FC2ブログ
 
  

妙なる響きの教会カンタータに感動 バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル 2019.3.3

バッハ・コレギウム・ジャパンはいつも素晴らしい演奏で魅了してくれますが、実は教会カンタータだけを聴くのは初めてです。あまり、教会カンタータは聴いていないので、若干の不安がありましたが、杞憂でした。実に素晴らしい響きでバッハの世界を堪能させてくれました。

最初は鈴木 優人のオルガン独奏で、オルガン・コラール4曲です。いずれも原曲のコラールは《ただ愛するみ神にすべてを委ね》Wer nur den lieben Gott läßt waltenです。合唱コラールのカンタータ93番 BWV93の第7曲のコラールもバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏でやってくれれば、もっとよかったんですけどね。原曲が同じでも、4曲の色合いが多彩なことに驚かされる演奏でした。BWV 642の壮麗なコラールで最後は〆られました。同じコラール曲をまとめて聴ける企画はよかったです。

本番はこの後の教会カンタータ3曲です。

第150番の第1曲のシンフォニアで、冒頭から、若松夏美率いる弦のパートの響きの素晴らしさに驚嘆します。バス部を支える通奏低音も素晴らしいです。チェロの山本徹とオルガンの鈴木優人が見事に演奏しています。すぐに第2曲で合唱がはいってきます。その歌唱の美しい響きに聴き惚れます。ソロ歌手も美しい歌唱です。聴き惚れているうちにこの短いカンタータはすぐに終わります。因みに終曲の合唱のシャコンヌはブラームスが交響曲第4番の第4楽章のパッサカリアの主題に用いたとのことですが、ブラームス好きのsaraiが耳をすませてもその旋律は分かりません。バスの4小節を引き延ばして使ったということですから、そんなに直接的に引用したのではないのですね。そういえば、この第150番のカンタータはバッハが作曲した最初のカンタータだそうです。楽器編成も曲の構成もシンプルです。ですが、さすがにバッハだと思わせる素晴らしい演奏でした。

第12番は楽器編成が拡大します。弦ではヴィオラが加わり、オーボエとトランペットも加わります。第1曲のシンフォニアはまるでオーボエ協奏曲です。オーボエはバロック・オーボエか、オーボエ・ダ・モーレか、分かりませんが、名人の三宮正満の演奏は素晴らしさの限りです。第2曲の合唱では沈み込んだ深い表現が印象深いです。第4曲のオーボエのオブリガートと絡みながら、アルト(カウンターテナー)の見事な歌唱が心に迫ります。でも、三宮正満のオーボエが凄すぎますね。第6曲では、通奏低音の響きにのって、テノールのアリアが始まります。そのテノールにすぐにトランペットの素朴な響きのオブリガートが絡みます。通奏低音のファゴットも印象的に響きます。実に聴き応えのあるアリアです。バッハの天才ぶりにBCJの演奏水準の高さが際立ちます。終曲の合唱はコラールですね。心が癒される思いです。トランペットの響きも色を添えます。

ここで休憩。いやはや、ここまででバッハの教会カンタータの魅力に憑りつかれました。

第21番は最長のバッハの教会カンタータだそうです。実際、聴き応え十分でした。楽器編成もトランペットが3本に増強されて、ティンパニも加わります。もっとも、今日演奏する第3稿:ライプツィヒ版では、第9曲の合唱にトロンボーン4本が加わる筈ですが、今日はそれは抜きのようです。第1曲のシンフォニアは通奏低音の刻むリズムにのって、オーボエが美しく奏されます。三宮正満の演奏はさらに研ぎ澄まされた表現です。うっとりとして、聴き入ります。第2曲の合唱では、表題の《わが心に憂い多かりき》の憂いが最高に美しい響きで歌い上げられます。対位法の限りが尽くされる素晴らしい合唱曲を何と見事に歌い上げるのでしょう。楽興のすべてがそこにあります。第3曲ではオーボエが憂いに満ちた旋律を奏で上げます。その旋律をソプラノのハナ・ブラシコヴァが美声の限りを尽くして、引き継いでいきます。やがて、ソプラノとオーボエが対話するかの如く、この世の憂いの限りを繰り返し、繰り返し、続けます。心が痛みます。続いて、短いレシタティーボに続き、テノールが幾分明るいアリアを歌います。心の平安が得られるかのごとくです。伴奏の弦の旋律の美しさにも心を奪われます。第6曲の合唱ではソロとトゥッティが交代しながら、哀しみに満ちた歌唱を聴かせてくれます。続いて、ソプラノ独唱とバス独唱がレシタティーボと2重唱を歌いますが、またしても、ハナ・ブラシコヴァの澄み切った美声にうっとりと聴き入ります。まったく、このハナ・ブラシコヴァは以前聴いたときもかってのレリ・グリストを思い出させる美声と書きましたが、今はそれ以上の素晴らしさに思えます。今やBCJに欠かせないソプラノですね。第9曲はソロに始まる合唱で、時折、トゥッティがバックコーラスのように歌われます。繰り返し同じ旋律が続きながら高揚していきます。オーボエが加わったところで、図らずも感動してしまいます。このカンタータの最高の楽曲です。テノールと通奏低音のアリアを挟んで、終曲の合唱にはいっていきます。全楽器が演奏に加わり、祝祭的に盛り上がります。3本のトランペットとティンパニの出番です。ここでも合唱はソロとトゥッティが交代しながら進行します。その華やかさに気をとられているうちにあっという間に輝かしいフィナーレ。素晴らしかった!!

これが教会カンタータなのね。あやうく、聴かずして、生涯を終えるところでした。

日本にいて、これほどのバッハが聴けるとは、何と言う僥倖でしょう。BCJの名人たちの演奏水準の高さには圧倒されます。弦の素晴らしさ、管のソロの名手たち、通奏低音のしっかりしていること、そして、何と言っても素晴らしい合唱。毎回、加わるソロ歌手の水準の高さ。それらを束ねる鈴木雅明の音楽性。

極論すると、saraiが人生の最後に聴くべきはバッハに尽きるとの思いが強まります。来週はアンジェラ・ヒューイットのバッハ・オデュッセイがあります。早、8回目です。バッハの鍵盤音楽の全制覇も見えてきます。今も予習でバッハ尽くしの毎日です。

人生の最後にとっておいた楽しみ、それはバッハ。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:鈴木雅明
  ソプラノ: ハナ・ブラシコヴァ
  アルト: ロビン・ブレイズ
  テノール: ユリウス・プファイファー
  バス: 加耒 徹
  合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン
   コンサート・マスター:若松夏美
   オーボエ:三宮正満
   オルガン:鈴木優人
   チェロ:山本徹
   トランペット:斎藤秀範

  J.S.バッハ:《ただ愛するみ神にすべてを委ね》 BWV 690, 691, 647, 642
         Wer nur den lieben Gott läßt walten, BWV 690, 691, 647, 642
   オルガン独奏:鈴木 優人

  J.S.バッハ:カンタータ第150番《なれを主よわれは仰ぐ》BWV 150
         Nach dir, Herr, verlanget mich, BWV 150

  J.S.バッハ:カンタータ第12番《泣き、歎き、憂い、怯え》BWV 12
         Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen, BWV 12

   《休憩》

  J.S.バッハ:カンタータ第21番《わが心に憂い多かりき》BWV 21(第3稿:ライプツィヒ版)
         Ich hatte viel Bekümmernis, BWV 21

最後に予習について、まとめておきます。

最初のバッハの《ただ愛するみ神にすべてを委ね》のオルガン独奏によるコラール4曲は以下のCDで予習をしました。

 トン・コープマン、アムステルダム・バロック合唱団(コラール歌唱) バッハ・オルガン作品全集 1994-1999年

2000年のバッハ没後250年に間に合わせるべく、バッハ・オルガン作品全集の完成を目指して、テルデックが白羽の矢を立てたのがトン・コープマン。彼はそれ以前にも2度もバッハ・オルガン作品全集に挑みましたが、果たされず、これが3度目の正直になりました。渾身の録音です。しかもオルガン・コラールのもとになった合唱コラールをアムステルダム・バロック合唱団の歌唱で収録するなど凝った内容となっています。したがって、今回の4曲のオルガン・コラールのもとになった合唱コラールのカンタータ93番 BWV93の第7曲のコラールも聴きました。すべて、素晴らしいとしか言えない充実した演奏です。

続くバッハのカンタータ3曲は以下のCDで予習をしました。

 鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン バッハ・教会カンタータ全集 1995-2013年

日本人団体による初のバッハ・教会カンタータ全集という偉業であるばかりか、演奏も名演です。第150番は記念すべき1枚目の録音(1995年)。第12番は3枚目の録音(1996年)。カウンターテナーは米良美一でした。第21番は6枚目の録音(1997年)でも収録しましたが、これは第1稿:ヴァイマール版と第2稿:ケーテン版を混合したもの。12枚目の録音(1999年)で第3稿:ライプツィヒ版を用いています。今回はその第3稿:ライプツィヒ版を聴きました。第9曲のソロ&合唱では4本のトロンボーンが入っています。3曲のカンタータでは、カンタータ中、最長の第21番が最高に素晴らしい演奏です。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       バッハ・コレギウム・ジャパン,
人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR