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シューマンのピアノ曲はいいね! 仲道郁代ピアノ・リサイタル@鶴見サルビアホール  2019.6.8

仲道郁代さんのコンサートを久しぶりに聴きました。saraiのホームの一つ、鶴見サルビアホールに来てくれたからです。調べてみると、最後に聴いたのは2年半前のショパンとチャイコフスキーの協奏曲のコンサート。あれはとてもよい演奏でした。とりわけ、ショパンの協奏曲第1番が明快な演奏で、仲道郁代さんが30年間取り組んできたショパンへの愛情にあふれる演奏でもありました。

今日はそのショパンは封印して、ベートーヴェンとシューマン。仲道郁代さんのピアノはオーソドックスな安定感のある演奏で、作曲家への真摯なアプローチが魅力です。その特徴は前半のベートーヴェンでも十分に発揮されます。妙な気負いもなく、無理のない演奏は充足感を与えられます。現在、ベートーヴェンに集中的に取り組んでいるそうですが、その成果は十分にうかがえるものでした。今日のプログラムはベートーヴェンのピアノ・ソナタの中の名曲を3つセレクトしたものですが、あえて、アパッショナータ(熱情)もワルトシュタインもテンペストも入れなかったというのは面白いですね。その代わりに告別ソナタを入れたということは、この曲に思い入れがあるんでしょう。仲道郁代さんが今日のスピーチ(レクチャー?)でもおっしゃっていましたが、告別ソナタの冒頭の下降旋律タータータンはドイツ語でLebe Wohl!(さようなら)という言葉が添えられています。ナポレオンがウィーンに侵攻してくるのを避けて、ベートーヴェンのパトロンのルドルフ大公がウィーンを去ることに対して、別れを表現したものだと言われています。郵便馬車の合図のホルンの音を模したものだそうです。仲道郁代さんはショパンの《別れの曲》への連想もあるのでしょうか。

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saraiはこの告別ソナタの冒頭のLebe Wohl!を聴くと、つい、マーラーの交響曲第9番を連想してしまいます。マーラーはこの告別ソナタのLebe Wohl!を《大地の歌》の第6曲《告別》の最後の部分でEwig!(永遠に)という言葉に変えて用いました。

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そして、続く交響曲第9番では、純器楽的な主題として用いることになります。この西洋音楽史に燦然と輝く交響曲の全体を貫く基盤となる主題です。この主題でマーラーは死を予感しつつ、人生に別れを告げました。

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少し、本題から離れて、飛躍してしまいました。仲道郁代さんの思い入れももしかして、saraiの思いと重なるところもあるのでしょうか。
告別ソナタの第1楽章も別れを描写するような明快な演奏でした。第2楽章はとてもメランコリックな秀演。しみじみとした思いで聴き入りました。今年の4月に聴いた河村尚子さんの演奏もロマンを感じさせる繊細な演奏でしたが、今日の仲道郁代さんの円熟味のある演奏も納得できるレベルのものでした。

悲愴も月光も高いレベルの安定した演奏で告別と同様に気持ちよく聴けました。


その前半のベートーヴェン以上に聴きものだったのは後半のシューマンです。saraiはシューマンのピアノ曲が聴けるだけで嬉しくなってしまいますが、今日の仲道郁代さんのように素晴らしい演奏なら、猶更です。
アラベスクは終盤のテンポを落とした抒情的な演奏にうっとり。
アベック変奏曲は終始、ロマンの香気の立つような素晴らしい演奏。今日の最高の演奏でした。これを聴いただけで、今日のリサイタルに足を運んだ甲斐がありました。
最後の大曲、謝肉祭もなかなかの好演。中間のキアリーナ、ショパンが素晴らしい演奏で、終曲も大変な盛り上がりで名曲を締めくくってくれました。ただ、ちょっと残念だったのはこの曲だけに関しては、今日弾いたピアノのYAMAHAのCFXよりも重厚な響きのスタインウェイのほうがよかったということです。この曲ではYAMAHAはちょっと乾いた響きで合いませんね。ほかの曲はすべて素晴らしい響きで満足できたんですけどね。ピアノの選択は難しいものです。現在、進行中のアンジェラ・ヒューイットのバッハ・オデュッセイ・プロジェクトではイタリアのファツィオリのピアノを弾いていますが、明るく、よく響くピアノでとてもよいのですが、時として、スタインウェイの重厚な響きを望みたくなる場合もあります。

ところで、シューマンと言えば、このところ、日本人ピアニストが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。田部京子さんと伊藤恵さんです。さらに今日の仲道郁代さんが加わると、シューマンを聴きたければ、日本が一番ということになります。この世代の日本人ピアニストは何故か、シューマンを得意にしているんですね。先ほど、仲道郁代がショパンのスペシャリストのように書いてしまいましたが、実は彼女は30年以上前のデビュー当時はシューマンを中心に演奏活動を行っていたそうです。ファーストアルバムはシューマン(ピアノ・ソナタ第3番)とブラームス。2枚目はシューマンの謝肉祭(今日の曲目ですね!)。3枚目はシューマンの子供の情景&クライスレリアーナという具合です。今日のシューマンが素晴らしかったのも道理です。これからもまた、シューマンに力を入れてほしいものです。

アンコール曲はやはり、シューマン。トロイメライです。30年以上前にも録音した曲ですね。彼女のスピーチによれば、ホロヴィッツの演奏でこの曲を聴いて、ピアノの真の魅力にとりつかれたそうです。仲道郁代さんはお父上の仕事の関係で中学生時代にアメリカに渡り、多感な少女時代にホロヴィッツの生演奏に接して、ピアノの道に進むきっかけになったようです。仲道郁代さんのピアニストとしての原点はシューマンだったのですね。シューマニアーナのsaraiとしてもこれは感慨深いです。


今日のプログラムは以下です。

 ベートーヴェン:

  ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」
  ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 Op.81a「告別」
  ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」

   《休憩》

 シューマン:

  アラベスク Op.18
  アベック変奏曲 Op.1
  謝肉祭 Op.9

   《アンコール》

    シューマン:トロイメライ
    エルガー:愛の挨拶 Op.12


最後に予習について触れておきます。

最後に予習について、まとめておきます。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタを予習したCDは以下です。

 エミール・ギレリス
  ピアノ・ソナタ 第8番「悲愴」 1980年9月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第26番「告別」 1974年12月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
  ピアノ・ソナタ 第14番「月光」 1980年9月 ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音
  
いやはや、ギレリスの残したベートーヴェンのピアノ・ソナタの録音はどの曲も最高峰のレベルです。全曲録音を完成する前に亡くなったことは残念でたまりません。


シューマンを予習したCDは以下です。

 田部京子
  アラベスク 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音
  謝肉祭 2007年12月5日 浜離宮朝日ホール ライヴ録音

 クララ・ハスキル
  アベック変奏曲 1951年6月4日 アムステルダム スタジオ録音

田部京子のシューマンは素晴らしい! 特に謝肉祭は史上最高の名演です。これ以上の演奏は聴いたことがありません。
そして、シューマンを弾かせたら、クララ・ハスキルに優るものはありません。このアベック変奏曲は彼女が得意にしていたもので、何種類も録音が残っていますが、このスタジオ録音は音質もよく、最高の演奏です。シューマンの他の曲は子供の情景、森の情景、色とりどりの小品、そして、ピアノ協奏曲だけの録音が残るのみですが、いずれも素晴らしい演奏です。



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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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昨日投稿した記事の一部に誤りがありました。ドイツ騎士団の中庭はパスしないで、ちゃんと見ていました。追記・修正しました。申し訳ありません。

08/07 00:28 sarai

えりちゃさん、saraiです。お久しぶりです。

これは昨年の9月のウィーンですが、現在のコロナ禍では、古き良き日という風情ですね。もう、ポスト・コロナでは、行けたにし

07/20 12:41 sarai

Saraiさま、
お元気ですか?
新型コロナウィルス、自粛中。
このウィーンの散策を読んでいると、なんだか切なくて悲しくなってきました。
次はいつ行けるのかな、とか思う

07/20 05:08 えりちゃ

はじめまして。ブログ拝見させていただきました。私は、個人ブログを運営しているyuichironyjpと申します。フリーランサーとして活動しており、フリーランスで稼ぐ方法や、

06/14 23:46 Yuichironyjp

ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai
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