演奏はすべての曲が素晴らしく、とても感銘を受けました。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」だけはもっとレベルの高い演奏を聴かせてもらいたかったです。よい演奏ではありましたが、もっと感動させてほしいんです。彼女の演奏には今や、高いハードルを設けて聴いています。
一番素晴らしかったのはやはり、最後に弾いたシューマン。昨年も極上の演奏を聴かせてくれた謝肉祭です。特に《キアリーヌ》以降の後半の曲の演奏には魅了され尽くしました。終曲の盛り上がり、迫力には感動です。昨年のように前方に席で聴けたら、さらに感動一入だったでしょう。本当にこれほどシューマンを弾ける人はほかには知りません。今年の7月にはシューマンの幻想曲を聴けるのが今から楽しみです。いつか、クライスレリアーナも聴かせてほしいです。
アンコールは2曲。どちらも既に過去のリサイタルのアンコール曲で聴かせてもらいました。とりわけ、グリーグの《君を愛す》は最高の演奏。たまたま、予習でぶち当てました。もしかしたら、グリーグのアンコール曲で弾くかなと思って、予習しておきました。
もっともっと感想を書きたいところですが、なんだか、とっても満足したので、それ以上のことを書く気になれません。そうそう、吉松隆のプレイアデス舞曲集では、最後に弾いた《真夜中のノエル》が超絶的に美しい演奏でした。
今日のプログラムは以下です。
田部京子 ピアノ・リサイタル (シリーズ杜の響きvol.40)
ピアノ:田部京子
吉松隆:プレイアデス舞曲集より
前奏曲の映像
線形のロマンス
鳥のいる間奏曲
真夜中のノエル
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」
グリーグ:ペールギュント第1組曲 Op.46 (作曲家自身によるピアノ・ソロ編曲版)
朝
オーゼの死
アニトラの踊り
山の魔王の宮殿にて
《休憩》
メンデルスゾーン:無言歌集 より
甘い思い出
ベニスのゴンドラの歌 第2番
春の歌
シューマン:謝肉祭 Op.9
《アンコール》
シューマン:『子供の情景』Op.15より、第7曲『トロイメライ』
グリーグ:君を愛すop.41-3 (オリジナルは歌曲Op.5-3)
最後に予習について、まとめておきます。
吉松隆のプレイアデス舞曲集を予習したCDは以下です。
田部京子 1996年1月16~18日 秩父ミューズ・パーク セッション録音
もちろん、素晴らしい演奏です。響きもタッチも音楽性もこれ以上はありません。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」を予習したCDは以下です。
イーヴ・ナット 1951年、パリ、サル・アディアール
ソロモン 1951年6月22日
エミール・ギレリス 1968年12月23日 モスクワ音楽院大ホール ライヴ録音
エミール・ギレリス 1980年9月 ベルリン セッション録音
クラウディオ・アラウ 1963年9月 アムステルダム、コンセルトヘボウ セッション録音
クラウディオ・アラウ 1986年3月 スイス セッション録音
マウリツィオ・ポリーニ 2003年6月 ミュンヘン、ヘルクレスザール セッション録音
アンドラーシュ・シフ 2004年11月28日 チューリヒ、トーンハレ ライヴ録音
saraiの愛聴盤はヴィルヘルム・ケンプですが、これは今更、予習する必要がないくらい熟知した演奏です。子供の頃から聴き続けているので、この演奏が一番しっくりきます。今回はそれ以外の演奏を色々聴いてみました。まず、驚いたのは、エミール・ギレリス。これは間違えて、ライヴ録音を聴いてしまったからです。第1楽章から凄い迫力の演奏ですが、逆に言えば、前のめりの爆演。あの精度の高いギレリスとは思えません。決して悪くはありませんが、かと言って、彼の他のベートーヴェン演奏と比較するとちょっとね。それで改めて、全集盤(正確には5曲欠けています)を聴き直します。これは素晴らしい演奏です。聴き慣れたケンプ盤から乗り換えてもいいかなと思うほどの演奏です。次いで、大好きなアラウの新旧盤を聴いてみます。新盤(1986)はその響きの透明感に惹かれますが、やはり、明らかに技巧面での問題もあります。ちなみにsaraiはピアノが弾けませんが、この曲が技巧的に簡単だと言う人の意見には反対です。シンプルさゆえの難しさがあり、意外にきちんと弾きこなせるピアニストは多くないと思います。アラウは旧盤(1963)では完璧に演奏しています。アラウを聴くなら、この曲は旧盤かなと思います。さらに天才ポリーニの演奏を聴きますが、これはよくも悪くもなく、普通の演奏です。わざわざ聴くほどの演奏ではないということです。で、アンドラーシュ・シフですが、これは素晴らしい演奏です。ギレリスを凌ぐかもしれません。録音も良いので、総合力は1番ですね。調子に乗って、古い演奏も聴きます。イーヴ・ナットです。後期ソナタでは素晴らしい演奏でしたが、アパッショナータでは期待を裏切られました。で、この曲ですが、あり得ないぐらいの素晴らしい演奏です。モノラルではありますが、音質は上々。そして、演奏は古今東西、最高です。ソロモンはどうでしょう。これも素晴らしい演奏です。イーヴ・ナットにこそ及びませんが、ギレリス、アラウ、シフに並ぶ演奏です。と言うことで、やはり、イーヴ・ナットで全ソナタを聴き通さないといけませんね。
グリーグのペールギュント第1組曲を予習したCDは以下です。
田部京子 2018年4月12-13日 埼玉・富士見市民文化会館キラリふじみ セッション録音
これはとても美しい演奏です。聴き惚れてしまい、ついでにソルヴェイグの歌、君を愛す まで聴いてしまいました。素晴らしいグリーグです。
メンデルスゾーンの無言歌集を予習したCDは以下です。
田部京子 1993年4月13~15日 スイス、ラ・ショー・ド・フォン、ムジカ・テアトル セッション録音
田部京子のCDデビューの年に録音された演奏です。しかし、素晴らしい演奏です。でも、今ならもっと違った演奏になるでしょう。2009年に一部の曲は再録音したようですが、それは聴いていません。無言歌集をまとめて再録音してほしいですね。
シューマンの謝肉祭を予習したCDは以下です。
田部京子 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音
これはパーフェクトに最高の演奏です。この曲のCDではベストだと思います。昨年、彼女のリサイタルでその演奏に接して、そのあまりの素晴らしさに感動して、このCDをゲットしました。そして、それは大正解でした。
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