モーツァルト劇場 2018.8.16

4位 バイロイト音楽祭:清澄な響きに感動!舞台神聖祝典劇《パルジファル》@バイロイト祝祭劇場 2018.8.25

5位 想像を絶する感動!中村恵理の『蝶々夫人』@宮崎芸術劇場 2018.5.13

5位 涙、涙の大団円!ノット&東響《フィガロの結婚》@サントリーホール 2018.12.9


昨年も書きましたが、ザルツブルク音楽祭では異次元の音楽体験ができます。昨年のクルレンツィス指揮ムジカエテルナの演奏したモーツァルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」はsaraiの価値観をひっくり返すようなものでした。今年もバロック界の大御所、ウィリアム・クリスティが名人たちを集めて作り上げたモンテヴェルディの歌劇《ポッペアの戴冠》はオペラの原点はかくの如きものかと驚愕する内容でした。400年前には、現代と変わらぬレベルのオペラ鑑賞ができていたのですね。そのときから、音楽、オペラは発展したと言えるのか・・・深刻に考え込んでしまいました。実に中身の濃い内容で、音楽的にも最高のものを与えられました。文句なしの今年のトップです。

最後に残った夢はバイロイト音楽祭でワーグナーを聴くことでした。それも今年叶いました。聴くなら、楽劇《トリスタンとイゾルデ》か舞台神聖祝典劇《パルジファル》と決めていました。特別な作品ですからね。そのどちらも聴くことができ、ワーグナーの理想の音・響きとはこういうものだったのかと深く納得しました。最高のワーグナー体験になりました。(2位と4位)

チェチーリア・バルトリのロッシーニを聴くのは無上の喜びです。何と魅力的な歌唱、超絶的なアジリタだったでしょう。笑いも感動もある究極のロッシーニでした。

同列5位は国内のコンサート形式オペラの2つです。内容的にはザルツブルク音楽祭にも匹敵するような素晴らしい公演でした。

まず、宮崎音楽祭での『蝶々夫人』は日本人ソプラノの中村恵理の絶唱にノックダウンされました。これほどsaraiを感動させたソプラノはミレッラ・フレーニだけです。素晴らしいソプラノに出会えました。

一昨年、昨年に引き続き、ジョナサン・ノット&東響の演奏するモーツァルトのダ・ポンテ3部作のコンサート形式での公演を聴きました。素晴らしい《フィガロの結婚》でした。ミア・パーションはじめ、ジェニファー・ラーモア、マルクス・ヴェルバ、リディア・トイシャー等の歌手の素晴らしい歌唱とノット&東響の最高のアンサンブルを堪能しました。これで終わるのはあまりにもったいないです。


次回はオーケストラ・声楽曲編です。


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saraiの音楽総決算2018:協奏曲編

さて、前回に引き続き、今年の音楽の総決算です。

今回は協奏曲編です。
今年はチョン・キョンファの恐ろしいほどの気魄のヴァイオリンに圧倒されました。けた外れの芸術家です。文句なしのトップです。アヴデーエワのピアノには今年も魅了されました。初めて実演を聴いたバティアシュヴィリはやはり、魅力たっぷりで、たちまち、お気に入りの仲間入りです。庄司紗矢香は指揮者がテミルカーノフだったら、多分、1位を分け合ったでしょう。全般にレベルの高い演奏が多く、下の順位に付けることが心苦しく感じます。
ちなみに昨年の結果はここです。

今年は以下をベスト10に選びました。

1位 恐るべし!チョン・キョンファ 圧倒的なブラームス@宮崎芸術劇場 2018.5.6

2位 ピアニッシモが心に沁みるブラームスのピアノ協奏曲・・・アヴデーエワ&フルシャ&バンベルク交響楽団@サントリーホール 2018.6.26

3位 魅惑のバティアシュヴィリ バレンボイム&ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団@ザルツブルク祝祭大劇場 2018.8.17

4位 庄司紗矢香、気魄のシベリウス・・サンクトペテルブルク・フィル@サントリーホール 2018.11.12

5位 はじけるようなユジャ・ワンのプロコフィエフ ゲルギエフ&ミュンヘン・フィル@サントリーホール 2018.12.2

6位 ヴィルサラーゼと小林研一郎の見事なベートーヴェン 読売日本交響楽団@サントリーホール 2018.7.5

7位 ヒラリー最高! ヒラリー・ハーン、ヤルヴィ&ドイツ・カンマーフィル@宮崎芸術劇場・アイザックスターンホール 2018.12.16

8位 ファウストの奏でるブラームスは一味違う・・・カンブルラン&読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2018.1.21

9位 絶好調ルガンスキーのチャイコフスキー、テミルカーノフはさすがのラフマニノフに納得・・・読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2018.2.12

10位 モーツァルトのハ長調の協奏曲に感動! パユ&読売日本交響楽団@サントリーホール 2018.11.28


チョン・キョンファの実力を初めて実感しました。こんなに凄い芸術家だったのですね。完全に復活したようです。いやはや、圧倒されまくりました。

アヴデーエワはこのブラームスのピアノ協奏曲を初めて弾いたそうですが、素晴らしい仕上がりでした。彼女は本当に何を弾かせても、その本質を突く演奏をします。音楽性の高さには舌を巻くばかりです。

初めて実演に接したリサ・バティアシュヴィリの魅力に憑りつかれてしまいました。是非、また来日してもらいたいものです。

庄司紗矢香の気魄の演奏には驚かされました。ますます、高みに上っていくことが実感できました。世界でブレークする日も近いでしょう。

ユジャ・ワンの魅力も相変わらずです。本編もさることながら、アンコール曲の超絶技巧にも魅了されました。

ヴィルサラーゼと小林研一郎の奏でるベートーヴェンは達人たちの境地の音楽を感じさせられました。見事な演奏でした。

ヒラリー・ハーンのモーツァルト、とても素晴らしく、彼女も復活してくれたことを確信しました。ただ、彼女の弾いたバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ&ソナタの素晴らしさに比肩できるものではありません。モーツァルトでなければ、もっと大きく評価できたでしょう。人間、万能ではありませんから、すべての作品の演奏が最高というわけではありません。

イザベル・ファウストのブラームス、とても素晴らしかったです。もっと順位を上げたいのですが、他のコンサートの演奏が素晴らし過ぎました。

ルガンスキーのチャイコフスキーは冒頭はもうひとつでしたが、第1楽章の途中から、別人のようになり、のりのりの凄い演奏になりました。冒頭から絶好調だったなら、トップ5以上のランクになったでしょう。今後、注目のピアニストです。

エマニュエル・パユの演奏したモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲は出色の出来でした(ハープはパユと同じくベルリン・フィルの首席ハーピストのマリー=ピエール・ラングラメ)。ピアノやヴァイオリンとの比較が難しいので、このあたりの順位になりましたが、これもトップ5でも問題ない素晴らしさでした。パユのフルートの素晴らしさを実感しました。また、機会があれば、聴きたい音楽家の一人です。

いよいよ、次回は最終回、大賞も発表します。そして、大晦日でもありますね。


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saraiの音楽総決算2018:オーケストラ・声楽曲編、そして、今年の大賞は?

今年の音楽の総決算もいよいよ最後になりました。そして、ブログも今年の書き納めです。

今回はオーケストラ・声楽曲編です。
このジャンルは今年もたくさんのコンサートを聴きました。素晴らしい演奏が多過ぎて、選定が難航しました。で、オーケストラと声楽曲を比較するのは難しいので、今年はオーケストラはベスト10、声楽曲はベスト5に分けて、選定することにしいました。

ちなみに昨年の結果はここです。

まず、声楽曲のベスト5は以下です。

1位 マーラー/リュッケルト歌曲集に感動!!藤村実穂子リーダーアーベントV@紀尾井ホール 2018.2.28

2位 聖金曜日に響き渡る感動のマタイ受難曲、バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2018.3.30

3位 シューマンに酔う:クリストフ・プレガルディエン リートの森@トッパンホール 2018.11.9

4位 モーツァルトの人生すべてに対峙するかの如く、新首席指揮者の鈴木優人の躍動 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール 2018.9.24

5位 名人たちの饗宴、クリスマス・オラトリオ バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2018.11.23

次点 素晴らしき隠れ合唱隊?・・・フランコ・ファジョーリ・リサイタル@東京オペラシティ コンサートホール 2018.11.22

藤村実穂子は今や、世界を席巻するメゾ・ソプラノ。その美声には魅了されます。ワーグナー歌手だと思っていた彼女が素晴らしいマーラーを聴かせてくれました。とても感動しました。

日本にいてこそ聴けるのがバッハ・コレギウム・ジャパン。マタイ受難曲もクリスマス・オラトリオも、そして、モーツァルトのレクイエムも素晴らしかったです。(2位と4位と5位)

クリストフ・プレガルディエンのシューマンには酔いました。とりわけ、《詩人の恋》には魅了されました。

フランコ・ファジョーリも素晴らしかったのですが、それ以上にアンコールでの「私を泣かせてください」での客席の女性たちの美しいソプラノは最高でせめて、次点には置きたくなりました。素晴らしい音楽家と聴衆との交流に気持ちが熱くなりました。


で、いよいよ、オーケストラ部門です。今年はベスト10は以下です。

1位 何という《春の祭典》・・・ロト、レ・シエクル@東京オペラシティ コンサートホール 2018.6.12

2位 極美のアダージョに深く感動!マーラー:交響曲第9番・・・ラトル&ロンドン交響楽団@横浜みなとみらいホール 2018.9.28

3位 破竹の勢いの東響、奇跡の名演 エッティンガー渾身の幻想交響曲・・・東京交響楽団@サントリーホール 2018.10.20

4位 コバケン、超絶の幻想交響曲 読売日本交響楽団@みなとみらいホール 2018.3.21

5位 マーラー&ブルックナーで最高のシーズンスタート・・・ノット&東京交響楽団@サントリーホール 2018.4.14

6位 精緻を究めたフルシャ指揮の新世界交響曲・・・バンベルク交響楽団@横浜みなとみらいホール 2018.6.28

7位 圧巻のブルックナー ブロムシュテット&ウィーン・フィル@ザルツブルク祝祭大劇場 2018.8.18

8位 ティーレマンのシューマンは凄かった!・・・シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2018.10.31

9位 軽やかな蝶の飛翔にも似て・・・ミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル@東京オペラシティコンサートホール 2018.2.27

10位 私はマーラーの9番を聴くために生まれてきた! カンブルラン&読売日本交響楽団@サントリーホール 2018読売日本交響楽団@サントリーホール 2018.4.20

今年の1位はロト、レ・シエクルの《春の祭典》。文句なしです。

2位は新たにロンドン交響楽団の首席指揮者になったラトルのマーラーの交響曲第9番。壮絶で美しいアダージョでした。

3位と4位は東響と読響の幻想交響曲。選には洩れましたが都響も含めて、オーケストラ演奏の究極でした。

5位は今やsaraiの一押しのジョナサン・ノット&東響の定期の開幕コンサート。テレビでも放映されましたが、素晴らしいマーラーとブルックナーでした。このコンビを1位にしてもよかったのですが、それは来年以降にとっておきましょう。なお、このコンビのコンサートはすべてが最高でしたが、一応、このコンサートだけに絞っておきました。

6位は東京都交響楽団を去って、バンベルク響の首席指揮者になったフルシャの凱旋公演。彼の洋々たる未来が感じられたコンサートでした。とてもバンベルク響におさまる器ではありません。


7位は最高齢の指揮者ブロムシュテットとウィーン・フィルによるブルックナー。素晴らしい演奏で当然です。

8位はティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデンのシューマン・ツィクルス。第2番が素晴らしい演奏でした。

9位はミンコフスキ&レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルのメンデルスゾーン。さすがの実力でした。もっと上位にすべきだったかもしれません。

10位はカンブルランのマーラーの交響曲第9番。カンブルランがこれほどのマーラーを聴かせてくれるとは・・・。


ジャジャーン!
ここで今年の大賞発表です。

 ヒラリー・ハーンのバッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲@東京オペラシティ コンサートホール

全6曲、すべて最高の演奏でした。とりわけ、ソナタ3曲が素晴らしかった! もちろん、シャコンヌには感動しました。10年以上も前からのsaraiの大きな夢が期待以上の演奏で叶いました。

最後まで迷ったのはザルツブルク音楽祭のクリスティーのモンテヴェルディ《ボッペアの戴冠》、そして、チョン・キョンファのブラームスのヴァイオリン協奏曲。いずれも破格の演奏でした。

来年の感動に期待しながら、今年の総括は幕としましょう。

今年も当ブログを読んでいただいたみなさんには感謝です。また、来年も引き続き、ご愛読ください。


saraiはこれから、みなとみらいホールのジルヴェスターコンサートに出かけます。今年も音楽で年越しです。

皆さま、よいお年を!!


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

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