ところで、このシェーンベルクのグレの歌を実演で聴くのは、saraiは2度目のことです。1度目はウィーンのコンツェルトハウスでナガノ指揮のウィーン交響楽団。トーヴェがデノケ、森鳩が藤村実穂子という豪華陣で、この曲の実演はもう2度と聴けないと思っていました。然るに今年は何と3回も聴けそうです。今日のカンブルラン&読響、それから、大野&都響、ノット&東響。一体、どうしちゃったんでしょう! ともあれ、今日がその第1弾。予習くらいの軽い気持ちで聴いていたら、とんでもなく素晴らしい演奏でした。
まず、カンブルランがドライブしたオケの咆哮とアンサンブルの美しさが秀逸でした。トーヴェの主題の美しさには参りました。それにビオラの甘い響きも素晴らしかったし、ヴァイオリンとビオラのソロの2重奏の美しさも際立っていました。合唱もよかったのですが、正式には300人ほどの人数を要する筈なのに、人数が少な過ぎたかもしれません。
独唱ですが、やはり、森鳩の歌の素晴らしさが際立つので、クラウディア・マーンケがもうけものの役です。素晴らしい歌唱ですが、これはやはり、一度、藤村実穂子の歌唱を聴いてしまうと、どうしても比較してしまいます。今年のグレの歌の残りの2回はいずれも本命の藤村実穂子が歌うので、楽しみはそのときまでとっておきましょう。ロバート・ディーン・スミスのヴァルデマルはぴたっとはまった歌唱でした。低域から高域まで迫力ある響きの歌唱。身震いするほどです。予想外によかったのは、レイチェル・ニコルズのトーヴェです。聴かせどころが短い歌唱なので、意外に難しい役どころですが、見事に盛り上がる歌唱を聴かせてくれました。最後の《あなたは私に愛の眼差しを向け》はちょっと感動してしまいました。まさにこれはトリスタンとイゾルデの世界ですね。ディートリヒ・ヘンシェルも実力通りの張りのある歌唱を聴かせてくれました。
ということで、今年の第1弾のグレの歌は素晴らしい演奏でした。上々の滑り出しです。一番期待しているノット&東響はどれほどの演奏を聴かせてくれるか、ワクワクしています。
今日のプログラムは以下です。
指揮:シルヴァン・カンブルラン
ヴァルデマル:テノール=ロバート・ディーン・スミス
トーヴェ:ソプラノ=レイチェル・ニコルズ
森鳩:メゾ・ソプラノ=クラウディア・マーンケ
農夫・語り:バリトン=ディートリヒ・ヘンシェル
道化師クラウス:テノール=ユルゲン・ザッヒャー
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮=三澤 洋史)
管弦楽:読売日本交響楽団 小森谷 巧(コンサートマスター)
シェーンベルク:グレの歌
《第2部と第3部の間で休憩》
最後に予習について、まとめておきます。
グレの歌を予習したCDは以下です。
ミヒャエル・ギーレン指揮SWR南西ドイツ放送交響楽団 2006年10月28~31日 ライヴ録音 フライブルク、コンツェルトハウス、他
メラニー・ディーナー(S:トーヴェ) イヴォンヌ・ナエフ(A:山鳩)
ロバート・ディーン・スミス(T:ヴァルデマール) ゲルハルト・ジーゲル(T:クラウス)
ラルフ・ルーカス(Bs:農夫) アンドレアス・シュミット(Br:語り)
バイエルン放送合唱団 MDRライプツィヒ放送合唱団
当たり前ですが、とても聴き応えのある演奏です。この曲を演奏・録音するということは並々ならぬ決意がないとできないし、指揮がミヒャエル・ギーレンですからね。実はこの曲は結構、録音に恵まれていて、どのCDで予習するか、最後まで迷い、アバド&ウィーン・フィル、ブーレーズ&BBC交響楽団も用意しましたが、ここはくせ玉のギーレンにして、結構、正解だったかもしれません。独唱者も力のある人ばかりです。
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