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はじけるようなユジャ・ワンのプロコフィエフ ゲルギエフ&ミュンヘン・フィル@サントリーホール 2018.12.2

2年前のコンサートで恋に落ちてしまったユジャ・ワンのコンサートに駆け付けました。そして、ユジャは期待通りのはじけるような演奏でsaraiを満足させてくれました。前回はショスタコーヴィチでしたが、今回のプロコフィエフのような近代ものでは無敵の演奏を聴かせてくれます。特に高速演奏で激しいバルバリズムのパートでは無類の魅力を発揮します。その小さな体がゴムまりのように弾んで、鍵盤を叩きつける様は痛快そのものです。そのヴィジュアルも30歳を超えた今も健在です。ゴールドに輝く露出度の大きなミニドレスはユジャならではファッションです。こういう服装が似合うピアニストはいませんね。まあ、目に毒ですが・・・。第3楽章はユジャの目くるめくような演奏に耳を奪われます。そして、終盤はさらに演奏が高潮して、圧倒的なフィナーレに至ります。とっても聴き映えしました。しかし、これで終わらないのがユジャ。アンコールはさらに刺激的な演奏です。低音の鍵盤を叩きつけ始めます。これって、まさにトッカータだなと思っていたら、本当に曲目もプロコフィエフのトッカータでした。この曲も凄い曲ですね。(ホロヴィッツとアルゲリッチの演奏をCDで昔聴いたことを思い出しました。) そして、最後は18番のs。例の超絶技巧版です。ヴォロドスやサイが弾く曲ですね(ヴォロドスとサイはそれぞれ別の編曲)。今日の演奏はヴォロドスとサイの編曲をもとにさらにユジャ自身の編曲も入れたもののようです。モーツァルトがこれを聴いたら、きっと喜んで、さらに凄い即興演奏を繰り出しそうな気がします。実はこの超絶技巧のトルコ行進曲を生で聴くのは初めてです。遂に生で聴けて嬉しい限りです。

前半のユジャ・ワンのプロコフィエフが大変よかったので、後半のゲルギエフ&ミュンヘン・フィルのブルックナーの交響曲第9番も大変、期待します。ミュンヘン・フィルと言えば、ブルックナーの名演の数々を残してきた名門オーケストラだし、指揮は天下のゲルギエフですからね。しかし、結果はがっくり。第1楽章はまるでパステル画のような淡い色彩の演奏で、特に弦の音が響かずに薄い響きです。第2楽章はようやく響きが轟き始まますが、悪く言えば、賑やかなだけで退屈です。しかし、第3楽章に至り、ようやく、美しい弦の響きが聴けるようになります。終始、金管は響いていましたから、バランスのとれた美しいフレージングの演奏です。ぐっと前のめりになって聴き入ります。しかし、響きは美しいのに心に感動の気持ちが沸いてきません。ゲルギエフの指揮にはブルックナーへのシンパシーが欠けているような気がします。ブルックナーが神に捧げる愛を音楽に込めたのに、指揮しているゲルギエフが無機的な美しさしか表現していないとしか思えません。ゲルギエフはブルックナーに向いていないのでしょうか。とても残念な演奏でした。会場のみなさんは大きな拍手を送っていましたが、オーケストラが退場しようとするとさっさと拍手は終了。みなさんもそんな感じだったのですね。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ワレリー・ゲルギエフ
  ピアノ:ユジャ・ワン
  管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

  プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 ハ長調 op.26
   《アンコール》 プロコフィエフ:トッカータ ニ短調 Op.11
           モーツァルト(ヴォロドス、サイ、ユジャ・ワン編):トルコ行進曲

   《休憩》

   ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調


最後に予習について、まとめておきます。以下のヴィデオを見て、そして、聴きました。

 プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番
  ユジャ・ワン、クラウディオ・アバド指揮ルツェルン祝祭管弦楽団 2009年8月11-15日、ルツェルン音楽祭 Blu-ray

今から9年前、ユジャ・ワンが若干22歳だった頃、ルツェルン音楽祭の大舞台で巨匠クラウディオ・アバドに憶することなく、会心の演奏を聴かせてくれています。当時、このヴィデオを見たsaraiは末恐ろしいピアニストが出現したと思ったことを覚えています。今、見直すと、既に現在のユジャ・ワンと変わらぬ演奏がそこにありました。変わったのは今よりもとても若かったことくらいです。彼女の演奏は耳で聴くだけでなく、目で見るとさらに価値が増します。

 ブルックナー:交響曲第9番
  ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団 2001年7月8日 ムジーク&コングレス・ハレ(リューベック) ライヴ収録 DVD

ギュンター・ヴァント89歳、亡くなる半年前の貴重な演奏の映像記録です。ドイツのリューベックで開催されたシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭のコンサートを収録したものです。このコンサートに先立つ半年前の2000年11月には同じコンビの伝説的な来日公演がありました。それもヴィデオ化されていますが、saraiは未聴です。このリューベック公演は素晴らしい演奏です。あの最盛期のミュンヘン・フィルと優劣つけ難い美しい響きの演奏を聴かせてくれます。冒頭ではさすがに老人の表情を見せているヴァントが第3楽章では鋭い目の表情で若々しくもあるのがとても印象的です。素晴らしい指揮です。ヴァントの数々のブルックナー演奏の中でも出色の出来です。今日のゲルギエフ&ミュンヘン・フィルの演奏はもうひとつでしたが、予習でこのDVDに出会えたのが大きな収穫でした。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai

私も18年前にドレスデンでバームクーヘン食べました。マイセンではB級品でもコーヒー茶碗1客日本円で5万円程して庶民には高くて買えなかったですよ。奥様はもしかして◯良女

06/18 08:33 五十棲郁子

 ≪…明恵上人…≫の、仏眼仏母(ぶつげんぶつも)から、百人一首の本歌取りで数の言葉ヒフミヨ(1234)に、華厳の精神を・・・

もろともにあはれとおもへ山ざくら 花よりほか

通りすがりさん

コメント、ありがとうございます。正直、もう2年ほど前のコンサートなので、詳細は覚えておらず、自分の文章を信じるしかないのですが、生演奏とテレビで

05/13 23:47 sarai
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